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2話 2人目の訪問者

俺はソファーに座った。このソファーは個人的に凄く気に入っている。何せ両親と海外旅行でイタリアに行った時、イタリア語はさっぱり分からなかったが、経験だと思い、話し掛けられたら全て「YES」と答えていたら、数日後多額の請求書とソファーが届いた。 貯金を全て枯らした。此れも運命。という母親の何とも言えない無責任な言葉で片付けられた。 まぁとにかく俺の大切な代物だ。 あの変態なおじさんに座られなかった事が何よりも安心だ。

ソファーに座って足を伸ばしている一時が俺の快楽な時間だろう。俺はスマホを片手にソシャゲを起動さした。 俺はソシャゲの中でも音ゲーは大の得意だ。音ゲーに関しては誰にも負けない自信があった。だが、俺には音ゲーをする前に必ずする"ルーティン"がある。それは

「天然水を飲むことさ!」

俺は誰もいない空間でソファーに立ち上がり、そこにカメラがあるかの様に、視線を配りポーズを取りドヤ顔を披露した。 誰もいない時だからするのだ。

高校生の様な甘酸っぱい青春の日々で、好きな人の前では話すことも疎かだが、家に帰ってのシュミレーション程上手く行くことはない。

俺は坦々と天然水を冷蔵庫に取りに行った。冷蔵庫の位置は玄関の近くにある。

冷蔵庫を開け、水を取り出そうとした。だが何本かあった天然水が既に切らしている。

(あれっ、もう切らしてたか。買いに行かねーと)

俺は冷蔵庫の扉を閉めた。 もう一度開けた。そしてもう一度閉めた。確かにいる。確かにいる。視界に入っている。玄関先に誰かの気配を感じる。いや、そこにいる。いるじゃないか。戸締りは完璧だったはず、どう考えても不審者だ。それに手に何かを持っている。凶器だ。凶器に違いない。俺に恨みを持った奴が、俺を殺しに来たんだ。絶対そうだ。待てよ。でも俺は何もしてないぞ。誤解か?それとも気づかない内に買っていたのか?あれか、コンビニ行った時に店員さんに

「レシートはご利用ですか?」って言われて咄嗟に

「はい」って答えてレシート受けとって、

(あっでもこれゴミになるんじゃね)

ポイッってその場で捨てた時に買った恨みか!それだ。

って事は店員さんがレシートの怨念で俺を殺しに来たんだ。

(何か無責任な感じがしなくは無いがそれって俺が悪いのか?いやみんなしてるじゃないか!まさか俺のレシートの捨て方に問題あったのか?)

俺は焦っていた。もはや音ゲーとかどうでもいい。下手くそでもいい。俺は下手くそだ。だからこの場をどうにか切り抜けたい。

「ごめんなさいぃぃぃレシートもうリセットするからぁぁぁぁ」

俺は咄嗟に意味の分からない事を声に出したが、それが伝わったか頭を下げた俺には見えない。

不審者はさっきまでずっと仁王立で立っていたが、近づいてきた。って此奴何時からいるんだ。なんて考える時間がない。俺は生死に関わる大事な瞬間だ。

一歩、二歩、と不審者は近づいてくる。既に立派な長ネギの全長ぐらいの距離まで近づいている。

俺は味噌汁にはネギを入れるタイプだ。

とかどうでもいい。

不審者は俺の頭に何かを押し付けている。


"鋭利な刃物"に違いない…!


俺は死を覚悟した。死ぬ前に何かしたいと口実したかったが、どうせ聞いてもらえないだろう。深夜アニメも一週間も撮り溜めしている。最近好きな声優が出来てって花開くオタクトークをしませんか?なんて言えないし、それに今日は日曜日だぞ。朝から変態なおじさんに出くわして、更には不審者に問答無用に斬り刻まれるかもしれない…

考えるのも残酷だ。


冷やっと俺は寒気がした。頭部から


(これが…死の前兆か…)

俺は目を瞑りもう反抗も出来ないだろうと諦めかけていた。


不審者は俺の肩に手を置いた。

手がゴツい。

俺は瞑っていた目を開けた。


そこには"天然水"を持った少し細めの男が立っていた。

男は満面の笑顔で


「水飲みたいんでしょ?唯普通に飲むだけじゃ全然面白く無い!そこで僕とゲームしないか?」

と爽やか系に言われたが、不審過ぎる。確かにイケメンの分類ではあるが、俺はそういうのは興味無い。

てか、さっきまで殺されるとか思っていた自分が恥ずかしい。非常に。


男は俺に水を渡した。かなり温い。此奴30分そこらじゃないぞ。まず、その水どう考えても冷蔵庫から取っている。ラベルが同じだ。


男は俺に水を渡してソファーのある部屋に入って行く。


俺は男に

「勝手に人の部屋に入って来て何考えているんで…」

男は天然水を持って、プチトマトの直径ぐらい近づいて


「俺は男には興味無い。下がってろ」

とさっきより低いトーンで言葉を投げかけられた。

(えっ…なんか俺間違った事言いましたかね…)


「…すいません」


「分かれば良し!」

男はお気に入りのソファーに座った。

俺は少し頭にきた。

「あのっ…ソ…」

俺はさっきの言葉が刺さったのか言葉が詰まる。


「はいっ?(威圧)」

「ソファ…ソファ…その最近新しいゲーム買ったんですよ」

「そうなの!じゃあ、そのゲームしましょう」

俺はどうして肝心な事を伝えられ無いんだ。俺の馬鹿。大馬鹿だ。

男は耳を触っている。無意識に耳を触る人は、寂しい人やストレスを持っている人がする仕草だと聞いた事がある。

だが、"頭"に付けている耳は其れ等に含まれるのだろうか?

男が触っているのは犬耳のカチューシャである。


俺は少し気づくのが遅かった。

(此奴も変態だ)

だが、カチューシャには触れない。

朝から1年でも一回見るか分からない男を1日で2人も会うなんて今日は気持ち悪い日だ。

それにこの男に限っては勝手に冷蔵庫から取った水を飲んでいる。


「私は貴方と会いたかったんですよ」とソファーに寝転んで話し掛けてくる。


「そうですか」と言い俺はスマホでまた110番にかけた。

「警察来た時は私が連行されるんじゃ無いかってびっくりしたんだから」

(お疲れ様です)


10分後ー


「このゲームすっごい面白いじゃないの!」と男は俺に告げて

警察官に無理矢理連れて行かれた。


男の飲みかけの水を流し台に流した。


ソファーには犬耳のカチューシャが置かれていた。


(…)





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