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魔王城にて

作者: ずってぃ

見てからの文句などはお控え願います


場所は魔王様のお部屋です

少女視点から始まります


ハイスペック少女ですが、文中その設定が生きてません

OKの方のみどうぞ

「お前は本当に本が好きだな」

『っ、え?あれ?今日は帰りが遅くなるって…』


いつから隣にいたのか、まったく気付かなかった


「遅いだろ?もうすぐ夜明けだぞ」


呆れたように溜息を吐かれ、窓を見るとうっすらと空が明るくなっていた


『??いつの間に…』

「本を読んでる間に、だろう。もう寝るぞ」


促され、本を取り上げられそうになって慌てて止める


『今すごくいいところなの。だから待って』

「……。…今読んでいるものは何だ」


冷めた目で見られることに首を傾げつつ、素直に“図鑑”だと答える


「寝るぞ」


強制的に本を取られ、お姫様抱っこでベッドまで運ばれる


『な、なんで!?』

「図鑑に盛り上がりも何もないだろう

まったく、部屋に明かりがついているからオレを待っているのかと思えば…」


何やらぶつぶつと文句を言い、無駄に広いベッドの上に置かれると、逃げる間もなく入ってきた彼に捕まり、魔法でカーテンを閉め、明かりを消した

抜け出そうとすると深く抱き込まれ、抵抗を諦める


「捕虜なんだから大人しくしておけ」

『本あげるからおいでって言われただけだよ』



確かに私は、少し前まで勇者のパーティの一員を務めていた


伯爵家に生まれた私は、婚約者こそいなかったものの、どこかの貴族と結婚して子を産む

それが貴族の娘に生まれたものの義務だ

何もなかったら、私もそのように生きただろう。だが、私は人間が大嫌いだった


幸い、魔法に大きな適正があり、王立の魔法学園に通っていた

上手くいけば王宮で働き、女だが結婚せずとも親に何も言われない生き方が出来た

…が、適正がありすぎた


研究者として生きていくつもりだったのに、何をどう間違ったのか、学生なのに召喚された勇者の同行を命じられ、強制的に魔王討伐の旅に出された

まぁ、無事に終えたら貴族としての義務を果たさず、報奨金でのんびり暮らしていいとの約束をもぎ取ったので文句はない


だから、たとえ魔王が茶飲み友達で、実際には人間に一切理不尽な危害を加えていないとしても、私は私の欲望のために、旅はわりとノリノリで同行したのだ

さすがに友達を殺したくはないので途中で失踪するつもりだったが



「オレの言うことは聞く、とも言ったぞ」

『主に一緒に食事したりお茶したり抱き枕になったり?

そんなことの何が楽しいの?』


彼が楽しいかどうかは一度置いておいて

本を読み始めるとさっきみたいに時間がいつの間にかかなり経過して、食事や睡眠をとらないからむしろ有り難い

お茶は、純粋に私達共通の趣味だし

…あれ?むしろ私に都合よくない?アレー?


あ、でもでも


『拒否権なかったよね。幹部を二人も引き連れてさー』

「ああ。お前から来たから鎖で繋いでいないだろう。部屋に閉じ込めてもいない」

『残念そうに言わないでよ!』



魔王城にほど近い村で、そろそろ脱走しようとした時、彼の魔力を感じた

隠す気も隠れる気もなかったらしく、外に出たら既にパーティの皆は戦闘準備を終えていた


彼は悠然と空に佇み、それはそれは美しい笑みで、周りなど一切頓着せずに言ったのだ


「好きなだけ本を読ませてやるからオレの城に来い」

『「「「………は?」」」』


かなりどうでもいいが、この時初めて私とパーティの心が一致した瞬間だった(2回目はない)


「ああ、オレの言うことは聞いてもらうぞ」


その言葉と同時に私は計算を始めていた


メリット…本、人間から離れられる

デメリット…彼のわがままに付き合わされる


『是非』

「おいい!?えっ、ちょっ…本気?」

『デメリットが特にない』


彼のわがままは、膝枕や手作り菓子の要求など可愛いものだ


「貴女っ何の為にここまで来たのよ!?」

『何の憂いもなく本を読むためですが』

「バカじゃないのっ!?」


ちなみに、上から勇者、魔法使い、ファイターの順に喋った

勇者以外は女というハーレムっぷり。実際戦闘能力に問題はないから文句はないけど


3人に詰め寄られ、結界で壁を作りつつ後ろに下がる


「フッ…では行くぞ」

「アレー?オレ何のために付いて来たんだっけー??」

「言うな。王に気に入られる者が普通な訳がない」


彼の後ろに付き添いが居たらしい。気付かなかった

とても強い魔力を感じるから、幹部級なんだろうなぁ、と思いつつ、私は既に魔王城の蔵書に心が囚われていた



…………。

うん。拒否権なんかなかったよね。反論は認めない

了承した後に気付いた気がしないこともないけど気のせいだ

自分の欲望に正直過ぎる気がするけどそれも絶対に気のせい


改めて付いて来たことについて考える

当初の予定とは大きくずれたが、好きなだけ本を読むことと人となるべく縁を切ること

この目的は達成している

それに、私の友達は後ろの魔王様くらいだし、魔族たちは長生きしてるだけあって博識で話してて楽しいし。…うん、問題ない


そう自分の中で完結させていると、私の上に乗ってる腕が重くなった


『…?』


耳を澄ませると、規則正しい寝息が聞こえてきた


『寝た?』


声をひそめて話しかけるが返事が来ない

いつもより眠るのが早いが、ここ数日忙しそうにしていたから仕方がないだろう


『……』


彼は一度寝ると3時間は絶対に起きない

魔力や他人の気配、殺気を感じるとすぐに起きるが、他の要因では絶対に起きない

言い方を変えよう。私が何をしても概ね彼は起きない

すなわちイタズラし放題なのである

目の前にある手に指を絡め、両手で包み込むように手を握る


「ん…」


足を絡められ、身動きがとれなくなる

彼の匂いに包まれて、だらしなく口が緩む


『大好きだよ。本と同じくらい好き

本当はね、貴方が帰ってくるの待ってたんだよ。途中で夢中になっちゃったけど

最近一緒に寝ると、ドキドキして眠れないの

だから本読みたいって言ったのもね、貴方が眠ってから寝ようとしたからだよ』


実際にいいところだったのもあるけど

彼が起きないから、こんな風に冗談みたいな甘言を囁く


彼が起きていたら絶対に言わない本音

彼は、人間の友人を珍しがってるだけで、その他に紛れたら彼は私から興味を失うだろう

実際友達として、とても居心地の良いこの関係を崩すのは勿体なく感じているのも確かで…

一度動いたら元には戻らないから、このぬるま湯のような関係を続けるのだ


それでも、彼に惹かれているのも事実だから、届かないように想いを伝え続ける

聞かれていないとはいえ、言った言葉が恥ずかしくなって、ギュッと繋ぐ手に力を込めて無理やり眠りについた




〜〜〜〜〜〜




彼女が眠った事を確認してから目を開ける


「起きてる時に言わねば伝わらないだろう」


彼女がこちらを向いていなくて良かった

いくら暗くても、これだけ距離が近ければ赤面しているのがバレていただろう

バレたら、寝る前の可愛い行動をしてくれなくなるので、毎回必死に寝たふりを決め込む



彼女と出会ったのは偶然だった

偶然出会い、気まぐれで話しかけ、彼女も気まぐれで応えた

変わった人間の娘に興味を覚え、気が向くと彼女のもとへ遊びに行くようになった


特別な事など何もないが、それが逆に特別な事だと知っていた

そして気まぐれで自分が魔王だと打ち明けた


どんな反応をするのかと期待半分でいると『だから?』と、珍しく不思議そうな顔をして尋ねてきた


それを愉快に思い、同時に安堵している自分にも気付いた

多分、この時から彼女が特別になった


政務の合間の息抜きに頻繁に彼女に会いに行くようになると、今度は彼女が楽しそうな顔をして『魔王討伐のため、勇者に同行する事になった』と言ってきた



「…俺が魔王だと言ったよな?」

『うん。聞いたよ』

「……何を討伐するって?」

『魔王だよ。討伐したら解剖させてくれないかな…』


ティーカップを手に持ち、キラキラとした目でどこかへトリップした


「……」

『パーティの構成は勇者、ファイター、魔導師、治癒師の4人構成

魔王城に辿り着く少し前で治癒師が失踪

回復役のいなくなったパーティが立ち往生』


ニンマリと笑う彼女に、安堵すると同時に意外に思った


「治癒師として同行するのか。魔導師だと思った」


人間なのにハイスペック過ぎる彼女は、もし魔族に生まれていたら魔王(オレ)と張るのではと密かに思っている

戦闘職でない幹部なら、今のままでも1人で殺れそうだ


『ん、ああ…治癒師は神殿務めが多いからね

王宮としては神殿にあまり権力を持たせたくないんだよ』

「なるほど。治癒師はその後どうなるんだ?」

『んー…。色んな国に寄って本を買い漁る姿を最後に、それ以降彼女の行方を知る者は居ませんでした。…みたいな感じかな』

「オレとも会わないのか?」

『寂しいけどそのつもり』


…そうか。オレはお前にとってその程度の存在なのか


苛立ちを感じながら、静かに紅茶を飲み干す

時間が経ち、僅かに苦味が出てる


ならば、刻み付けてしまおう

オレを忘れぬように。オレから離れようなんて欠片も思わないように



そう思って色々計画した筈なのに、何故か彼女はオレの腕の中で幸せそうに寝ている


囲う準備を済ませ、彼女を迎えに行った

勇者の能力は魔族にとって厄介なもので、加えて戦闘でもスペックの高さを示す彼女だ

念のために(煩かったのもある)部下を連れて行ったのに、初めの軽口の様なもので彼女はアッサリ軟禁を許した


そして今ではこれである。人生(人間ではないが)分からないものだ

まぁ、オレが何かに、しかも人間の女に執着したことが一番の驚きだが…



「愛してる」


彼女と違い、本当に寝ている彼女に毒を流し込むように囁く

彼女は気にしていないだろうが、人間にとってこれは外れた行為だ

断ったら仮初の自由もないと分かって同意したのだろう


「他に何も要らないと思うほどに」


愛とは、なんと都合のいい言葉だろうか

そのたった一言で、オレの中でこの行為を正当化さえ出来るのだから


本当に、彼女をこの部屋に閉じ込めて、鎖で繋いでしまおうと考える時がある

だが、彼女が笑いかけてくれるから。直接言われた訳ではないが好きだと言ってくれるから…


この狂気は必要のないものだ

オレの手の中に居てくれる内は、愛の温かい所だけで満足できる

かろうじて、独占欲が強いだけだと言い張れる


もし、彼女が離れていこうとしたら―――……


きつく抱き締め、彼女の首筋に顔を埋める

欲のままに抱きたくなるが、彼女から握ってくれた手を離すのが惜しい

どちらも選べないから、後戻りのできる方を選ぶ

他の女ならいざ知らず、彼女には求められたいから

ちゃんと、好きだと言ってほしいから


彼女の甘い匂いを深く吸い込み、穏やかな眠りに身を任せた




魔王

イケメンで(色んな面で)チート

腹黒で冷酷、かなり計算高いが、少女が絡むとただの世話焼きのお兄さんに…

マイブームは少女の作ったチョコケーキを食べること


少女

人間不信、物静かで理知的な少女

頭の回転が早く、様々な歴史的発明をしているが発表はしないため知られていない

魔王様の前では普通の年頃の少女のように振舞う

マイブームはマカロン作りだが、最近チョコケーキしか焼いていなくて欲求不満



2人はキスもしたことないです

少女が友達でいることに固執するけど、他に友人がいなくてズレてる為魔王様が振り回されて悶々します

膝枕はOKでも起きてる(と少女が思ってると)手も繋がないです

魔王様ヤンデレの素質あるけど、自分のもとから逃げないし、恥ずかしがって涙目になる少女に負けて手を繋ぐのにもえらく時間がかかります(にまにま



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