第一章二話『存在』
俺の傭兵やります宣言から2日が過ぎた。
いろんなことが分かった。
おっさんはオーフィアスというらしい。
それからおっさんの、いや、オーフィアスの傭兵団のメンバー。
オーフィスと共に前衛を担うアレク。
でかい大剣を背負っていて中々ハンサムだ。
俺たちのようにオーフィアスに拾われた孤児らしい。
弓とナイフ、飛び道具など臨機応変に戦う中衛のルミア。
これまた俺たちと同じ元紛争孤児らしい。
栗色の髪の美人だ。
主に作戦立案と物資の調達、救護兵としての役割を担うのがポルク。
外見的な特徴としてはひょろ長い。オーフィアスと同じくらいの歳だ。
魔法が使え、本人曰く回復魔法寄りの魔法使いだそうだ。
ちなみにオーフィアスの戦闘スタイルは斧と剣だ。
そして俺が快適な独房生活を味わったここはオーフィアスたちの傭兵団のアジトらしい。まぁほとんど寝てたしさして辛い思いもしてないのでその件については水に流してやるとする。
それから赤ん坊は男の子2人に女の子1人。
名前は3人ともわからないそうだ。
ほかに俺と歳が近そうな7人の孤児たちの名前も覚えた。
大人しい文学少女っぽいのがフラヴィ。
かわいい。多分大人になったら清楚な美人さんになるだろう。ぜひともメガネをかけていただきたい。
のほほんとしたマイペースな女の子がノイン。
かわいい。こっちは成長してもかわいい系だろう。
男の子と殴り合いするほどやんちゃなミレーヌ。
見た目だけならかわいい。だがその見た目に騙されるとフルボッコにされる。
ミレーヌと孤児たちの覇権を争って殴り合っている男の子がドット。
女の子を殴るなんて男の風上にも置けんやつだ。許すまじ。
いつもおどおどしている男の子がニコラス。
のび太君ポジションの幸薄そうな感じだ。
将来イケメンになりそうな端正な顔立ちをしたアラン。
優しくて気遣いができる典型的なモテ男だ。こいつは敵だな。
1番年下でいつも女の子たちにまじって遊ぶ男の子がレオ。
多分こいつは男の娘の才能がある。そのくらい顔が整っている。こいつも敵。
名前以外にもわかったことがある。
オーフィアスたちに世界の情勢を教えてもらった。
まず、この世界に魔物はいても魔王はいない。
魔王は200年ほど前に封印された。
その魔王が封印されてからというもの、恐怖から解放された人々は戦争を繰り返しているらしい。
つい4年前にもほとんどの国を巻き込んだ戦争があり、いまだにその爪痕がのこっている。
俺が拾われる原因となった紛争や、オーフィアスの話にあった復興の手伝いなどももとをただせばこの戦争のせいだという。
今は大きな戦争はないが各地で紛争は起きているしまたいつ戦争が始まるかわからないようなピリピリした状況が今なお続いているそうだ。
とまあこんなところだ。
2日間でこれだけわかればいい方だろう。
ここで1つ問題がある。
ここにいる人の名前は全員分覚えた。
問題は自分の名前だ。
まさかもといた世界での名前を使うなんてできない。
全員の名前からして横文字な名前なんだろう。
そして俺にはこの少年としての記憶が一切ないし記憶の共有もできないらしい。
今の俺のことを冷静に分析すると、もとの世界で23歳児として生活してきた俺はこの世界で今10~12歳くらいで存在している。しかし憶えている最後の記憶が向こうの世界のサラリーマンだったということはもしかすると俺はこの少年の身体を乗っ取ってしまったのかもしれないのだ。
要するに俺はこの少年の身体に不法侵入し、挙句の果てに住み着いてしまった寄生虫みたいなゴミ虫という可能性がある。
しかも意識をのっとっているのだから寄生虫より性質が悪い。
まぁあくまでも可能性の話だが。
これも可能性の話になるが俺は憑依ではなくきちんと転生して少年としてこれまで生きてきて何らかが原因でこの少年として生きてきた記憶をなくしているだけかもしれない。
いや、転生してるのなら俺はもとの世界で1度死んだはずだ。
なら死ぬ記憶と少年としての記憶を両方なくしていることになる。これは些か都合が良すぎだ。
やはり憑依したと考えるのが1番しっくりくる。
考えても考えても理解できないこの状況だが、憑依しているのならいつかこの身体の持ち主に返すため、転生したのならせっかくの異世界を満喫するためにも簡単に死ぬわけにはいかない。