プロローグ
硬い床の上で目が覚めた。
たぶん部屋と呼べる空間だろう。
内装という内装のない簡素なベッドとトイレが備えてあるだけの無機質な場所だ。
どことなく見覚えがあるような気もするが……って、ここ、牢屋じゃねぇか!
うん、はっきりとわかる。テレビで見た。
それになんたって目の前に頑丈そうな鉄格子があるんだから。
俺が一体何したっていうんだ!
どこにでもいるってわけじゃないが平均より少し低めの給料もらって小さなアパートで一人暮らしをしていた平均ちょい下のサラリーマンだぞ!
間違ってもイケメンやハンサムとは言えない父とお世辞にも美人や可愛いとは言えない母を足して2で割ってできたものに23年間を足した善良な一般市民だったはずだ。
俺がいつ悪いことしたってんだよ!不当逮捕もいいとこだ。
もしかしたら俺なんか悪いことしたのか?
そういえば目覚める前の出来事は思い出せない。
悪酔いでもして事件でも起こしたのだろうか。
喧嘩か?窃盗か?はたまた強姦か?
思考がどんどん悪い方へいき、焦ってきた。
とりあえず少し冷静になろう。
まず、怠い。
仕事とか学校を怠いって言う感じじゃなく、体が重いというか力が入らない。
手足が異常に細く、腹も必要以上に引っ込んでいてシックスパックの欠片もない。
どのくらいここで寝てたのだろうか。
それから声。
これまた異常に高い。
女の子や少年のようだ。
ここでひとつ疑問に思いパンツの中を覗く。
あった。ついてた。
ミニマムだがついている。
大丈夫だ俺は男だ。ガッカリなんてしちゃいないぞ。
そして俺は結論に至った。
俺は男じゃない。男の子だ。
娘じゃない。子供だ。
どういう訳か今の俺は子供なのだ。
その結論に至ってからどれくらいの時間が過ぎたのだろうか。
1分かもしれないし1時間かもしれないし1日が過ぎてしまったのかもしれない。
いい加減腹が減った。
足音がした。
多分看守だろう。
飯にありつけるかも。
淡い期待を胸に看守がやってくるだろう通路の方に目を向ける。
だが、やってきたのは乾いた泥がついた野戦服を着崩し、その上に軽い鎧を纏った歴戦のおっさんだった。
まずい。
これは考えもしなかった最悪のケースかもしれない。
俺は捕虜としてここに拘留されているのかもしれないのだ。
拷問を課せられるかもしれない。
目玉をくり抜かれたり指を切り落とされたり全身の皮を剥かれたりするのかもしれない。
今度はさっきと比にならないくらいやばい事態を想像してしまう。
どうしよう。おしっこちびりそう。
いや、ちびっていいはずだ。今の俺は子供なんだから。
いやいやだから落ち着けって俺。
いやいや無理無理痛いの絶対やだし。
伊達に平和ボケした日本でぬくぬくゆとり教育で育ったわけじゃねぇんだ。
拷問なんておっかなくてたまったもんじゃない。
俺が冷や汗を垂れ流しながら怯えているとそのおっさんは俺の前まで歩いてきて俺の前で立ち止まった。
もう一度言おう。
俺の前で立ち止まってしまったのだ。
本格的に漏らしそう。
おっさんは不気味に俺に微笑みかけた。
やばい、あれはどう考えてもこれからどうやって可愛がってやろうかなぁって顔だ。
いざとなったら拷問部屋とお前をおれの糞尿で染め上げてやる。
いかん。さっきから発想が下品だ。
「お前、傭兵やらないか?」
「へ?」
「いや、だから、傭兵やらないかって」
「……それはどういう拷問ですか?痛くないやつですか?苦しくないやつですか?」
「いや、拷問じゃねぇよ。金で雇われる兵士だよ。どうだ?やってみる気はねぇか?」
なんなんだこのおっさん。
子供に傭兵やらせようとするとか。
そしてなんなんだこの世界。
おっさんの言葉からして子供の傭兵が山ほどいるようだぞ。
国連が黙ってないぞ、このやろう。
いやまて。このおっさん、見たところ銃を持っていない。武器っていったら腰の剣だろう。
そして鎧。RPGなどで見るような防具だ。
仮にこのおっさんが今持ってきてないだけだとして、銃があるとすればこんな鎧を着る必要はあるのか?
……答えは否だ。
銃ってのは鉄板だって貫通する威力がある。
ならこんなもの纏っていても邪魔でしかない。
防弾チョッキをなんかを着るのが妥当だろう。
剣なんかを扱っているところを見るに技術は今の日本より圧倒的に下と見ていいだろう。
このことから考えてみるとここはもしやタイムスリップした地球、あるいは俺が住んでいた世界とは異なる世界かもしれない。
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温かい目で見守っていただければいいなって思ってます。
いやむしろ見下しながら厳しくドギツく評価していただければ幸いです。