赤い糸、つなぎます
「お兄さん、これは確実ですぜ」
そんな言葉だったのか、ともかく、街頭で小さなカードを受け取ると良太は、誰かが見てなかったか、と辺りを見回した。家に帰り着くとすぐにネットにつないだ。クレジットで支払い、まわりくどいセキュリティをくぐりぬけ、やっとお目当てのサイトだ。
「―― あなたの赤い糸の先には誰が? さあ、探しましょう、つなぎましょう ――」
科学の進歩ってやつは、本当にすごい。 前世紀の終わりににクローン羊が現れ、「人間でもできたらおもしろいね」、なんて言ってたら、すぐに世界中で怪しげな人間クローンの計画が始まった。20XX年になって、猫の相性の実験が報告されたら、「人間でもできるよね」なんて冗談が冗談じゃなくなりそうだ……
息をひそめて見つめると、画面に人々の相関図のようなものが現れた。 その真ん中にいるのは、良太だった。良太から、細いのやら太いのやら赤い糸が伸びて、周りの女性たちにつながっている。
「うっ、この子は…… 残念、好みじゃないぜ」
一番太い赤い糸の先には、ちょっとぽっちゃりした下ぶくれの顔が映っていた。 良太は顔をしかめ、「消去しますか?」と点滅するボタンを押すと、画面がさーっと替わり、金額表が現れた。 「完全」から「できる限り接触を避ける」まである。 「完全」を選ぶと、べらぼうな金を払うことになる。良太は携帯を取り上げた。
「御用でしょうか?」
機械的な声がする。
「今、見てんだけど…… ホントにこれが俺の赤い糸? 放っておいたらどうなるんだ?」
「何もなさらないと、もっとも太い糸の方と結ばれます」
機械はていねいに良太の様々な質問に対応した。
「……わかったよ。 ありがとうな」
「いえ、お役に立てて幸いです」
良太は携帯を切ると、画面を見つめた。 良太の好みの彼女とは、一番細い糸で結ばれている。 その子と結ばれるためには、他の太い糸を全部切って、その子の糸をとことん太くしなければいけない。 見積もりによると、良太が銀行強盗でもしないとできない金額だった。
良太は、部屋の窓から暮れ行く夕日を眺めた。さわやかな夕暮れの風が、良太を少し落ち着かせた。良太は携帯をもてあそびながらつぶやいた。
―― 下ぶくれか……。それが俺の運命ってものならば ――




