6 復讐の終わりはこんなもの
エリリックとイディナの婚約破棄の後、怒りに震えたクリスティーヌはソリティア国の未婚女性を片っ端から結婚させて回った。
そして次の年に適齢期になる少女も早めから婚約者をつけたり、男女が交流を図るパーティーを頻繁に開催したり。
そうするとコゼ側はどうなったかというと、いわゆる”余り”の男性が多くなってしまった。
次は、来年こそはと結婚できなかった獣人男性は参加するのだが、そうなるとその年に成人を迎える獣人と競うことになってしまう。
おまけにクリスティーヌが流した番の噂のせいで、【番が現れると浮気をしてしまう獣人は止めておいた方が良い】といった風潮になったため獣人よりも同じ人間の方が選ばれる。
その途中でエランドからの強いお願いを受け、法案は通っていなかったものの代替案として契約書を作成した。
2ページに及ぶ契約書は番が現れたとき用のものだ。
ざっくり言うと、突然番が見つかったからと言って婚約解消・離縁の訴えをしてきたら慰謝料を取りますよという内容だ。
番が現れなければ何も問題はない。
それを渡された獣人は悩むが、最終的にはサインする者が多いという。
しかしサインをしなかった獣人もいる。そういう獣人はたいてい結婚を逃している。
『あの時サインしておけば良かった!』と嘆く声をいくつか聞いた。
結婚、結婚、独身、独身、結婚、結婚、独身……。
結婚が必ずしも幸せとは言わないが、結婚したかったのにできなかった場合は苦しくなる。
『どうして、おかしい』
『くそっ、幸せそうな奴が憎い!』
『なぜこんなことに……』
『……エリリック殿下、幸せそうだな』
『そもそも俺が結婚できなかったのってエリリック殿下のせいなのでは?』
エリリックが、エリリック様のせいで、幸せそうな奴が憎い!
原因はクリスティーヌだ。
彼女が獣人と結婚するのは不幸せだと噂を流したせいで未婚女性は警戒した。
けれどクリスティーヌは他国の人間。わざわざソリティアまで会いに来なければ見ることはできない。
一方、自国のエリリックは貴族にとって身近な存在だった。
式典やパーティーなどで見かけるし、そのたびに番と幸せそうな様子を見せつけられる。
恨み、つらみが、だんだんとエリリックに集約していく。
それは数年規模の計画だった。
崩壊はあっという間で、一つの些細な失敗をあげつらわれ、エリリックは廃嫡となった。
それに伴うように父親である国王も責任を問われ、自ら役目を下りた。
順番で言えば王弟のエランドが次の王になるかと思われたが、彼はあっさりそれを否定し、エリリックの弟を推薦した。
こうなることが分かっていたかのように子供のうちから柔軟な考え方を学ばせ、番についても「大事だが、かといってそれ以外の人をないがしろにしていいわけじゃない」としっかり教えていた。
彼が一人前の王になるまではエランドが補佐をし、番が現れた場合の契約書が広まっていることから法案へと結びつけた。
それは10年経ってようやくのことであった。
しかしその法律ができた頃には、エリリックと同世代の男性陣は適齢期を超えており、生涯独身で暮らさざるを得なくなる者たちも多かった。
不遇の世代。後に歴史書にはそう記されることになる時代である。
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