第51話 真野奏
光沢大治は次の日、学校を休んだ。
そしてそれを一番に気がかりに思っている女子がいる。
真野奏だ。
真野奏は光沢にあれから何度か連絡を取っているが何も返信が来ない。
ラインは既読こそ付くが返信は来ないし電話にも一度も出ない。
彼女の中には謎の焦りが沈澱していた。
彼女が今一番相談…力になって欲しい事。
それは…。
「真野さんヤバいよね〜」
「光沢君と付き合いたいからって田辺君踏み台にしたんでしょ?」
「マジヤバない?雌ヒョウよ!雌ヒョウ!!」
とか…、
「俺密かに狙ってたのに残念だわ」
「まぁ良いじゃんヤバいのに引っ掛からなくて!」
「でもあれは無いわなぁ〜」
「あぁ見えて性欲ヤバいんかな?俺もワンチャン…」
「おまっマジ!?」
だとか…。
真野に関するクラス内での評価は尻軽浮気女として固まっていた。
今までの真野のクラス内での印象は無口で寡黙…ミステリアスな少女。
しかし男女間の関係には気を使っている…軽率な事はしない。
そう思われていた。
しかしそれも過去の話。
現在の彼女の印象は最悪の一言に付きた。
まさに尻軽浮気女と言う言葉に集約されていた。
何処から聞きつけたのかは知らないが田辺と付き合いながら裏では光沢と出来ていると言う話は既にクラス内で浸透していてむしろ知らない奴の方がいないんじゃないかっ?
と言う状況。
一刻も速くこの状況を何とかしたい。
しかし自分でどうにか出来る気がしない。
だからこそ共にこの状況を解決するための話し合い…相談がしたいのに光沢は一向に電話に出ないしラインも返さない。
彼女はそれが怖かった。
「どうして!どうしてなの!?前までどんなことでも相談に乗ってくれたのに!!どうして何も言ってくれないの!!」
やがて焦りは苛立ちへと変わる。
どうして私がこんなにも苦しんでいるのに力になってくれないんだ!!
そんな身勝手な思いがいつしか彼女の思考の大半をしめていた。
そんな自分本位な怒りを抱えながら彼女的には理不尽な扱いを受ける毎日の中で彼女は見てしまった。
彼女は…真野奏は見てしまった。
私が振った…ふった事になっている男子。
光沢に比べて…いや、比べるべくも無くぱっとしない男子。
田辺葉の事を。
彼は私に振られた事になっている…、その筈なのに…そんな事無かったかのように笑っていた。
どうしてアイツは笑っているのに私はこんな鬱屈とした気持ちで毎日を送らないと駄目なんだ。
こんなのおかしい…。
不公平だ!
割に合わない!!
私の足は自然と彼の…田辺葉の元に向かって行った。
そして私は彼の前で足を止める。
彼の周りには鳴海圭の他にも雪坂空音や朝咲花織…そして阿久利未音がいた。
この時の私には田辺葉しか見えて無かった。
視界にはそれ以外の人達も確かに映っている。
しかし人の脳とは不思議な物で意識を集中すれば他の物は不純物として除外し意識の外に追いやる。
故に見えているのに見てないと言う特殊な状況を生み出してしまうのだ。
「少し良いかな?田辺君」
「へ!!?ま…真野さん…?」
田辺葉は驚いている…。
そうだ…もっと驚け!
そうして無様に滑稽に狼狽えればいいんだ!
と、気分良くなってたのに隣にいた女子が話し掛けて来た。
「葉に何か用な訳?」
「えっ?」
「あっ!別に葉と用でオヤジギャグとかじゃないからねぇ〜えへへ〜」
ヘラヘラしていて生理的に受け付けない…それはあの雪坂空音の友人でクラスカースト上位の女、阿久利未音だった。




