表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
顧雍  作者: 涼風隼人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/15

第10回 顧雍、左司馬となり荊州安定に寄与する

 顧雍は左司馬となり、孫権率いる呉軍の全体を統括する立場になった。左司馬は陣頭に立って指揮を採ったり、自ら戦うことをする訳ではない。あくまで、軍全体の統括であり、いうなれば「影の軍師」の様な立場である。

 

 全体の戦力を把握して適切な配分を行い、兵糧や武器の調達、軍法の確立、治安維持に必要な豪族や異民族などの監視や交渉、人事の提案など、軍が軍として戦う前の全てを取り仕切ると言った重要な役割である。

 

 現在最も戦力の強化や注意が必要なのは「荊州」である。

 

 「赤壁の戦い」において、寡兵で曹操に見事を勝利した孫権軍であるが、荊州の北部は曹操、東部は孫権、南部は劉備が押さえているといった非常に複雑な状況となっていた。

 

 荊州は交通の要所と言ってよく、各勢力ともその領土の拡大に躍起になっている。よって、左司馬の顧雍としては、荊州に関する決定が最重要項目と言えた。

 

 まず、江夏を完全な軍事拠点として確立した。守功両面で考えたときに、呉からすれば最も重視すべきがこの江夏であった。

 

 そして治安維持の向上における山越以外との交渉は、いまや側近として仕えている趙元に任せていた。

 

 趙元はその人間性の中心に「誠実さ」を持っており、交渉事を行わせることに全く不安はなかった。

 

 既に亡き、孫呉の英雄「周瑜」がかつて拠点とし、今でも重要な軍事拠点である「柴桑」の豪族たちが些か不穏な動きを見せているとの情報が入り、顧雍は趙元をすぐに派遣した。

 

 主だった豪族たちは、趙元を歓迎した。

 

 どうやら、ここ最近、盗賊の類が増えており、その討伐を軍に依頼したところ、現段階では時期尚早、と却下され、それならば自分たちの身は自分たちで守るしかない、と立ち上がろうとした行為が、「不穏な動き」として、顧雍に報告が入ったようだ。

 

 結果、趙元が軍部に盗賊討伐を命じ、この問題は解決した。

 

 趙元が顧雍にあらましを報告した。顧雍が言う。

 「我らが呉軍は優秀ではあるが、腰が重いのが難点だな。」


 「はい。住民たちと軍部の感じる危機感に差があるのが問題だと思います。」

 

 「なるほど。危機感の差か・・・。」

 

 この危機感の差は、国政でも如実に表れている、と顧雍は感じていた。

 

 北方の曹操には、かつて赤壁の戦いで勝利を得たとしても、その有する地力の差を理解しており、誰一人侮る者はいなかった。

 

 一方、荊州南部を押さえている劉備を侮る者は非常に多い。

 

 荊州南部は、孫権が情けで「貸している」土地であり、呉軍が本気で戦えば、いつでも取り戻せると思っている。

 

 しかし、劉備軍は強い、と顧雍は感じている。

 

 まず、指揮を採る将軍の力が、頭一つ抜けている印象をもっている。そして、軍師として「諸葛亮孔明」が控えているのである。

 

 顧雍は口に出して言わないが、劉備は荊州を孫権に「返還する」意志など鼻から持ち合わせていないと思っている。

 

 現在劉備は、益州攻略に励んでおり、それが終われば荊州を返すことになっているが、中華の地図を開けば歴然、その可能性は無い。

 

 何故なら、劉備が益州一州の地方政権、軍閥で満足する以外に、荊州を手放せば交通の要所を失うことになり、劉備の掲げる打倒曹操、漢の復興は叶わなくなるからである。

 

 実際、劉備は益州の攻略に成功するが、それに伴う荊州の返還の話はうやむやにしていた。

 

 そして、孫権がとうとう激怒して顧雍に言った。

 「元歎、劉備は益州攻略までは荊州を貸してほしい、という話であった。それを認めてやったのに、劉備は何も言ってこない。ここに至っては、劉備攻略の軍を動かしたいがどうか。」


 「孫権様のお気持ち、重々わかったうえで言わせてもらえば、今劉備に向かって兵を動かせば、喜ぶのは曹操。江夏や建業を失いかねません。」


 「即座に、曹操が攻めてくると申すか。」


 「はい。曹操の国力は回復し、以前より強くなっております。こちらが隙を見せれば、あの曹操が動かないわけがありません。必ずや大軍を差し向けて来るでしょう。」

 

 顧雍は更に続ける。

 「また、劉備も主力が益州にあるとはいえ、関羽を江陵に残しております。関羽はご存知の通り、一騎当千の名将でございます。」


 「劉備軍にも、勝てぬ可能性があるということか。」


 「申し訳ございませんが、そうなります。ここは座して動かず、耐えることが肝要の時でございましょう。」


 「・・・わかった。ここは元歎の言葉に従うとしよう。しかし、荊州南部の返還はどうしても諦められん。」


 「もちろんでございます。この点は、荊州を担当している魯粛殿にお任せするのがよろしいでしょう。」


 「子敬か。頼りになる男ではあるが、やや、劉備に肩入れしすぎの所があると私は思っている。そこでだ、元歎。一度、子敬と話をして、今後の劉備、荊州南部について、意見を求めてくれぬか。」


「ご命令とあらば、その様にさせて頂きます。今しばらく、お待ちくださいませ。」


こうして、顧雍は魯粛と、今後の劉備と荊州南部について話し合うことになったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ