表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貞操逆転世界で一文無しの僕を拾ったのは、太陽みたいなS級美少女(聖女/肉食系?)でした。  作者: 秋葉原うさぎ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/13

第7話(前):小悪魔な迷い猫と世界地図。そして朝の餌付け戦争。

〜完璧な計算で攻めてきた幼女が、夢の中のお風呂で自爆してデレるまで〜


1.恐怖という名の拘束具(ホラー鑑賞会)


 お風呂での修羅場(と、その後の濃厚な洗いっこタイム&ルミナさんによる消毒タイム)を終え、僕たちはようやくリビングに戻ってきた。


 湯上がりの体はポカポカと温かく、肌からは三人とも同じ高級ローズの香りが漂っている。

 時計の針は22時を回っていた。

 外は相変わらずの静寂に包まれているが、リビングの中は妙な熱気に満ちていた。三人で一つのソファに座っているからだ。


「……ねえ、お兄ちゃん。まだ寝るには早いよね?」


 僕の左隣、ソファにちょこんと座り、足をブラブラさせていたココちゃんが、上目遣いで提案してきた。

 彼女は今、ルミナさんの昔のパジャマ(フリルのついた白いネグリジェ)を着ている。サイズが少し大きいため、肩が落ちて華奢な鎖骨が見え隠れしているのが、計算なのか天然なのか分からなくて心臓に悪い。

 お風呂上がりの火照った頬が、リンゴのように赤い。


「そうだね。何かする? トランプとか?」

「ううん! ココね、映画が見たいな! このお家、すっごく大きなテレビあるし!」

「映画か。いいですね。ルミナさん、何かおすすめはありますか?」


 僕が右隣に座る家主に水を向けると、ルミナさんは少し考え込み、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「あるわよ。とっておきのやつが。ココちゃんみたいな『お子様』にはちょっと刺激が強いかもしれないけど?」


 ルミナさんがラックから取り出したのは、『呪われた男子寮〜彼らは全員食べられた〜』という、タイトルからしてB級感が漂うパッケージのディスクだった。

 パッケージには、逃げ惑う美少年たちと、それを追いかける無数の影(女性?)が描かれている。


「えっ、ホラー? ココちゃん大丈夫?」

「へいきだよ! ココ、お化けなんて怖くないもん! ルミナお姉ちゃんこそ、ちびっちゃうんじゃない?」


 ココちゃんは自信満々に胸を張り、ルミナさんを挑発した。

 バチバチと火花が散る。

 こうして、深夜の映画鑑賞会が幕を開けたのだが――。


 ――数十分後。


「ぎゃあああああああっ!!!」

「ひいぃぃぃぃぃぃっ!!!」


 リビングに二重奏の悲鳴が響き渡っていた。


 画面の中で展開されていたのは、予想を遥かに超える地獄絵図だった。

 古代のウイルスによって理性を失い、ゾンビ化した肉食女子たちが、イケメン男子寮に雪崩れ込み、文字通り「食い散らかす」という阿鼻叫喚のパニックホラー。

 スプラッター的な意味でも怖いが、この世界の「女性の性欲のメタファー」として描かれているのがリアルすぎて、男性である僕にとっても精神的にキツい。


『イヤだ! 来るな! 僕の貞操がああああっ!』

『ガブゥッ! ジュルルッ!』

『骨まで……骨までしゃぶられ……』


「む、無理無理無理! 来るなーっ!」

「た、食べないでぇぇぇ! 私はまだ心の準備がぁぁぁ!」


 恐怖に耐えきれなくなった二人が、左右から同時に僕に飛びついてきた。


 ドスンッ! ギュウゥゥッ!


 右腕にはルミナさん。豊満な胸が押し付けられ、爪が食い込むほど強くしがみついている。震えが直に伝わってくる。

 左腕にはココちゃん。小さな体で震えながら、僕の服の中に頭を潜り込ませようとしている。


「ちょ、二人とも! くっつきすぎです! 苦しい!」

「だって怖いんだもん! ミナトくん助けて! あのゾンビ、動きがリアルすぎる!」

「お兄ちゃん……怖い……守って……食べないで……」


 僕の両側から、温かい体温と甘い匂いが波のように押し寄せてくる。

 恐怖で震えているはずなのに、その感触はあまりにも柔らかく、艶めかしい。

 ルミナさんの太ももが僕の足に絡みつき、ココちゃんのサラサラした髪が僕の顎をくすぐる。


(……これ、映画の内容より、今の状況の方が心臓に悪いんじゃ……)


 僕は画面から目を逸らし、天井を見上げた。

 テレビの中ではゾンビの咆哮が、両脇ではヒロインたちの悲鳴と甘い吐息が響く。

 映画が終わるまでの1時間、僕は「恐怖という名の拘束具」によって、二人のヒロインにサンドイッチにされ続けたのだった。


2.ダブル・ベッド・サンドイッチ


 映画が終わり、エンドロールが流れる頃には、二人ともぐったりと疲れ切っていた。

 精神力を使い果たしたようだ。


「……怖かった……もうトイレ行けない……」

「ココも……お兄ちゃん、ついてきて……ドアの前で歌ってて……」

「はいはい、廊下の電気つけますから」


 すっかり怯えきった二人(ルミナさんは若干演技が入っている気がするが、ココちゃんはガチで涙目だ)を宥め、歯磨きを済ませる。

 そして、運命の就寝タイムがやってきた。


「じゃあ、僕はソファで寝ますから、二人はベッドで――」

「「ダメ!!」」


 二人の声が重なった。ハモった。


「な、なんでですか?」

「あんな映画見た後に一人で寝れるわけないでしょ! ミナトくんがいないと、ゾンビが布団から出てくるかもしれないし!」

「そうだよお兄ちゃん! ココ、怖い夢見ちゃう……一人じゃ寝れないよぉ……」


 二人は潤んだ瞳で僕を見つめ、左右の腕をガッチリとロックしたまま離さない。

 これはもう、逃げられないパターンだ。

 僕自身、あんな映画を見せられた後で、女の子二人を放っておくのは寝覚めが悪い。


「……わかりました。じゃあ、三人で川の字で寝ましょうか」

「やった! ミナトくんが真ん中ね!」

「お兄ちゃん、腕枕してね♡」


 なし崩し的に、三人での同衾どうきんが決定した。


 ルミナさんの寝室にあるキングサイズベッド。

 真ん中に僕。右にルミナさん。左にココちゃん。

 電気を消し、闇に包まれると、視覚情報が遮断された分、触覚と嗅覚が鋭敏になる。


「……ミナトくん、あったかい」

「お兄ちゃん、いい匂い……」


 右からは大人の女性の柔らかさと包容力が。

 左からは少女特有の華奢さと、ミルクのような甘い香りが。

 二つの異なる「感触」が、僕の理性を左右から削り取っていく。


(……眠れるわけがない)


 僕は直立不動(仰向け)のまま、天井のシミを数えることに専念した。

 羊が一匹、羊が二匹……。

 しかし、二人の攻勢は止まらない。


 モゾモゾ。

 ココちゃんの手が、僕のパジャマのボタンを隙間からこじ開け、素肌に触れてくる。


「ひゃっ! ココちゃん!?」

「……んぅ……お兄ちゃんのお腹、ぷにぷにしてて気持ちいい……安心する……」

「寝ぼけてるの!? 手、冷たいよ!」


 ギュッ。

 反対側では、ルミナさんが僕の太ももを両足で挟み込み、抱き枕のようにホールドしてきた。


「……スー……ミナトくん……逃がさない……」

「ルミナさん!? 足! 足がすごい位置に!」


 右も左も地獄(天国)。

 僕は、いつか来るであろう「朝」を待ちわびながら、意識を遠くへと飛ばした。

 まさか、その朝にもっと大変な事件が起きるとは知らずに。


3.夢の中の温もりと、決壊


 深夜。

 静寂の中で、ココは深い夢の中にいた。


 (……あったかい……)


 夢の中で、彼女はまた、あのお風呂に入っていた。

 湯気で白く煙る、温かいバスルーム。

 目の前には、大好きなミナトお兄ちゃんがいる。


 『ココちゃん、背中流すよー』

 『うん、お願い♡』


 大きな手が、背中を優しく撫でてくれる。

 ゴツゴツしているけれど、とても丁寧で、温かい手。

 その手が触れるたびに、心の中の不安や、一人ぼっちだった時の寂しさが溶けていくようだった。


 (……気持ちいい。お兄ちゃんの手、魔法みたい)


 夢の中のココは、ミナトに抱きついていた。

 お湯の温度が心地よい。

 全身の力が抜けていく。

 とろとろに溶けてしまいそう。


 『リラックスして』


 夢の中のミナトが、甘い声で囁く。

 全部、委ねていい。

 我慢しなくていい。


 (……うん。お兄ちゃんに、全部あげる……)


 温かい水流が、体から溢れ出していく感覚。

 それはお風呂のお湯と混ざり合い、さらに彼女を温かく包み込んでいく。


 ああ、幸せ。

 ずっとこうしていたい。

 お兄ちゃんの腕の中で、温かいお湯に包まれて――。


 ――しかし。

 その「温かさ」は、徐々に、不快な「冷たさ」へと変わっていった。


(後半へ続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ