表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

復讐

作者: しのぶ

 夜更け、都市郊外の駐車場。

 白い高級車の後ろに陣取り、俺はあぐらをかいて座っていた。

 上下都市迷彩を着込み、顔には灰色のバラクラバを装着している。

 もう何回目かの手順のチェックを行って大きく息をつく。

 目をつぶり、音に集中する。

 脳裏にあの日のやつの顔がフラッシュする、ニヤケ顔で俺の半身を奪った。奥歯からギリギリと音が鳴る。


 ロック解錠の電子音が聞こえ、瞼の裏に黄色い光が差し込む。

 俺が潜む方に向けて足音が近付いてくる。

 音が出ないように慎重に身を起こした俺は、金属バットのグリップを右手で掴んだ。

 クソ野郎は助手席に荷物を置くと、運転席のドアに手をかけた。

 俺は素早く躍り出ると、クソ野郎の後頭部へ向けてバットを叩き込む。

 「ぐっぁ」

 くぐもった声を出し、クソ野郎は車のドアに縋り付くように崩れた。

 殴打した感覚が手のひらから脳にせり上がり、興奮と快感が身体を駆け巡る。

 身動ぎするクソ野郎の背中に追い打ちの一発。

 口から空気が漏れるような音がした。

 「きちんと頭に当てないと音が響いちまうな」

 崩れ落ちたクソ野郎の襟首を掴み、頭の位置を調整する。

 振り上げたバットを後頭部に二度叩きつけた。

 クソ野郎は失神し、手足が痙攣をはじめた。

 口元が釣り上がるのを感じる。

 まだだ、万が一の可能性も消す、きっちりやり切る。

 俺はうつ伏せになったクソに歩み寄ると、首にブーツを乗せ、全体重をかけて踏み抜いた。

 硬質な音とともに、脊椎が破壊される感触が足に残る。

 「手間を掛けさせやがって」

 俺はクソの体を運転席に押し込むと、車の後ろに回ってガソリンタンクを手に取る。

 クソに念入りにガソリンをかけると、助手席、後部座席とかけ、ポリタンクを車に放り込んだ。

 懐からタバコを取り出すとライターで火を付けた。

 深く煙を吸い込み、一服しながら変形したクソの顔を眺める。

 「自分は死なないとでも思ったのか」

 深い溜息をつき、無造作にタバコを運転席に放り投げた。

 たちまち炎が車を包み込む。

 俺はその光景を目に焼き付けると、計画した逃走ルートへ走り出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ