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第6話 C級

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 第6話 C級

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 黒塗りスモークガラスに押し込まれ、連れてこられたのはダンジョン管理省だった。

 テレビでは何度か見たことあるけど、本省に入ったのは初めてだ。

 そこでシャワーを浴び、メディカルチェックを受けた。さらに痣だらけの体だったので、回復魔法もかけてもらった。おかげで、かなり体が楽になった。


「私はダンジョン管理省ダンジョン管理部ダンジョン管理課第一係の杉崎尊司すぎさきたかしといいます。葛城照さんにいくつか質問があります」


 三十代の杉崎さんから名刺を受け取る。こういうところは、まだ紙なんだよな。ニッポンの役所って、こんなものだよね。


「なんでしょうか?」

「葛城さんが第89ダンジョンに入っていた時に、ダンジョン進化が起こりましたのは、ご存じですか?」


 ダンジョン進化、これはダンジョンの難易度が上昇することを言う。

 あの第89ダンジョンは元々E級ダンジョンだったが、それがD級やC級になったということだ。


「やっぱりそうなんですね。俺はゲートが見えていたところで、いきなり空間が歪んだような感覚に襲われ、気づいたらよく分からない場所にいたんです」

「なるほど、それはダンジョン進化の顕著な事情ですね。……他の探索者はどうしてますか?」

「……死にました」

「………」

「多分、生き残りは俺だけだと思います」

「他の探索者が死ぬ現場を見ましたか?」

「全員かはわかりませんが、見ました」


 重い話だが、俺は虚実を織り交ぜて語った。

 ダンジョン進化後すぐに蟻たちに襲われたこと、怖くて隠れていたこと、その後襲われたがなんとか逃げ切ったことだ。

 俺自身普通なら逃げ切れると思わないが、運がよかったと言い張った。


「分かりました。情報提供に感謝します」

「あのダンジョンの難易度はDくらいですか?」

「いえ、測定の結果、B級に指定されました」

「え……B級……ですか?」

「はい。B級です。E級から一気に三ランクも上がることは過去に例がないだけに救出隊を組織するのも苦労しています」


 B級以上の探索者の数は、かなり少ない。

 それに多くは巨大ギルドに所属しており、国内のB級以上のダンジョンに入っていることが多い。

 ダンジョン管理省がB級以上の探索者を集めようとしても、すぐに集まるものではないだろう。


「あと、葛城さんが持ち帰った蟻型モンスターの死骸は、こちらで引き取らせていただきます。代金はしっかりお支払いしますので、ご安心ください」

「あ、はい。お願いします」


 どの部分が買い取り対象か分からず、一体丸ごと持ち帰った兵隊群体蟻だ、ここで引き取ってくれれば手間がなくていい。


「他に持ち帰られたクロスライトも合わせて引き取りますので、こちらが明細になります」


 明細を見て驚いた。

 これまで得た金額と桁が違ったのだ。


「これ、間違いじゃないですよね?」

「はい。何せB級ダンジョンのモンスターの素材ですから、それくらいになりますね」


 B級ダンジョン、パネェ。

 お金をどうやって使おうかと考えながら立ち上がった際、ふらついた。疲労が溜まっているのを忘れていたよ。


「大丈夫ですか?」

「はい、疲れが溜まっているだけですから」


 メディカルチェックはすでに受け、念のための回復魔法も施してもらった。それでも疲労は回復しない。


「ご自宅へお送りします。今日はゆっくりお休みになるのがよろしいでしょう」

「ありがとうございます。でも、一人で帰れますから」

「いえ、お送りさせてください。そのほうがいいですよ」


 杉崎さんが、窓のブラインドを指で広げ、見てみろと言わんばかりの目をする。

 窓の下を覗くと、人だかりができていた。


「なんですか、あれ?」

「三ランクものダンジョン進化したダンジョンからの生還者である葛城さんに少しでもインタビューがしたいようですね」

「うわー……」


 目立ちたがり屋なら、あの中に突撃することだろう。

 だが、俺はそこまで自己主張はない。


「お送りしますね」

「……はい。お願いします」


 ビルの中でカーテンがついたワンボックス型の飛空車に乗せてもらい、ダンジョン管理省を出た。

 俺が生まれた世界と違うのは、自動車が空を飛ぶということ。そして、その駐車場は地上二十五階にあるため、マスコミが駐車場の出入口を見張ることができない―――やろうと思えばできるが、二十五階にある駐車場の出入りを妨げる行為は重大な事故に繋がるとして、かなり重い刑罰の対象になる。


 マンションに帰ったが、冷蔵庫に食べ物が入ってなかった。

 買い物をする気にならないので、デリバリーを取ることにした。





 三日ほどだらだらした。

 元々探索者を辞めるつもりだったので、そのまま辞めるのか続けるのかを考える時間だった。というのは冗談で、最初の一日目の十分ほどで考えが纏まった。


 実をいうと、このマンションはあと二カ月で出ていかないといけない。それが移民局との契約だからだ。


 俺はこの世界に巻き込まれて連れてこられたと今でも思っているが、他の六人と力が大きく離れていた。

 べつに探索者にならないといけないわけではなかったが、S級ダンジョンを踏破すればどんな願いも叶う。

 元の世界に帰ることができるとしたら、それしかないと思ったので探索者になった。


 能力がE級でも、俺の職能は吸収だ。成長型だから、いずれはS級ダンジョンを踏破できると信じていた。

 だが、探索者になったはいいが、これまで年収二百五十万円を超えたことがない。

 他の迷い人たち六人は皆大手ギルドに所属し、豪邸に住んでいるようだ。それに比べ、俺はE級探索者としてE級ダンジョンで底辺の探索をしていた。

 三年間底辺の探索者として足掻いてきたので、このマンションを出るのを契機に探索者を辞める決意をしたわけだ。


 それがどうだ、今の俺はなんとC級の能力を持っているじゃないか。タブレットでちゃんと調べたから間違いない。

 ただ、俺が持っている職能は吸収の他に群体司令官もあるが、タブレットでは吸収しか表示されなかった。なんでだろうか?


 俺はC級探索者のライセンスをすでに申請した。タブレットからできるから楽でいい。


 この三日は住む家を探していたのだ。それもようやく見つけた。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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