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第2話 異世界?

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 第2話 異世界?

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 遡ること三年前。

 夏の強い日差しの下、俺は毎日通る道を歩いていた。周囲には同じ高校に通う生徒たちがいる。

 キキーッガシャンッ。そんな強烈な音がし、俺は振り返った。そこではトラックがガードレールに突っ込み、複数の生徒がその周囲で倒れていた。事故だ。


「おい、大丈夫か?」


 俺は倒れていた女子生徒に駆け寄り、声をかけた。とめどなく流れ出る血が、彼女の状態を物語っていた。このままではこの子は危険だ。

 俺はスマホの緊急通報を押した。が、緊急通報は繋がらない。

 それどころか、俺は光に包まれていた。


「なっ!?」


 眩しい光に、俺はスマホを持つほうの腕で目を覆った。

 いったいなんなのだ?

 目を開けると、なんと屋内だった。屋外でトラックの事故現場にいたはずが、なぜか建物の中にいたのだ。いったい、ここはどこなんだ?

 しかも、俺が声をかけた女子生徒をはじめ、トラックに撥ねられた生徒たちが周囲に転がっている。

 だが、その生徒たちは明らかに異常だ。いや、異常がないことが異常なのだ。生徒たちから血が一切流れていないのだから。

 よく見たが、傷が一つもない。

 そして俺自身も異常だった。女子生徒を介抱しようとした際に、多くの血が付着している。なのに、俺の服や手にまったく血がついていないのだ。


 俺が動揺していると、一人二人と目を覚ましていった。俺が声をかけた女子生徒も目が覚めて上半身を起こした。

 もう助からないと思っていただけに、彼女が何事もなかったかのように動いている姿を見てホッと胸を撫で下ろした。


 俺たちがいる場所は、石造りの建物の中だ。冷たい石の床に俺を含めて七人の生徒がいる。

 俺が通っていた高校はマンモス校で、七人のうち六人は顔も知らない生徒だ。


「ここはどこ……?」


 女子生徒が掠れる声で呟いた。

 その問いに応えられる生徒はいない。俺を含めて。


「これはもしかして、異世界召喚!?」


 眼鏡をかけたお下げの女子生徒がいきなり吠えた。


「ヤッホーッ! 異世界だーっ!」


 お下げの子は飛び上がって喜んでいる。そんな彼女を、皆がポカーンと見ている。

 ギギギッと錆びた蝶番が鳴くように扉が開く。そこから一人の老婆が現れた。優しそうなお婆ちゃんだ。


「迷い人の皆さん、こんにちは」

「「「迷い人?」」」


 老婆は困ったような表情をし、説明をしてくれた。

 老婆曰く、この建物は数千年の間ここに建ち続け、この世界に迷い込んでくる人々を受け入れていたのだとか。


「召喚ではないのですか?」


 お下げの子だ。


「他の世界から人を呼び寄せることは我ら人にはできません。それに、ここに呼ばれた人は、元の世界で命を失うほどの怪我や病気だった方々です。そんな都合のよい召喚など、人の成せる技ではありませんよ」


 ちょっと待ってくれ。俺は命に係わる怪我も病気もしてないんですが!? そんな俺がなぜここに呼ばれたんだよ?

 俺が盛大に混乱していると、老婆は話を続けた。


「今、役人がこちらに向かっています。皆さんはそこで今後のことを決めることになります」

「あの!? チートはないのですか!?」


 お下げの子は必死だな。


「たまにチートと口にする人がいますね たしか、反則的な能力のことでしたか?」

「はい! 特殊な力とか、この世界で生まれた人より強力な力です」

「この世界の者にも、迷い人にも何らかの力があります。そして、迷い人の多くは強力な力があると聞いています」

「チートあるんだ!?」


 お下げの子は嬉々とした表情を見せた。

 俺もたまにネット小説を読んでいることから、そういった話は知っている。その知識からすると、どうやら俺は『巻き込まれた』のだろうと推測できた。

 だが、召喚されたわけでないのに、『巻き込まれた』ということになるのだろうか?


 そこでまた扉が開いた。今度は男性二人と女性一人の三人組だ。異世界なのに、三人ともスーツを着ている。

 老婆も品のよい今時の服を着ているが、この世界は俺たちが生まれ育った世界とそんなに文明レベルが変わらないのだろうか。


「皆さん、こんにちは。私は溝呂木隆こおろぎたかしといいます。こちらは、三国博隆みくにひろたか、こちらは山田咲江やまださきえです」


 三人の名前は日本人ぽい。顔もそうだが、まったく違和感がない。何よりも言葉が日本語だ。

 あと老婆も、日本人と言われても違和感はない。

 溝呂木さんは四十代、三国さんは三十代、山田さんは二十代と思われる。


「私たちは移民局の者です。これから皆さんを、移民局へお連れしますので、ついてきてください」

「あ、あの」

「はい、何でしょうか?」

「俺たちはどうなるのでしょうか」

「しばらくは移民局の管理下で過ごしてもらいます。最大で三年間は皆さんを保護します」


 最大三年か。長いのか短いのか……。

 俺は高二でまだ誕生日がきてないから十六歳だ。三年後でも十九(ほぼ二十歳)でしかない。その時点で誰かの庇護を受けられないのは、不安でしかない。


 俺は老婆に礼を言い、三人についていった。

 錆びた蝶番の扉を出て廊下を歩き外に出たのだが、驚いた。


「未来の日本か……」

「何、ここ……?」


 誰かが呟いた声が聞こえてきた。

 俺たちがいた石造りの建物は、神殿のような建物で小ぢんまりしている。だが、その周囲には高層ビルが乱立しているのだ。

 さらに、空には自動車が飛んでいた。翼もジェットエンジンもない自動車が飛んでいるんですよ!

 さらにその上には巨大な船が浮いている。海とかに浮いているマストがある船だ。


「なんじゃこりゃ……」


 俺は本当に異世界に飛ばされたのだろうか?



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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