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The Glimmer Man ─グリマーマン─  作者: 琥珀 大和
PSY.2 Escape From Stargate Project

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79/80

Episode.79

10分ほど様子を見て、不審な動きをする者がいないことを確認する。


職員や警備員などについては、最初から敵対する者ばかりではなかった。そして、逆に能力者に関しては注意が必要な者も存在する。


長期間に及ぶ被検体として精神的に異常をきたしたり、ある種の洗脳効果を生む場合があった。


もともと脳機能や精神などというものは、きわめてデリケートなものだ。それを研究のためだと公言されて弄りまわされた者の全員が正常なはずがない。


特に希少性や汎用性が高い能力を持つ者は、被検体として過酷な時間を過ごす。


さすがに実験動物に用いられるラットやマウスのように繁殖性が高いわけではなく、代替えの効くものでもないため命を軽視されることはない。


しかし、イーリスのような例もあることだ。他にどのような非人道的な環境に追いやられているかはわからなかった。


因みに、日本で実験に用いられるマウスは飼養変種として改良されており、ゲノムプロジェクトによって全ゲノム配列が解読されている。ゲノムとは全遺伝情報のことを指し、実験や検証の被検体として最適なモデル生物なのだ。


ただし、人のゲノム配列については、2003年時点でATGCの羅列のみが決定されているだけである。


ATGCとは、染色体を構成するDNA分子に含まれるアデニン、チミン、グアミン、シトシンの4種類の物質の頭文字を指し、これだけではどこが遺伝子として発現するのか明確ではない。


要するに、人の遺伝子や脳は複雑でまだまだ解明されていないことが多いため、無闇矢鱈に実験材料にするなど倫理的にも医科学的にも禁忌なのである。


月影などは学会で発表して脚光を浴びたいという地位や名声欲よりも、自身の探究心を満足させたいというエゴの方がはるかに高いため凶行に走るのだ。


この施設や運営している奴らは、それを知りながら月影のような狂人を重用する。


世間に露呈すれば非難を浴びるだけでなく、重罪として何人もが投獄されて然るべきことだ。


ただ、ここを運営している奴らの上には政府の要人や大企業のトップが存在する。


そいつらの狂った思考と教唆罪をメディアを通じて明るみにするか、この世から存在を消し去ることが俺の今後のテーマとなるのだ。


おそらく前者では期待する成果は出ないだろう。社会的地位や経済力など、太刀打ちするには相手が悪すぎる。メディアの運営元に圧力をかけるなど、奴らにとっては常套手段なのだ。


それならば、選択肢は後者一択である。








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