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The Glimmer Man ─グリマーマン─  作者: 琥珀 大和
PSY.2 Escape From Stargate Project

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74/80

Episode.74

そうやって何か大事なものをなくし、心が少しずつ壊れていった。


しかし、ファーストは俺と違って他人を気づかう優しさを見せてくれている。そこに打算的な何かは見出せない。


『そんなに落ち込まないで。』


俺の表情がわかるのだろうか。


脳だけの状態で視覚があるとは思えない。


念視の類なのだろうか。


視界を閉ざされた俺には、周囲にいる存在をぼやっと知覚する程度のことしかできなかった。


『これは能力じゃないわ。ずっと何も見えないの。念視では存在はわかっても、表情を読むことはできない。だから空気とか雰囲気を感じるとでも言うのかな。もしかすると、人の心が何となく見えるのかもしれないけれど⋯』


人としての五感が閉ざされているのだ。


もしかするとファーストは、その分だけ第六感が優れているのかもしれない。


第六感とは視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚以外の感知能力をいう。霊感や超感覚的知覚とも呼ばれ、分類としては超能力という説もあった。


「ありがとう。思えばファーストにはずっと支えてもらっていたな。」


『そんなことはないよ。私の方こそ、あなたとの掛け合いは楽しいもの。勝手に友だちと思ってるし。』


「俺も大事な友だちだと思ってる。」


『本当?』


「ああ。」


目には見えないが不思議と可憐な少女の笑顔が思い浮かんだ。


『それじゃあ、治療の後にお願いを聞いてくれないかな。無理なら断ってくれてもいいから。』


「⋯わかった。」


ここで打算的なお願いをしてくれると気が楽だと思っている俺は、最低な奴かもしれない。




「ありがとう。」


眼も手も元に戻った。


傷や病気については、発病や受傷する前の状態に戻すという神業のような能力だ。いや、それよりも時間を操れるという能力は、それ以上に凄まじい影響力を持つ。


だからこそ今の状態で生命維持がなされ、惨い状態で生かされているということだ。


時間を操れるということは、予知能力以上に世界に大きな影響を与える。


『私の本名は山野・イリーシャ・アリス。だから以前はイーリスと呼ばれていたわ。言っとくけれど厨二病じゃないから。これでも北欧出身の母を持つハーフなの。小さい頃に友達から呼ばれていた愛称がイーリスだから。』


「そうか。」


『あと、ティーンエージャーよ。生きていたら⋯17歳のはず。』


生きていたら⋯か。


その気持ちはわからなくもない。


彼女にとって、今の姿は生きているとは言えないものなのかもしれない。


「それで、俺にお願いしたいことって?」


『ふたつあるのだけれど⋯』


「とりあえず聞かせてもらおうか。」


『あなたの本名を教えてくれない?』


「⋯路輝だ。佐藤路輝。」


『ロキ?』


「そうだ。」


苗字がありふれているからと両親が付けた名前だ。キラキラネームのようで好きじゃなかったが、エイトと呼ばれるよりもはるかに良い。


『そう、カッコイイわ。』


イーリスの言葉にからかうような語調はなかった。


「漢字で書いたら普通だけどな。」


『北欧神話の神の名前でしょう?』


「響きだけなら同じだな。それよりも、それが1つ目のお願いか?」


『うん。』


「もうひとつは?」


「それは⋯私を、殺して欲しいの。」





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