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The Glimmer Man ─グリマーマン─  作者: 琥珀 大和
PSY.2 Escape From Stargate Project

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Episode.73

彼女に視覚があるかはわからない。


それでも、普段と変わりなく接するように努力すべきだった。


『どうして?』


「何が?」


『あなたが激情するとは思わなかった。あそこで能力を使わずに状況を打開する手立てくらい、普段のあなたなら思いついたはずよ。』


「そこまで大人にはなれない。」


『⋯ありがとう。私の代わりに月影を処分してくれたのね。』


「自分のためでもある。」


『そう⋯そうね。』


「⋯⋯⋯⋯。」


2人ともしばらく無言だった。


少し重い空気が流れたが、身動ぎした瞬間に痛みで呻き声をあげてしまい会話が再開する。


『こっちに来て。』


意図がわからず、言葉がすぐに出てこなかった。


『治してあげるから。』


「治療?それが君の能力なのか?」


『治療ではないわ。時間を操る能力よ。』


「時間を巻き戻して、傷を元に戻すことができるということか?」


『ええ。それだけじゃないけどね。』


確かに、ケガや病気を治す能力だけなら、今のような形でここに拘束されることはなかっただろう。


治療に関する能力なら、身動きできない状況では用を成さない。


因みに、超能力というものは簡単な能力なら多種類を使える者が多かった。


汎用性の高い能力はバーサタイルと呼ばれ、先天的な固有系能力をユニークネスと呼ぶ。


これまでの定説では、ユニークネスは後天的に身につけることはほとんど無理だという見解が強かった。


「未来予知、それに原状回復ができるということかな。」


未来視は能力者の身の回りのことに限られるが、未来予知は重用される。


政治や経済、要人警護など、世界を大きく変える事象を予知できるとなると引っ張りだこだろう。


だからこそ、反抗的であったり非協力的な者は悲惨な状態に追いやられてしまう。拘束や軟禁、酷い場合は幽閉や監禁されて従順になるような措置を受ける。


だが、ファーストに限っては人の尊厳を踏みにじる以上の扱いを受けていた。


身体の自由だけでなく未来永劫、人としての営みすべてを閉ざされて意識のみを残されているのだ。これは命を奪われるよりも非情な扱いである。


『そう。だから早く来て。』


俺はゆっくりと立ち上がった。


気が重く感じる。


目の前に人としての幸福をすべて奪われた少女がいるのに、自分はなんて浅ましいのか。


眼球の奥の耐え難い痛み。


彼女のこれまでのことを思えば、一笑に付すことではないのか。


ファーストの苦悩を少しも緩和してあげられるわけでもないのに、自分の痛みはなくしてもらいたいと思っている。


初めて人の命を奪った時にも似たようなことを思った。


他人の人生を終わらせた罪悪感に苛まれようとも、人は腹が減り睡眠を欲する。





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