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The Glimmer Man ─グリマーマン─  作者: 琥珀 大和
PSY.2 Escape From Stargate Project

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72/80

Episode.72

眼球を抉って取ってしまいたい。


そう思わざるを得ないほどの痛みだった。


一歩進むごとに嫌な汗が吹き出てくる。歩く度に生じるわずかな振動が、損傷した部分を乱暴に刺激していく。そして、視力をほとんど失ったことによって、想像以上に情報量が乏しくなった。


壁に手を添えることとファーストの誘導を受けながら、何とか彼女が指定する場所までたどり着く。肩が上下するほどに息は荒れ、全身が嫌な汗でぐっしょりとなっている。


手足を拘束していた枷などは念動力(サイコキネシス)で破壊した。捕らえられていた部屋には月影が横たわっていたが、既に息絶えていることは確認している。


俺が奴に放った能力はやはり念動力(サイコキネシス)で、脳に繋がっている内頸動脈と椎骨動脈を塞いだのだ。


この二対の動脈を閉ざすことで、酸素供給を途絶えさせて脳死に陥らせる。


地味だが効果的で対策されにくい手法だった。


人の命を断つのは初めてではない。それに相手が月影なら罪悪感など感じることもない。


ただ、ファーストの現状を聞いたことで胸が張り裂けそうだった。


手探りで奪ってきた月影のIDカードを扉にかざして室内へと移動する。


正面にボヤっと光る円筒型の何かが見えた。


幅は1メートルくらいだろうか。


ぼやけたシルエットでしか見えないが、天井までの高さがあり、中央付近に何かが浮かんでいるようにも見える。


周囲に小さな気泡が出て上へと浮かんでいっているのか、その個体も形がはっきりとしない。白っぽい何か⋯しばらくして、それが何なのかの予想がついた。


近づけば今の視力でもはっきりとわかるのかもしれない。


ただ、それを直視する勇気が出なかった。


近くの壁に背中を預ける。


そのまま脱力したかのように、膝から力が抜けていった。


背中を壁にすりつけながら、ゆっくりと腰を落として床に座りこんだ。


動悸が速い。


久しく味わったことのない息苦しさ。


そして、眼球の奥に刺すような痛みがともなった。


床にぽたぽたと雫が落ちていく。


俺は⋯泣いているのか?


『大丈夫?』


「⋯大丈夫とは、言い難いかな。」


鼻をすすりながら、泣いているのを悟られないよう努力した。


下を向いていると、眼球の奥の痛みがさらに酷いものとなる感覚がある。


膝を曲げ、腕を乗せてそこに顔をうずめた。


できるだけ普通に接するべきだ。


そう思いながらも、顔を上げることができなかった。





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