Episode.62
俺に未来予知はできない。
しかし、未来視は可能だ。
未来予知とは、未来に起こる事象を予知することである。
能力者のレベルによるが、数時間先から数年先を見通すことができるといわれていた。
軍事や経済に多大なる影響を与える能力である。
スターゲイトプロジェクトでは、遠隔透視が研究されていた。
遠隔透視は千里眼のようなもので、それにテレパシーによる通話も可能とするものだ。これには体外離脱─精神体投射も含まれているそうだが、この研究は頓挫したと聞いている。
それに対して、未来予知は現代社会で最も欲っされている能力だといえるだろう。
もし未来が見えるなら、それは世界を支配することに等しい。
宝くじやスポーツくじの当選内容といったものから敵対国の政策まで、未来に起こることを事前に知ることができるのだからあたりまえだといえた。
個人でちまちまと大富豪を目指すのも良いが、くじや株などでまぐれが何度も起きる奴は必ずマークされる。
その結果、こういった施設に収容されるか、どこかの国の政府に囲われるか、はたまたどこぞの権力者の玩具にされるのがオチだ。
要するに、未来予知など、ひとりの人間の身に余る強大かつ稀な能力でしかないのである。
それに比べて、俺の未来視などはケチな能力だといえよう。
未来視とは、これから起こる出来事を予測することである。
そう聞くとすごい能力に聞こえるだろうが俺の未来視は現在よりも数十秒、良くて数分先の自分の未来しかわからない。
しかも、あくまで予測であって、自分や敵の能力を含めた何らかの根拠によって推し測ることでしかない。
未来予知との大きな違いは、未来視は脳の処理能力に基づいたものだということだ。すなわち、最大の欠点は相手の存在を認識できなければ、能力は発揮されないというところだった。
だから、今の状況ならこうなるのである。
敵が発射した弾丸の軌道を銃口と相手の体の向きにより瞬時に推測、自らの体をその射線から反射的に回避させるのだ。
俺の肩のすぐ傍を銃弾が通過するのがわかった。
そして俺は、FN Five-seveNを相手に向けて引き金を絞るのである。




