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The Glimmer Man ─グリマーマン─  作者: 琥珀 大和
PSY1. I Am Number Eight.
6/80

Episode.6

ずいぶんとアナログ的なやり方だとは思いながらも、効果的であることは変わらない。この部屋に施された通信を遮断する電波や、スマートフォンなどのデバイス類が持ち込み禁止されている背景を考えると納得できた。


この部屋の入口では、X線による持ち込み物の記録もされているという。


カメラも含めたデバイス類の持ち込みを、後からでもわかるようにしているのだろう。さらに、デジタルデバイスに限らずフィルムカメラを持ち込んだ場合でも、X線の照射量を高めることにより使い物にならなくしているらしい。


大した徹底ぶりだ。まるで空港の保安検査場である。


しかし、それだけの対策が必要なほどの機密資料があるのだと思うと、必然だともいえる。理由がどうであれ、企業は機密の漏洩や紛失に関して、それ相応の責任と損害を受けるからだ。


部屋の最奥にある端末の前まで来た。


簡素な事務机に15インチほどのディスプレイがあり、その前にはキーボードやマウス、静脈認証装置などの周辺機器(サプライ)が整然と並べられている。


パソコン本体はディスプレイに内蔵なのか、見当たらない。通信に関しても、壁に空配管を通してLANケーブルで接続しているようだ。ウィルスやハッキングを考慮して、この手のセキュリティに脆弱なWi-Fiは使われていない。


ディスプレイがスタンバイ状態であることを確認し、静脈認証装置に右手の人差し指を入れた。


静脈認証についてはどの指でも登録が可能なのだろうが、静脈認証装置が右側にあることから右手を使用していると考えられる。また、一般的な指紋認証装置と同じように、人差し指と中指で登録することが多いため、それにならって解除を試みた。


こういった装置はビジネスの世界では常識的なものとなりつつあるが、セオリーを無視すると能力の行使に手間取ったりする。


指の大きさ、静脈の太さ、脈拍の強さなど、似非情報を送り込みながら一時保存された本物のデータを復元するような作業を行うのだ。繊細な手法(メソッド)であるため、余計な負担は少ない方がいい。


すぐにディスプレイが起動し、次に顔認証システムへと移行した。


やや面倒だなと思いつつ、ディスプレイの枠に触れる。直前に使用した社員の顔データについてのメモリーを検索。ディスプレイへの映り込みや、静脈認証と同じくRAM(メモリ)に一時的に記録された内容を後追いして復元していく。


この能力は特異なものである。


未来予知などのように、何かに劇的な影響を与えるのかと問われればそうでもない。しかし、俺の異能はセキュリティをパスし、重要なデータの模写をも可能にする。今のような諜報活動にはうってつけともいえるものだった。





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