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The Glimmer Man ─グリマーマン─  作者: 琥珀 大和
PSY.2 Escape From Stargate Project

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54/80

Episode.54

「⋯⋯⋯⋯」


そのまま部屋を出ようかと思ったが、警備員の様子を見て考えを改めた。


銃器とは異なり、ほとんどネット上の知識しかないが良い防具を着けている。


確証はないが、日本国内では珍しい新トカレフ耐応防弾板入り。しかも、強化ナイロンプラスチック連結構造の防刃仕様に見える。


因みに、トカレフとは初速がずば抜けて早く貫通力に秀でた軍用拳銃のことだ。そのトカレフから発射された弾丸が貫通しない規格ということである。


このまま能力を使わずに逃走するには、こういった装備を身につけておく方が安全だろう。


俺は素早くひとりの警備員から装備を奪い、それを身につけた。


ついでと言ってはなんだが、警備服やIDカードも奪うことにする。


警備員に扮している方が遠目には目立たないとの判断だ。警備員はそれほど多くない施設のため、近くで見られると顔ですぐにバレてしまうだろうがないよりはましだろう。


⋯いや、てかクセェ。


警備服って頻繁に洗わないのか?


袖をじっくり見たら、謎のシミとかが所々についているんだけど、まさか鼻水とかじゃないよな?


「⋯⋯⋯⋯」


いろいろと思うところはあるが、背に腹はかえられない。


近くにあった消臭スプレーを手に取って、大量に振りかけておく。


「冷たい⋯」


消臭スプレーをかけすぎて、ぐっしょりとなった警備服は着心地が最悪だった。ただ、臭いは消えたので良しとしよう。


着てすぐだが、他の準備をする間は脱いで乾かすことにした⋯たぶん、そんなにすぐには乾かないだろうが。ドライメッシュ仕様ならうれしいが、警備服などはポリエステルにウールが混じっている仕様が多いはずだ。帯電防止や耐光加工程度の機能性があるくらいのはずである。まあ、ダメもとだ。


『潔癖症なの?濡れたまま着ると風邪をひくわよ。』


「見知らぬオッサンの着た服を、好んで着たい奴なんかいないだろ?」


『⋯そうね。私なら断固拒否するわ。』


当然の回答だが、ファーストはなんとなく歯切れの悪い感じで言葉を吐いた。


「?」


ちょっとした違和感だが、俺にとってはよく当たるものだ。


何か悩みでもあるのか?


それとも、今の会話に何か引っかかる要素でも含まれていたのだろうか。


『次はどうするの?』


ファーストが俺の行動に疑念を持たないのは、何を企んでいるか気づいているからだろう。そうでなければ、もっと違う反応をするはずだ。


知り合ってから、それほど長い年月が過ぎた訳じゃない。


しかし、彼女とは同じような境遇もあり、不思議なくらい話が弾んだ。会話の大半はくだらないものが多かったが、友人関係としてはストレスフリーな関係だったと思っている。


ただ、実際に顔を合わせたこともなければ、年齢や本名も知らなかった。







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