Episode.43
目的の制御室前に来た。
ドアを開けるためにはまたもや虹彩認証と指紋認証が必要となる。
この誤認率の低いふたつの認証をクリアするためには、登録された人物がスキャナー前に立つが必要があるのだが、ことこれに関してはこれまで同様に問題なかった。大して負担のない能力だけで簡単にクリアできるのだ。
超感覚的知覚には、皮膚視覚という能力がある。
皮膚視覚とは、自らの皮膚で触れることで色や図形、文字を認識できる能力だ。
俺の場合、その能力で認識した情報を固形化することも可能だった。かなりレアな能力だが、情報を分析して誤認させることで、本物と同様にセキュリティをクリアすることが出来るのである。
因みに、この場合には元素を使用するのだが、元素とは自らの汗を活用したものだ。
汗の99%は水だが、それ以外に含まれるミネラルにはナトリウムやカリウム、カルシウムやマグネシウムなどが存在する。また、亜鉛や銅、鉄、クロム、ニッケル、鉛などの微量元素も存在し、それらを使って物質を組成するのだ。
任務で行う生体認証の解除は、直前に出入りした人物の情報を誤認させるだけの能力である。こちらはハッキングによって人の出入りを監視する必要があるが、今回のように巡回時間が決まっているケースなら誤魔化しがきく。それに合わせて解錠を行えば、別の能力を使用しているとは思われにくいためだった。
ラノベやアニメが好きな俺にとって、この能力は超能力というよりも錬金術みたいだなと思ったのは内緒の話である。
実際に同じ能力を使う者はひとりしか見たことがないため、完全なオリジナルかもしれない。因みに、俺が使うこの能力は実は借り物のようなものだ。
施設の研究員はそういったレア度の高い能力をオリジンと呼称している。もちろん、研究対象として注目されるため、この能力は誰にも明かしていない。俺の持つ本来のオリジンが知れるとどうなるかは火を見るより明らかだった。
能力が重点研究領域に指定された場合は24時間体制の監視が敷かれ、最悪の場合は死ぬまでチューブや生体情報モニターなどにつながれて実験動物のように扱われるのである。
それだけは絶対に避けたかった。




