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The Glimmer Man ─グリマーマン─  作者: 琥珀 大和
PSY.2 Escape From Stargate Project

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42/80

Episode.42

俺のプライバシーを侵害しようとした痴女能力者(ファースト)を放置した俺は、真っ直ぐに通路を進んでいた。


ファーストという呼称は、この施設に収容された順番を意味する。


俺のエイトという名も同様で、もともとはフィフティセカンドまでいたその数も徐々に減っていた。


特に懇意にしていたわけではないため、情がわくこともない。しかし、それでも同じ能力者が悲惨な末路をたどっていると思うと、他人事だと割り切れなかった。




次に目指している場所は施設の中央部にある。


そこに至るまでには防犯カメラや人感センサーのみならず、屈強な警備員も多数いるだろう。


しかし、そいつらをかわして行くだけの価値があった。


ここから抜け出すために多大な時間をかけて自らの能力を分析、そして必要に応じて解析し昇華させてきたのだ。


分析とは現状の性質や性能を知ること、解析はその要素や原因を知ることである。


ログの残るようなシステムは使えない。


すべて脳内で処理を行い、アナログ的な手段で結論を導き出した。


おそらく、これほど頭を使ったのは生まれてから初めてではないかと思う。脳が処理しきれずに何度か高熱を発してしまい、勘違いした施設職員に被検体として実験室送りにされそうになったくらいだ。奴らは能力者に異常があると、喜び勇んでデータ収集や実験を行おうとするので危険なのである。


そんな中で、監視の目を逃れて今日この日のために細心の注意と、管理者たちに取り入るような不本意な日々を送ってきた。


強いストレスを感じるだけでなく、自身のプライドや思考が破壊されるような目にあっても、友好的な笑みを返すことを心がけたのである。


ストレス値が高いと、思考力が鈍るのを何度となく実感させられた。コップの水と同じで、中身が多いと注いでもすぐに溢れてしまう。水ならこぼれるだけで済むが、それがストレスだと精神が崩壊する。現代社会では、過度なストレスを急激に受けて壊れる人間が多いと聞くが、この施設はその縮図ではないだろうか。


ガリガリと大事な何かが削られていく感覚は気持ちの良いものではない。


そして、他人の血で手を汚すような後戻りできない経験もしてきた。


事前情報で今日は施設の職員、管理者がいつもの半分以下しかいないことを知る。この数年間で今日のような日はほとんどなかったといっていい。


この忌まわしい施設から抜け出せる最初で最後のチャンスかもしれないのである。







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