Episode.40
この施設には気になる能力者がいた。
限られたエリアでいつも念話によってコミュニケーションを交わす能力者だ。
面識はないのだが、ある時期からこの辺りを通ると必ずと言っていいほど内面を見透かすような視線のようなものを感じた。
もちろん、そいつがそこらを歩いているわけではない。
この付近のどこかの部屋に軟禁、いや監禁されているのかもしれない。
念視の対象になると誰かに見られているような感覚に陥ることがあるが、さらに高い能力を持つ者には内面まで見透かされてしまうことがある。
こういったものは、よく霊的な何かのせいだという人がいるが、全部が全部そうではない。
超能力だろうが霊的な何かだろうが、科学で立証されていないことに違いはなかった。ただ、その多くは気のせいであったりするのであまり気にしても仕方がないのだが、ことこの施設内に関しては現実だったりする。
因みに、軟禁や監禁されているのは相当に優秀な能力者であり、存在そのものが危険なためというのが表向きの理由ある。俺のように偽装やへつらいなどを駆使してそれを逃れている者は稀だということだ。
まず、ここに連れて来られた者はふたつに分類される。
レアな能力を保有している者、反抗的な者は拘束されて研究のために強制収容させられる。もちろん、従わなければ家族に危害を加えるなどと脅されるか、薬物を投与されるようだ。
上記に分類されない者は比較的自由を許される。
自由といっても施設内の限定された場所に限られるのだが、ずっと部屋から出られず、たまの外出が実験や解析への参加である前者よりはかなりマシだろう。
ただし、その立場になるためには条件があった。
能力の詳細が明確で、この施設の運営者にとって有益な者である。当然のことながら協力的な者に限られるのだが、ここに高いハードルがあった。
有益な能力というのは、諜報や破壊工作などで安定した結果が出せることを意味する。
すなわち、特定の国家に対しては反社会的勢力であり、存在そのものが害悪と見なされるのだ。
少なからず、俺はそういったことに協力していた。
機密情報や特定人物の行動パターンを入手したり、相手がこちら側にとって邪魔者であれば事故に見せかけて命を奪うこともある。そこに良心の呵責がないわけではないが、自分が生き延びるためには選択肢がなかった。
逆にいえば、軟禁や監禁されている者は、俺なんかよりずっと善人なのである。
軟禁はともかく、監禁された場合は24時間体制で監視され、一定レベル以上の能力を使用した場合はペナルティとして20~30mA程度の電流を流されるらしい。何かの文献で読んだことがあるが、人は電流が50mAを超えると数秒で死ぬ可能性が高いそうだ。
しかし、俺と交流を持つその能力者は、部屋から出してもらうことができないにも関わらず、その監視網をかいくぐってある程度の能力を行使できるほどヤベー奴だったりする。
こいつなら隠蔽している俺の能力も見破っているかもしれない。
なにせヤベー奴だから。
『ヤベー奴、ヤベー奴ってうるさいわね。あなたの方こそ、真のヤベー奴じゃないの?』
これまで無言だったのに⋯今日も例外なくヤベー奴が絡んできやがった。
というか、人の心の内を読むなよな。




