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The Glimmer Man ─グリマーマン─  作者: 琥珀 大和
PSY.2 Escape From Stargate Project

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38/80

Episode.38

ムーンシャドウはそのうちのESPを専門にするチームで念話や透視、念聴や未来視など軍事的な諜報活動に関わる分野だったのだ。


月影英二郎は「月や影は日本の忍者を連想する語呂だとは思わないかね?忍者といえば防諜や破壊工作の象徴だよ。これほど適切な名称はないと思うがね。かはははは。」と、ドヤ顔で笑っていやがった。


「そうっすね。」と答えながらも、内心では『厨二病かコイツ』などと呆れたものだ。厨二病の医学者など恐すぎるだろう。


因みに、そんなフランクな会話を交わしつつも、俺は月影英二郎の部下やシンパではない。


むしろ、奴は憎むべき対象だった。


ムーンシャドウチームとして収容されている者の多くは、脳外科手術を奴から直接受けた10~20代の元患者(クランケ)という情報を得ている。


そう、奴は治療のための手術時に、脳機能を拡張させるような何らかの施術を行ったらしい。


この情報は長い時間をかけて本人や施設の人間から収集したもので、点と点を結ぶような考察により疑念から確信へと変わっている。


さらに、施設内に導入されている絶縁体の攻略方法についても別の情報源(ソース)から目星がついていた。


施設職員の会話を断片的につなげて、不足している部分は仮定として推測したのだ。ここで使用されている絶縁体とは、電気を通さない陶磁器のガイシやゴムなどではない。鋼材に電磁を通して遮断する技術を応用しているのである。


超能力で用いられる念動力の多くは、ある周波数帯の電波のような特性を持つ。


簡単にいえば、自宅のWi-Fiが電子レンジの使用によって切れやすくなると考えればいい。今なお多く使われているWi-Fiの周波数は2.4Ghzで、電子レンジの電磁波も同じ2.4Ghzの周波数帯である。だから電子レンジを使うとWi-Fiのノイズとなり、通信障害を起こしてしまうのだ。


これはこの研究施設にある各構造体や建材の資料からも読み取ることができた。重要な資料や記録は、すべて施設内に設置されたファイルサーバから念写を利用して閲覧したものだ。施設職員の記憶を基に情報元を探るのには苦労した。


ただ、理屈がわかれば対処は可能だ。


Wi-Fiの場合は機器が対応していれば5GHzに変更すればいい。互いに別の周波数を使用して干渉しないようにすれば解決するのである。


え?


念動力の周波数も簡単に変えられるのかって?


こちらは少しコツがいる。


前述の処世術がそれにあたるのだ。


超能力を専門にした学問を超心理学というそうだが、それで何と呼ばれているかはわからない。もしかすると、そんな手法は発見されていない可能性すらあった。


能力者で適性のある者が偶然発見し、自身で何度となく検証して確証を得たという事例は多い。それと同じく希少な技術かもしれなかった。


当然のことだが、公表する気などさらさらない。因みに、この事象は個人的にわかりやすいよう閉鎖区域(ロックダウン)と名づけている。







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