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The Glimmer Man ─グリマーマン─  作者: 琥珀 大和
PSY.2 Escape From Stargate Project

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Episode.36

2年前、ようやく就職先が決まった。


高校3年生の時に天涯孤独の身となり、両親が唯一残してくれたマンションも少し前に手放している。


父は中小企業の会社員で、母は扶養控除の範囲内で働くパートタイマーだった。


それほど裕福な家庭ではない。


毎月の住宅ローンの支払いにプラスして、マンションの管理費や修繕積立費などの出費に追われて余裕のない家計だったようだ。


両親は交通事故で亡くなったが、保険会社から支払われた額は些細なものだった。年末に母の実家への帰省手段を車にしたことが悪い結果を生んだ。雪道でスリップした我が家の車は、崖から転落して両親二人の命を奪ってしまったのだ。


幸か不幸か、その時点で既に大学進学が決まっていた俺は、地元の教習所ではなく合宿免許で自動車免許の取得を目指していた。そこで追加教習を受けることになり、遅れて母の実家を訪れることになっていたのである。


結果、俺自身は事故にはあわなかった。しかし、父に掛けられていた生命保険の死亡保障は数百万円程度でしかなく、それも自動車ローンの残債と葬儀代で消えてしまう。


事故で全損した車のローンと葬儀代で消える生命保険なんて酷すぎるだろう?せめて、車の保険で自損事故でも自動車ローンを賄える補償内容にしておいて欲しかった。


まあ、そう思ったところで今更どうにもならない。


むしろ、これまで育ててもらった恩と、借金を背負うことがなかったことに感謝すべきだろう。


それに、住宅ローンには保険料銀行負担の団体信用生命保険なるものが掛かっていて、債務者である父の死亡で残債金額のすべてを賄ってくれたのである。これがなければ、住宅ローンの支払いまでひとりでどうにかする必要があったのだ。


遺族にとっては両親を亡くした悲しみと引き換えとなるが、大変素晴らしい救済措置だといえる。


因みに、マンションがあるから住居費はいらないなどと楽観的にはなれなかった。


管理費と修繕積立費、それに固定資産税を考えると、ワンルームの賃貸で暮らした方が安かったりするのだ。


だからマンションを売却して、目先の生活費と学費に充当した。


ただし、郊外型の築20年ほどが経過した中古マンションだったため、辛うじて大学の学費と卒業までの生活費程度にしかならない。


週に4日のアルバイトと中学から始めた習い事を続けることで、ほとんど暇もなく学生らしい生活とは縁遠いものだったようにも思う。


ただ、俺自身が少し特殊な人間だったため、自衛手段は必要だった。だからこそ対策のための習い事をサボる気にもならなかったし、遊び呆けるような勇気もなかったのである。


とりあえず就職が決まったからといって、一安心できない事情があったのだ。


気を抜けば望まぬ環境に身を置くことになるかもしれない。


奴らは絶えず監視の目を張り巡らせているだろう。


世界で起こる不可思議な事件。


そこには俺のような人間が絡んでいることが少なくはない気がしていた。


超能力者(ホルダー)


一般人の多くは、仮想世界や創作の中の一つのテーマだと笑うかも知れない。


また別の視点を持つ者は、異能や全能感を持つことができて羨ましいと思うかも知れなかった。


しかし、当事者たちにとっては、なかった方が良かった能力なのである。


特異な能力を持つ者は、やはり特異な機関に狙われやすい。


そこには、日常を逸脱した地獄のような生活しかない可能性すらあった。


それが世の現実というものだと気づかないほど、俺は稚拙ではないつもりだ。


そう、この頃の俺はそう安易に考えていた。






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