表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The Glimmer Man ─グリマーマン─  作者: 琥珀 大和
PSY1. I Am Number Eight.

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/80

Episode.33

"A"が意識を取り戻すと、まず不快感が押し寄せてくるのを感じた。


冷たく固い地面に横たわっていることを認識する。


ぼやけた視界を鮮明にするために、一度目を閉じてから再びゆっくりとまぶたを開けた。


薄暗い空間。


灰色の天井がくすんだ感じで視界に入ってくる。


鼻先にむず痒さをおぼえ、そちらに息を吹きつけた。


かなり埃っぽい場所である。


「気がついた?」


傍らにいる"S"が顔を覗き込んでそう言った。


"S"というのは彼女のコードネームだ。Shockwaveの頭文字である。決して性格や性癖を現しているものではない。因みに、"A"は僕のコードネームでAegisの頭文字だ。


「俺たちの中でも最強の"絶対領域"があっさりやられるとはね。」


「⋯僕の二つ名は"絶対障壁(イージス)"だよ。」


真面目な口調でボケたことを言うのは、コードネーム"B "だ。


こちらはBlitzの頭文字である。彼の軽口は毎度のことだが、言葉選びには注意させなければならない。最近、秋葉原のメイド喫茶にハマっているとかで、変な日本語を覚えてきた。


「そもそも、絶対領域とは、ミニスカとニーハイの間⋯痛っ!」


絶対領域のことを熱く語ろうとしたら、"S"に拳で殴られた。何を隠そう、"A"もメイド喫茶は大好物なのである。


「くだらないことばかり言ってないで、何が起こったか説明してくれるかな?」


顔は笑っているが、目はそうでもなかった。


"A"が横に目をやると、"B"はちゃっかり距離を取っている。あまり逆らうのは得策ではないと判断して、仕事の話に戻った。


「戦闘に使える能力は皆無だと思って油断したよ。」


「戦闘技術はかなりのものだと思ったけれど、諜報向きの能力を持ったどこかの元兵士というわけじゃなかったの?」


「それは俺も思った。奴は逃走する際に何の能力も使わなかったぞ。しかも、ダストシュートに飛び込むなんて危険まで冒している。能力があるなら、それをまず使わないか?」


"S"と"B"が言っているのはもっともなことだ。


出し惜しみして、命の危険をさらすのは普通では考えられない。


「同時に異なるふたつの能力を使われた。わずかな念動力しか感じられなかったからはっきりとはわからないが、おそらくサイコキネシス系とエレクトリシティ系だ。」


「俺と同じか?」


「"B"ほど派手なものじゃない。弾丸がかすったわずかな時間だけ、能力をまとわせてきた。意識を奪われたのはそれが原因だ。」


"B"も電気(エレクトリシティ)系統の能力者だが、彼の場合は雷のように電撃を放つことができる。


あの男が使ったものは、もっと地味で効果的なものだ。派手さはないが、恐ろしく実戦的だといえる。


「サイコキネシス系はどんなのだった?」


「銃弾の軌道を変えてきた。弾道から推測すると、かなり変化させたように思う。」


「なるほどな。二属性(デュアル)どころかマルチプルか。おまえが簡単にやられるわけだ。」


「ただ、気になることがある。」


「気になることって?」


「彼はなぜ、あの時しか能力を使わなかったのか。君たちと相対した時も、能力を使えばもっと簡単に切り抜けられたんじゃないかな。」


"B"と"S"は顔を見合わせた。


「僕は、彼が味方にも能力を隠しているんじゃないかと感じている。」


「それって⋯」


「敵に回すと厄介だけれど、取り込める可能性はあるんじゃないかな。」


そう言って、"A"はニヤリと笑った。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ