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The Glimmer Man ─グリマーマン─  作者: 琥珀 大和
PSY1. I Am Number Eight.

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19/80

Episode.19

ジェットコースターのように理不尽な圧を受けて気持ちが悪かった。


一瞬後に、壁へと激突する。


車体の後部から突っ込んだからか、反動でタイヤから地面に落ちて車体はもとの通りの体勢となった。


シートベルトをつける暇はなかったが、衝撃に備えて限界まで引っ張り出し、腕に巻きつけた自分を褒めてあげたい。


おかげで片腕は痺れてしばらくは使い物にならないだろう。背もたれが倒れた状態だったため、シートベルトがなければ激突時の衝撃で体が外に飛んでいくところだった。


因みに、乗り込んだ車は左ハンドルの外車だったため、利き腕である右腕は無事だ。


シートベルトを外し、助手席に投げたスミス&ウェッソン M&Pシールドを探す。


それなりの大惨事だったのだが、よくも暴発しなかったものだ。さすがに安全装置を操作する余裕がなかった。いや、意識から飛んでいただけなのだが。


俺は戦闘職専門ではないのだから仕方がない。しかし、今後のことを考えると、暴発への対策は疎かにしないようにしなければならない。あえなく自死する可能性があった。


フロアに転がっているスミス&ウェッソン M&Pシールドを見つけ、静かに回収する。


あまり音を立てずに気配を消し、周囲の状況をうかがった。


このまま車内にいるのは格好の標的となる。だが、その反面、車体が盾となってくれるため、不用意に脱出することが最善とは限らなかった。


けたたましく警報音が鳴り響く。


炎上や煙が出ている様子はない。誰かがこの状況を見て報知器を押したのかもしれない。


一般用のエレベーター搭乗口の横にある扉が開いた。


そこから数人の警備員が慌てた様子で出てくる。


いた。


警備員へと意識を向け、襲撃波を放とうとする能力者の居場所を把握する。気配の隠蔽。それが想定外に早く動いた警備のせいで僅かに解けたのだ。


車は横転という非常事態を検知して、エンジンが停止状態にあった。車のインストメントパネルに手を置き、再びプッシュスタートする。


既に外装がボコボコでガラスも割れている車両だが、さすがにドイツが誇る高級車とでも言うべきか。エンジンはすぐに力強い咆哮をあげた。


アクセルを床まで踏み抜き、ステアリングを素早く操作して目的の場所へと車を向ける。


後輪がホイールスピンして横に滑りそうになるが、アクセルワークで調整して摩擦力を取り戻す。TRCやESCなどのシステムが反応するとホイールスピンは抑制されるが、立ち直りが遅れるためマニュアル制御にしたのだ。





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