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The Glimmer Man ─グリマーマン─  作者: 琥珀 大和
PSY1. I Am Number Eight.
1/80

Episode.1

新作です。

第一章完結まで一気にリリースします。

(1話あたりが1000文字前後と短いですが、作者の執筆や管理がしやすいため、このパターンで投稿致します。ご理解いただければ幸いです。)

また、第二章もほぼ完成しているため、間を置かずに投稿していく予定です。

清掃員に扮して、都心にある高層ビルへと入った。


テレビドラマやアニメなんかでよくある帽子に作業服の目立たない格好だ。


違う。


俺が就職したのは清掃会社じゃない。


もちろん、清掃会社の職務はなくてはならない社会貢献度の高い仕事だ。それに、それなりにキツイ仕事だろうとも思う。


モブ中のモブだとディスる奴もいるかもしれない。しかし、皆がキレイなオフィスで働けるのは、清掃員のおっちゃんやおばちゃんたちのおかげだと感謝しなければならない。


何?


うちの会社の清掃員は比較的若いって?


そうだな。


今の俺が扮しているのと同じ状態だということだ。


ほら、若くて背が高く、イケメンの清掃員。俺を見たここの社員たちの表情を見るといい。


若い女性は残念なものを見る表情をし、野郎たちはせせら笑いながら蔑みの目をしている。


なぜだかわかるか?


成人の若い男性が清掃員なんかをしていることに対して、こいつらは蔑んでいるのだ。


自分たちはこの男よりも上位だと、カーストの位置関係を鑑みて薄ら笑いや落胆の表情を浮かべている。


女性は「顔は良いのに将来性がないのでパス」と考え、男性は「ルックスに反して中身はプアな野郎だ」と自尊心を満たすのだ。


これが定年後の再就職した姿や、おばちゃんのパートタイマーなら違った反応をする。


若い場合は学歴か能力に欠陥があるのか、就職ガチャで負けた不幸者のどちらかだと思われるようだ。


女性も社会人ともなれば、その多くは男性を顔の造りだけで判断しなくなる。内面を見るわけではない。通りすがりの男性の性格や人間性などわかるはずもなく、職業や身なりで甲斐性の有無を測る。


くだらない社会だと思った。


職業や収入の格差に、思うところがある者は少なくないだろう。


しかし、それを表に出して軽蔑するかの目線をくれるのは、民度の低さを如実に現している。


そんなものは心のうちで済ますのが人としての配慮だと思うのだが、いかがなものか。


ここが中学校や高校の施設なら、少なくとも女生徒は俺を見て興味を持つのかもしれない。とはいえ、最近の十代は精神的に早熟である。何割かのすれた奴らは、やはり同じような目で俺を見るのかもしれなかった。


「エイト、聞こえるか?」


帽子の内側についたインカムが、骨伝導で通信を伝えてくる。


俺はくだらない思考を断ち切り、左手の甲を顔に近づけて口もとを隠しながら答えた。スマートウォッチに内蔵された送受信器である。


口もとを隠したのは不審者に見られないためだが、この平和ボケした国なら、単なる厨二病(イタイヤツ)に思われるだけかもしれない。


「聞こえる。」


「つい先ほど、例の部屋に人の出入りがあった。すぐにそちらへ向かえ。」


「了解。」


「あと、任務には関係ないが⋯昼食に食べたカレーうどんがシャツ全体に飛び散っているぞ。もっと早く言うべきだったが、少し目立っているようだから伝えておく。」


「⋯⋯⋯⋯」


頼むから、もっと早く言え。


「就活に失敗した超絶イケメン」として、注目されていると考えた自分が恥ずかし過ぎるだろう。


あと、カレーうどん。


あれはめちゃくちゃ美味かった。





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