法廷議事録:零下の墓標
事件名:療養室で起きた偽装殺人
・分類:脱022
裁判日時:十と五の日 十二の時
・被害者:スソノ=イパレア 栗鼠族
出身:マルア国 アズムール村 注:虚偽の可能性あり
所属:戦闘門陸圏管 第二小隊 小隊長
死因:刺殺 注:後述の通り偽装殺人である
・被告人:シラノ=ナウア ヒト族
出身:アスタバ国 港町コルノネイク
所属:衛生門医圏管 五等医圏師管
容疑:被害者を金属杖で刺殺
事件概要:正透門の調査記録による
・十と四の日 十七の時
正透門へ通報が入り事件が判明
・療養棟、療養室内において、デリラ=ノザ、ストウ=ザナトリクス、マエノミ=サラエ、シマバキ=ガトレ、以上四名により、床に倒れていたシラノ=ナウアと、腹部に金属杖が突き立てられたスソノ=イパレアが発見される。
・事件現場が密室であることから、シラノ=ナウアが容疑者として確保された。
裁判員
・裁判長:正透門頭 アミヤ=パルト
裁判官:戦闘門頭 コゲツ=アンダル
衛生門頭 サジ=レイカン
会計門頭 コクコ=リン
究謀門副門頭 デリラ=ノザ
交報門頭 エインダッハ
議事録:跡書管 セキバ=シサワ
・代弁士:シマバキ=ガトレ
・法務官:ミルモウ=クルモア
・証人
ストウ=ザナトリクス 衛生門 医圏管 医圏管師
マエノミ=サラエ 衛生門 医圏管 医圏管師
ロローラ=アムアム 戦闘門 陸圏管 小隊兵 注:休暇中
議事録
・被告人および代弁士は容疑を否認。
・代弁士により、被害者は冬眠に陥っていたに過ぎず、死亡してはいなかったという主張が行われ、被害者を法廷に召喚。後、生存が確認され、代弁士から今回の事件は脱走を目的にして引き起こされたものであると主張される。
・以下は代弁士が述べた、スソノ=イパレアが計画したとする脱走の計画である。
この計画は、イパレア氏が片脚を欠損した時点から始まった。
イパレア氏は自身の右脚を木箱に入れ冷凍で保存。同居していたアムアム氏には仲間を酒と偽った。
事件発生前、イパレア氏はアムアム氏への態度を変化させ、一方で看護役であったサラエ氏とは親密な関係になり、サラエ氏と婚姻魔術により子を生した。
事件当日、ノザ氏が開発した金属杖が療養室に持ち込まれ、イパレア氏は人払いをした後、ナウア氏と会談。
その際、イパレア氏は何者かに襲撃された様に思わせ、流れ弾を装いナウア氏の頭部に魔弾を放つ。意識を失ったナウア氏を移動させると、床に魔術陣を書き込み、サラエ氏との婚姻魔術で生まれた子供に陣を発動させた。
その間に、イパレア氏は療養室の窓越しにアムアム氏から木箱を受け取る。中にはイパレア氏の足が入っており、凍結した脚が溶けた事で流れ出した血液を自身の腹部に垂らすと、子供と木箱と脚を全て、火系統の魔術で焼き尽くした。(子供は金属杖で先に殺害された可能性あり)
残った炭はイパレア氏が食する事で隠滅した。(流体固形食に近い加工を施した可能性があり、糧圏管所属者との関係性も疑われている)
室温が低下し、杖と腹部の毛に付着した血液が凍りつくまで杖を握り、冬眠により意識を失う前に、あるいは意識を失った際に自然と手が離れた事で、事件当日の状況が完成したと見られる。
・死体を装い安置室に運ばれた後、イパレア氏は遺族の元に送られる形で帰還する事を狙っていた。
・死体として扱われるには医圏管師の誤診が必要であったが、イパレア氏はストウ=ザナトリクス医圏管師を協力者にする事で、誤診を確実なものとした。
・ザナトリクス氏が協力者となった背景には、終人010が発端となるナウア氏に対する恨みがあった。
・しかしながら、代弁士により終人010もまた、医療事故ではなく脱走の計画であったと主張がなされ、被害者とされたハロル=テサラナの生存が示唆される。
・ザナトリクス氏は終人010の追加調査と引き換えに、イパレア氏の計画に協力した事を証言し、代弁士の主張は立証された。
注:なお終人010の再調査は、脱021として新規に立件されている。
関与権限
・部外者による本資料の閲覧には階四次以上の閲覧権限、あるいは階四次以上の閲覧権限を持つ者からの許可が降りた申請を必要とする。
注:本法廷議事録において一部記述を検閲の上で削除済。削除部分の閲覧には門頭過半数以上の承認を必要とする。
ちょっと迷ったのですが、これにて第二章は終わりです。迷った理由については、第三章冒頭の展開を読むとわかるかもしれません。(まだ頭の中にしかないですが)
それと、今回の法廷議事録から検閲されたのは賄賂の記述です。作中で一度も登場していませんが、ガトレがいる裁判ではお馴染みの跡書管、セキバ=シサワにとっては、終人010の法廷議事録に許せないところも多かったらしく、珍しく私見まで書いてしまった様です。きっと真面目な人物なんでしょう。
読者の方々がいるお陰で、好きな様にする事にした3章も、是非ともよろしくお願いいたします。




