共闘の誓い
ナウアの告白。そこに愛情といった感情が含まれているのかは定かではない。
性別が存在しないヒト族において、愛という言葉は概念としては存在するものの、それが愛なのだ、恋なのだと解釈する器を持つ者は、非常に少ないからだ。
だからこそ、ガトレはナウアの言葉を額面通りに受け取った。
「俺がこの世で最も信頼しているのはアラクモだが、アラクモと子を生したいと思ったことはないな」
「……それは、遠回しな拒否なのでしょうか」
「いや、そういう訳ではないのだが、ただ、信頼しているという事実が、誰にとっても子を生したいと思う理由にはならないのだろうなと思っただけだ」
「当然ですよ。理由は一つではありません。私だって、信頼だけでガトレ様を選んだわけではありません。というよりは、信頼という言葉が様々な意味を内包しているのです」
そう言って、ナウアが唇を尖らせる。最早そこに、出会った頃の薄い表情を重ねることは難しいとガトレは感じた。
「ガトレ様、答えをお聞かせください。私と婚姻魔術を行うのは嫌ですか?」
そのくせに、ガトレ様と、そう呼ぶあたりは、助手という変わらない立場を示しているような気もする。あるいは、ナウアが口にした「信頼」の様に、内包する意味だけは増やしているのだろうか。そんな風に思いを馳せるも、ガトレは己が抱く答えは決まっているのだと思いなおす。
「今は、答えを返すことができない」
「それは何故ですか?」
「俺が、ナウアとの婚姻魔術を望んでいないからだ」
ナウアの目が見開かれ、そして、伏せられる。
「……そう、ですか。それは、答えと同義なのでは?」
「勘違いしないでほしい。……知っての通り、今の俺は英雄殺しの疑いを掛けられている。その様な状態で生まれる子に、幸福が約束されるとは思わない」
「確かに、仰る通りです」
「そして、両親の意思が揃っていなければ、意味がないとも思うんだ。イパレアとサラエの様に、思惑が紛れてはいけない。ナウアの両親の様に、同じ目的を持っていてもいけない。俺が、ナウアの意思に揃えることができて、初めて条件が整うのだと、そう思うんだ」
ナウアは幾許の時間、固まった様子であったが、その後に頷いた。
「ありがとう」
ガトレは自分なりの誠意が伝わったことに、そしてそれをナウアが受け入れてくれたことに感謝を述べ、それから続ける。
「それでは、シラノ=ナウア医圏管師よ。約束を交わそう。私は、英雄殺しの疑惑払拭を目指し、残り少ない期間に全力を尽くす。そして、それが成し遂げられた暁には、君の問いに、答えを返そう。だからどうか、あと少しだけ、私に付き合ってくれるか」
仰々しい口ぶりで話すガトレから、右手が差し出される。
ナウアは左手の人差し指で目尻を拭うと、姿勢を正した。
「シマバキ=ガトレ小隊兵。もちろん、協力致します」
ガトレの右手が、ナウアの右手に固く握られる。
「約束など無くたって、全力で」
薄まった魔力越しに感じる温もりは、掛けられた言葉と同じくらい、ガトレには暖かかった。




