表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流れ魔弾と救国の英雄  作者: 天木蘭
2章:医圏管師は希う

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/122

異種族恋愛

「妻、というのは一体?」


ガトレの疑問に、イパレアは目を丸くしてから微笑んだ。


「ああ、ヒト族では左親と右親と言うんだったね。一部のアビト族では、雄を旦那や夫、雌を妻や嫁と呼ぶんだよ」

「初めて知りました。……あの、つまりは、婚姻魔術を使う相手という事ですか?」

「まあ、そうなるかな。というか、婚姻魔術は使ってないけど、子供はもう、出来ているというか」


イパレアは困った様な表情を浮かべ、尻尾を左右に振った。


「メェ。実は私、戦闘門所属の軍人です。今は休暇を取ってますが」

「え? という事は、もしかしてここで会ったんでっすか!?」


イパレアの後を引き継いだアムアムの言葉を聞いて、サラエは両手を頬に当てながら飛び跳ねた。


「メェ。イパレア小隊長の部隊に所属でした。子供が出来たから休暇中です」

「ちょちょっ、ちょっとその辺り詳しく聞きたいでっす!」


興奮するサラエを前に、ガトレとナウアは顔を見合わせる。二人には、サラエが高揚する理由がわからなかった。


「サラエ。すまないが、俺たちはイパレア殿と大事な話をしたい。後にしてくれないか?」


救国の英雄を恨んでいる人間は多くいると聞いたが、聞きたい話は多くある。英雄がどういう人間だったのかも、ガトレは知りたかった。


「いやいや! こっちだって大事でっす! 子供を産んだ後の人が、大変だろうにわざわざこんなところまで来てくれたんでっすよ!」

「大変……なのか? そんなに離れたところにアムアム殿は住んでいるということか」

「違いまっすよ! これだから愛のないヒト族は!」


ガトレにはサラエの言い分が全く持って理解できなかったが、それはナウアも同じ様だった。


「あのね、サラエ。サラエって今、業務中じゃないの? そんなことしてる場合?」

「業務中でっす。でも、今のアタシの仕事は療養室の患者対処でっすから。ここにいても何の問題もないでっす!」

「そ、そう……」


筋は通ってはいないが、それが逆に気力を削いだらしく、ナウアはゲンナリとした表情で肩を落とした。


「おい、騒がしいぞ。ここは患者のいる場所だ」


どの様にしてサラエを出し抜くか考えていたガトレは、入口からした声の方に振り向く。立っていたのは、青い短髪の医圏管師だ。


「貴方は確か、ストウ=ザナトリクス四等医圏管師」

「名乗った覚えは無いぞ、英雄殺し。まあ、そこの無能に陰口でも告げられたのかもしれないがね」

「……ガトレ様。私も、ストウ医圏管師の名を教えた覚えはありませんが」


ガトレがストウの名前を知っているのは、法廷議事録で目にしたからだ。しかし、それを知られる訳にはいかない。


「たまたま耳にしたんだ。それより、どうして貴方がここに?」

「サラエの上官だからだよ。安定しているとはいえ、療養患者に五等だけを付けるなんて事はしないさ。まあ、私は花を咲かせることなく、勉学に勤しんでいるがね」


ストウの発言は、明らかにサラエに向けた嫌味であったが、サラエからの返答は無かった。

代わりに、目だけが笑っていない笑顔でイパレアが言葉を返す。


「青髪の医圏管師くん。騒がしくしてすまなかったが、君がいると私は気分が悪くなる様だ。もしかすると、悪い空気が呼び込まれているのかもしれないな」


ストウは自身の髪をくしゃくしゃとしてから、体の向きを入り口側に変えた。


「……そうかい。私は窓を開けて換気すべきだと進言するよ。せいぜい、途中で転ばない様に気をつけるんだね」


悪態をついてストウは部屋を出て行く。ガトレには、ナウアが嘆息する声が聞こえた。


「それと、英雄殺しにも、悪いが席を外して貰えるかな。サラエが言った様に、折角ここまで足を運んで貰ったのだから、話をしたいんだ」

「いろいろ聞かせてもらいまっす!」

「わかりました。また後ほど来ます」


当人の意向という事であれば、ガトレも逆らって心象を悪くする訳にはいかないと考えた。


「ガトレ様。でしたら、安置室に行きませんか?」

「安置室? というと、死体が置かれる場所か」


連合軍において発生した死者は一度、安置室へと運ばれる。その後は遺族の意向によって、交報門の手で返されたり、衛生門の手で処理されたりすると、ガトレは聞いた事があった。


その様な場所に向かう意味。ガトレにも薄々察しがついていた理由を、ナウアは口にする。


「はい。英雄の死体を、見に行きましょう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ