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流れ魔弾と救国の英雄  作者: 天木蘭
序章:英雄被弾
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開廷:英雄被弾

「それではこれより、被告人、シマバキ=ガトレの処遇に関する軍法会議を行う」


ガトレは顔を上げ、厳かな装飾の椅子に座す、周囲の錚々たる面子を見渡した。


連合軍統括部。軍内各門の門頭と各国から派遣された有力者によって組織されている、軍の司令部だ。


中には各国の王族、将軍、高名な研究者など、普通に過ごしていれば顔を合わせる事のないような者達もいる。


迂闊に溜息の一つでも吐こうものなら、すぐさま権力に押し潰されてしまいそうな空間で、そこにいる全ての者が、ただ一人立たされている一兵卒に視線を向けていた。


「此度の進行は正透門の門頭である私、アミヤ=パルトが務める事となる。書記は交報門、跡書管所属のセキバ=シサワが務める事」


ガトレの面前、格の差を示す様に頭より高い位置に座っているのは、鷲の顔をした鳥人族であった。


その声は低く通りやすい上に、嘴の近くまで伸びた装置の様なもので声量を増幅している様であった。


「被告人、シマバキ=ガトレ。貴公の罪は防衛作戦の最中、『救国の英雄』であるソーラ=ケメロニカを、自身の魔弾で撃ち抜き殺害した事」

「アミヤ=パルト正透門頭、恐れ多くも異議を唱えます」

「被告人は許可された瞬間、及び許可された内容を除き発言を控える事」

「……失礼致しました。アミヤ=パルト正透門頭」


アミヤの鋭い目つきにガトレは気圧される。

正透門は戦闘門とは異なり、戦場に立つ事はないというのに、ガトレにはアミヤが歴戦の戦士と遜色ない様に思われた。


その雰囲気を醸している要素の一つが、生まれつきの鷲顔にあるとは夢にも思わない。


「言葉の無駄な事。以降、アミヤ卿と呼ぶ事を許可する」


ガトレは発言せず、敬礼のみを返した。

アミヤの目が薄らと細められ、言葉が続く。


「ソーラ=ケメロニカは偉大なる英雄であった。未だ熾烈な妖魔との戦争において、かの英雄を失った損失は大きい」


実際に『救国の英雄』が戦う姿を見たガトレにとっても、アミヤの言葉は否定しようがない事実であった。


「故に、シマバキ=ガトレ小隊兵には、死罪が妥当であるとする事。これが此度の法廷における議題である」


しかし、英雄を殺すつもりはなかった。

だからこそ、否定せねばならない。


「被告人。異議があるなら申し立てる事」

「申し上げます」


ガトレは強い決意を抱く。

必ず、死刑を免れるのだと。


この瞬間、この法廷に、ガトレの味方は己ただ一人であった。

雰囲気で作っています。

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