#6 何見てるんですか先輩は
ワラムクルゥ 02
「それで、これからどうするんですか」
「うーん。どうしよう」
珍しく、スグロ先輩は歯切れが悪い。
「どうしたんですか、先輩。最近ヘンですよ」
リンコちゃんも私と同じことを感じていたみたいだ。
スグロ先輩は、無言でコーヒーを飲んでいる。スグロ先輩と『シカゴ』に来たのは初めてだった。
「前もいったけど、今回は自信がない。きっかけぐらいは作ることができるかもしれない。ただし、そこから先はどう考えても見込み薄だ」
「依頼主はどんな子なんですか」
私は試しに聞いてみた。
「普通の子だよ。一年生。卓球部所属。好きなタレントは中森明菜。趣味は切手収集」
確かに普通だ。
「難しいのは、相手が私たちより年上だからですか」
「年上? ああ、そうか。いや、そうじゃない。それもあるけど。彼女、たぶん男がいる」
先輩の生々しい表現に、私はぎくりとなった。
リンコちゃんが身を乗り出した。
「先輩、あの人と久しぶりに会ったんですよね。どうしてわかったんですか」
「カウンターの裏に彼女のカバンが置いてあった。口が開いてたから、たまたま中身が目に入ったんだ。あれはお泊りセットだな」
私が反応に困っていると、すかさずリンコちゃんが突っ込んだ。
「もう、何見てるんですか、先輩」
「だから、たまたま目に入ったんだよ。まあ、別に男がいてもおかしくはないよね」
ふんふん、とリンコちゃんが頷いている。
「ちゃんと調べてから引き受けるべきだった。うかつだった」
「断っちゃいます?」
「いや。やれるだけやってみよう。それより、昨日お願いしたこと、くれぐれもよろしく頼む」
リンコちゃんが口を開いた。
「二月十一日、先輩とイサミちゃんのデートを監視する」
「うーん、ちょっとニュアンスが違うような気がするけど……」
「大丈夫です」
私は請け合った。先輩がもう少し詳しい話をしてくれないかと思ったけど、結局その日先輩はそれ以上何もいってはくれなかった。




