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噂の醜女とは私の事です〜蔑まれた令嬢は、その身に秘められた規格外の魔力で呪われた運命を打ち砕く〜  作者: 秘翠 ミツキ


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「やあ、姉さん」


「……」


「帰って来てくれたの?嬉しいなぁ。やっぱり、僕の元に帰って来てくれるって信じてたんだ」


ヨハンは、先程の使用人が持ってきたであろう、皿に手をつけている。

カチャカチャと音を立てて、ヨハンはフォークとナイフを使い()()を綺麗に切り分けていく。テーブルには、数枚の空の皿が並んでいた。


今ヨハンが食べている皿で三枚目……。フィオナが呆然と立ち尽くしていると、ヴィレーム達が追いついて来た。フィオナが何も言わずとも察した様で、顔を顰める。そんな時だ。


「ぁ、お、お姉、様ぁっ……たすけ、てっ……」


「ミラベルっ……⁉︎」


テーブルの影から、地面に這い蹲り姿を見せたのは妹のミラベルだった。


「ぃいやあ‼︎やだぁ、やめてよっ」


必死に逃げようとするミラベルの髪をヨハンは乱暴に掴み、足で頭を踏みつける。


「あれ、おかしいな。新鮮な方がいいから半殺しにしておいたけど、まだ動けたんだ。面倒くさいなぁ……もう、いいや」


「っ⁉︎……ヨハンっ」


ズブッ……グチャグチャッ……。


ヨハンの手が瞬間光り、ミラベルの左胸に穴を空けた。一瞬にしてミラベルの身体は生気をなくし、人形の様に力なくダラリとなる。


だがヨハンは気にとめた様子はなく、心臓を鷲掴みしグチャグチャと音を立てながら抉り取った。もう用はないと言わんばかりに、ミラベルの身体を地面に投げ捨てる。


「クチャクチュッ……う〜ん、微妙だなぁ。やっぱり、生よりソテーにした方が美味しいかな?」


徐にそれに齧り付くと、肩をすくめて塊を空いている皿に置いた。よく見ると、中庭の奥に父と母、姉の身体が転がっているのが視界に入った。


「どう、して……何で、こんな、酷い……こと……なんで……」


身体が小刻みに震える。


「酷い?おかしな事を言うんだね。此奴等は姉さんを蔑み、虐げてきたんだよ。此奴等の方が酷いよ。姉さんは、当然の報いだと思わないの?」


弟はそう言って小首を傾げる。

その姿は、まるで何も知らない無垢な子供の様に見えた。


「私に、だって、赦せない気持ちは……ある、わ……。でもっ……でも‼︎…………それが命に値するくらいの事だとは、思えない……」


父も母も姉も妹の事も、正直好きじゃなかった。……嫌いだった。だからといって、死んで欲しかった訳ではない。


「こんな事、私は、望んでないっ……」


「やっぱり、姉さんは優しいなぁ。そういう所も、好きだよ」


不気味な程恍惚とした表情に、息を呑む。


「それよりさ、何で其奴等までいるの?招待した覚えないんだけど……」


低く冷たい声色と、一瞬にして鋭い目付きに変わり、ヴィレーム達を睨みつけてくる。


「部外者は消えろ」


「生憎、僕はフィオナの婚約者なんでね。部外者なんかじゃないよ」


「そうですわ!私なんてフィオナちゃんのクラスメイトで超ぉ仲良しさんなんですのよ」


ヴィレームは、フィオナを庇う様に一歩前へと出た。シャルロットは胸を張り過ぎて、後ろに蹌踉めいてブレソールに支えられているのが見えた。


「目的は何?君は魔力を欲しがっているみたいだけど、手に入れて何をするつもり?」


ヴィレームのその言葉に、ヨハンの唇が弧を描く。


「僕は、偉大な魔法の使い手になるんだ。世界を支配出来るくらいの力を……僕には手にする資格と素質がある」


「成る程……。でも、素質は兎も角、魔法の使い手の資格とは?」


妙な物言いに、ヴィレームは眉根を寄せる。


「僕は、あの人の血を受け継いでいるんだ!偉大な魔法使いザハーロヴナ・ロワのね」


聞いた事の名にフィオナは首を傾げるが、ヴィレームやシャルロット、ブレソールは驚愕した様子だ。


「誰、なの……?」


「ザハーロヴナ・ロワ……僕の国の建国者の一人だ。最高位の魔法の使い手とされ、彼が古代魔法を生み出したとも言われている。ただ建国後数年で姿を消したとされており、その後は消息は不明だったそうだけど……」


ヨハンの代わりに、ヴィレームが簡潔に説明をする。だが、聞いた所でフィオナには直ぐには飲み込めない。


最高位の魔法使い?建国者?古代魔法を生み出した?……情報量が多すぎる。


「君が、その彼の血を受け継いでいると言うのかい?」


「そうだよ。僕は偉大なるザハーロヴナ・ロワの血を継いでいるんだ、これ以上ない程の資格だろう」


「それが事実と言うなら、何故君には魔力がないんだ?本来ならばわざわざ他者から魔力を奪う必要もない筈だ」


ヴィレームの言う通りだ。そもそもだ。それだと、フィオナだってそのザハーロヴナ・ロワという人物の血を継いでる事になってしまう。父は婿養子なので違うとしても、母や姉、妹だって……。


「そうなんだよ、おかしいんだよ。確かに僕にはザハーロヴナ・ロワの血が流れている筈なのに、魔力がないんだ。僕だけじゃない、母さんも、エリーズ姉さんもミラベル姉さんだって……。でも、フィオナ姉さんだけは違う」


一斉にフィオナに視線が集まった。だが言われたフィオナ自身は、ヨハンの言っている意味が分からない。


「私は、魔力なんて……魔法なんて使えないわ……」


「そうだね。フィオナには、魔力は殆どないよ……」


ヴィレームは何か思う事があるのか、少し躊躇っている様に見える。


「じゃあさ、何で姉さんには使い魔がいるの?使い魔って結構な魔力保持者じゃないと契約出来ないよね?おかしいよね。それに、姉さんは気付いてないみたいだけど、昔姉さんが魔法を使った所を、僕は見た事あるんだよ。開かずの部屋、あそこは開ける事は疎か、取り壊す事だって出来ない部屋で、屋敷を建て直す時だって、代々そのままにされていたんだ。その部屋の鍵を開けたのは……姉さんなんだよ」




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