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「ヴィレーム様、あのこれは一体……」


次の学院の休みの日。ヴィレームは屋敷に商人を呼んだ。応接間は店さながらに、煌びやかな装飾品やらドレスが所狭しと並べられていた。


「ダンスパーティーの準備だよ。さあ、フィオナの好きな物を選んで」


「……私、ダンスパーティーには」


「大丈夫だよ、僕がずっと側にいるから」


フィオナは、これまでダンスパーティーには一度も出席した事はない。フィオナだって年頃の娘だ。正直言えば綺麗なドレスや装飾品で着飾り、参加したい気持ちや憧れが少なからずあった。だが、その気持ちは今はもうない。そんな思いはとうの昔に捨てた……。


実は、学院のダンスパーティーには参加した事はないが、城で開かれた舞踏会には一度だけ行った事がある。

何時もなら『そんな不気味な顔じゃ舞踏会にも行けないわよね。可哀想なお姉様』などと言いながらドレスを愉しげに選んでいた妹。だがある時『お姉様が行かないなら、私行かない〜』と妹のミラベルが言い出した事があったのだ。それまでそんな事言った事はなかったのに……。その理由は明白だった。妹は、退屈をしていたのだ。ただそれだけ。


無論フィオナは嫌がったが、半ば無理矢理連れて行かれた。妹の気分の為だけに。ただその時は、まだフィオナの中には微かな期待感や憧れがあった。

だがその期待感は、直ぐに崩れ去る事になった。広間に入った瞬間の、刺さる様な蔑む視線と笑い声。何かの賭けで負けた男性が罰ゲーム代わりに、フィオナにダンスを申し込んできた。どうしら良いのか分からず受けてしまったあの時の自分は莫迦だ。

曲が終わった直接突き飛ばされ、尻餅をついた。『あー、気持ち悪い』そう吐き捨てられた。

フィオナは、泣き出したい気持ちを抑え込み逃げる様に広間を後にした……。ヨハンが直ぐに後を追って来てくれ、一緒に馬車に乗り屋敷へ帰った。

だから、学院のダンスパーティーにも出席など出来ない。


俯くフィオナをヴィレームが抱き締める。


「フィオナ、君は綺麗だよ。僕が言うんだ、間違いない」


ヴィレームの目は自信に満ち溢れていた。その目を見ていると、不思議と怖い事なんてないのだと、思えてくる。


「……誰に遠慮して生きる必要なんて、ないんだ」


フィオナはヴィレームの胸元に顔を埋めた。例えばこんな風に他の人に言われたとしても、きっと詭弁だと思うだけだ。だが何故だが彼に言われると、素直に頷ける。


「だから、僕のパートナーになってくれるよね」


少しだけ戯けたヴィレームの言葉に、フィオナは「はい」と答える事が出来た。




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