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バベルの塔  作者: らす太
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七五三

 愛知県犬山市。国宝犬山城で有名な処だ。そこの神社本庁分社出張所から要請が有り、俺と秀子も駆り出された。

 犬山市の事務所に着くと、会議室に案内された。そこで初めて俺の他に5人の特命流罪人が呼ばれている事を知った。

 俺は驚いた。俺と同じ様なやつが他にもこんなにいたのかと。

 秀子の話しだと、全国に30〜50人位いるらしいが、その能力はまちまちで、ランクもA〜Eの5段階あるそうだ。

 「因みに俺のランクはどうなんだ」秀子に訊いてみた。

 「勿論SSよ」


 ターゲットの芽は6歳と11ヶ月。今夜0時の誕生日を迎えれば7歳になる女の子だ。

 今夜がラストチャンスとなる。とこの事務所の所長が説明した。

 「ラストチャンスとはどう言う事だ」

 「私もそれは知らないの」秀子は首を振った。

 「7歳になると花が咲くからよ」

 いつの間にか、俺達の後ろに秦が立っていた。この部屋にはドアは一つしかない。しかも全員から見える位置に。

 誰も秦がそこから入るのを見ていなかった。

 「男の子は5歳。女の子は7歳で花が咲く。花が咲いてしまったら、もう私らが手を出す事はできなくなるの。それがこの世界の法。理よ」秦は続けた。

 「七五三ってあるでしょ。3歳までが一番芽を摘みやすいのよ。いえ。見つけやすいの。魂の色とか匂いとか…、でも3歳を過ぎるとその特徴が薄くなるの。いえちがう。擬態するのよ普通の魂の様に。魂をコントロールする能力を身につけるのよ。」




 俺達にはほとんど作戦なんて物は無い。人気のない夜に女の子の自宅に侵入して襲う。それだけだ。

 いつもと違うのは、人数だ。秀子の情報では5人共Aランクの強者との事だ。

 5人共、昼間は何処にでも居る、ただのおっさん三人、引き篭もり一人、気弱そうな大学生に見えたが、夜ターゲットのマンションの前に集合した彼等は一様に殺人者のオーラで身を纏っている。

 「相手は満期間近の6歳児よ。かなりの守護者で周りを固めているはず。心してかかりなさい」

 秦の言葉が蘇る。それだけやばい相手なのだ。

 俺達は予め分社が用意していたエントランスドアのカードと暗証番号を使いマンションには容易に侵入出来た。

 ターゲットの部屋は10階。最上階の部屋だ。

 俺達は3・3にエレベーター組と階段組に別れた。

 もしも、奴らに気づかれエレベーターを途中で止められたらアウトだからだ。

 それに俺達が能力を使うとエレベーターのスピードと、階段を駆け上がるスピードにさほど差は出ない。

 俺は階段から行く方にした。俺が先頭に立ち、駆け登った。

 10階の階段ドアが見えてきた頃。"チン"エレベーターの到着音が聴こえた。若干エレベーター組の方が早かった様だ。

 "パンパンパンパンパンパンパンパンパンパン"強烈な破裂音!!

 ピストル!?奴ら日本で銃を所持しているのか?

 どうする。でも行くしかない。俺はドアを開け廊下に出た。後の二人も続いた。流石Aランクの強者達だ。

 パンパン!ピストルの発射音とギュンと脇を掠める弾丸の音。敵は5人。俺達は怯まず廊下を駆けた。敵の腕の動きに合わせ軌道を避けながら距離を詰める。

 俺が敵の一人に飛び掛かった時、「う」後ろで仲間が一人殺れた。

 生き残った俺と大学生の兄ちゃんで敵5人を仕留めた。しかし、俺達は二人共負傷してしまった。俺は肩を。兄ちゃんは脚を。

 エレベーター組は全滅だった。ドアが開いたところを一斉射撃されたのだ。

 しかし、敵が銃を所持しているとはどう言う事だ。守護者は芽に危険が迫るまでは自分が守護者とは気づかず普通に暮らしているのではなかったのか。

 


 「はーはー」

 流石に俺達でも肩で息をしていた。

 "ガチャン。ガチャン。ガチャン"次々とこのフロアのドアが開いて行く。

 ドアからはバットやゴルフクラブ、包丁を手にした住人がゾロゾロと現れた。泣けてくる。

 「兄ちゃん。まだやれるよな」

 「勿論っす」



 

 ここのフロア六世帯全員が守護者だった。幸い大人だけで子供の姿は無かった。それも変なのだが。芽が予め大人の守護者で周りを固めていたのだろうか。

 俺達は更に傷を負ったが、守護者全員の心臓を止めた。そしてボロボロになりながらもターゲットの部屋に辿り着いた。

 この間この騒ぎの中、一切外からパトカーのサイレンの音はしない。

 誰も通報してない訳は無い。秦たち分社の人間が抑えているのだ。

 

 俺達は慎重に部屋に入った。……いない!?

 全部の部屋を確認するが居ない。おかしい。ターゲット親子が外出した報告は受けていない。

 「逃げられたか…」

俺が秀子に状況報告をしようとスマホを取り出した時、大学生がベランダから俺を呼んだ。

 「どうした」

 「これこれ」

 大学生が指差す方を見ると、どうやら屋上から吊るされた縄梯子が垂れ下がっていた。

 「先に行きますね」

 「待て待て、兄ちゃん早まるな」

 サクサク登ろうとする彼を俺は慌てて引き止めた。

 「バカ、登ってる途中で外されたらどうするんだ」

 そう言ってる側からスルスルと梯子が外され、落ちてきた。

 

 俺達は階段から屋上に出た。

 "ズキューン"ドアを開けるのと同時に発砲された。

 芽の父親だ。その後ろで母親も銃を構えている。

 女の子は更に後ろの方にいる。しかし、様子が変だ。両手を上げて空を見ている。そして何やら叫んでいる。

 「見逃してくれ」父親が叫ぶ。

 「この子は人類の宝なんだ」

 「それは違う。この子は人類を滅ぼすかもしれないんだ」

 「違う。この子は天才なんだ。3歳で既に高校生レベルの数学の問題を解いてしまったんだぞ」

 「…」俺達はこれまでそうした人類の宝かも知れない優秀な頭脳を摘み取って来たのかも知れない。

 膠着状態が続いた。俺も大学生ももう弾を避けながら、走る力は残ってない。

 

 「タイムアップ時間切れよ」

 女の子が俺達に叫んだ。そして人差し指で天を指した。

 その瞬間。指の先の上空に闇の中から巨大な楕円形をした物体がヌーっと姿を現した。

 その物体は底の部分では大きな丸い電球の様な物が緑色に発光しながら回転しており、上部の方でも青い光をチカチカと点滅させている。

 


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