別天津神《コトアマツカミ》
その日俺達は秀子の連休に合わせ群馬県の山村部にある温泉に来ていた。
昼間は宿の周りをぶらぶらと散策して、夜は露天風呂を楽しんだ。
夕食は山菜料理とイワナの塩焼き、水沢うどんなどに舌鼓をうち、久しぶりに心が安らいだ。
夕食後テレビをつけると、最近流行りの都市伝説番組がやっていた。UFO特集だった。
俺は布団に横になりながら、秀子は、窓際のソファーで携帯をいじりながらその番組を見ていた。
「なぁ。UFOってなんなんだ」
「さぁ。よくわからないわ」
「宇宙人ているの」
「それはいるわね。元々宇宙人だった魂が地球に来たり、地球人だった魂も他の星に行くことはあるから」
「地球の神様と宇宙人の神様は別なの」
「霊界には何層もの次元があるのよ。上の世界では宇宙全体と繋がっているの。でも、それははるか高次元の存在が司る世界。別天津神の領域よ」
「別天津神…」
「そう。この世界と神を造った存在」
秀子が寝た後、俺はなかなか寝付けず夜中にもう一度、露天風呂に出かけた。
脱衣所には他の客の着替えやタオルは無く。どうやら先客は居なさそうだ。
露天風呂は24時間照明がついている。しかし、空は月も無く星もまばらで、露天風呂の周りは静かな闇が囲んでいた。
湯船に浸かっている時だった。暗闇に眩い閃光が走った。
見上げると、無数の発光体が浮遊している。その数はどんどんと増す。
突然そこに現れるもの。何処かから飛んで来てそこに加わるもの。その数も光の量も増していった。
発光体は飛行船なのか。でもその動きは理解できない。いくつかの発光体は合体して大きな光の塊になるし、逆に分裂するものもある。
20分程俺はその天空ショウを見ていた。が、その発光は一瞬で同時に消えて無くなった。
穴の中に一斉に隠れたかのように。闇の空に潜って消えた。
それ以降俺は頻繁にUFOと遭遇する様になる。
俺達が東京に戻り、暫くしてアメリカ国防省がUFOに関する調査チームを編成すると発表した。
表向きは、あくまでも敵国の武器の可能性を視野に入れてとの事だが。