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バベルの塔  作者: らす太
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真《マコト》

 「司お前は何で神になりたいんだ」

 「人間を守るためさ」

 「お前は人間に悪魔と言われ、魔女(男でも魔女と言う)と言われ、火炙りにされたのに」

 「あれは、人間の弱さだ。戦争とペストで人間はおかしくなっていたんだ」

「神になって、神の力を使い戦争を止めるのか」

 「そうだ」

 「病気を治すのか」

 「そうだ」

 「それで人間は幸せになれるのか」

 「いや。まだだ。土地を豊かにして、飢えを無くす」

 「それが神の仕事なのか。では、何故神はずっとそれをやらなかったんだ」

「…」

「戦争は何処から来た。ペストは何処から来た。飢饉は何処から来た。災害は何処から来た」

 「ど、どうゆう意味だ」

 「神の仕事とはそう言う事だ」

 「なっ…」

「神の上にも神がいる。神を造った神だ。その神は人間も造った。神と人間は最初から魂の在り方が違うのさ。……人間が修行して神になる。ってやり方は間違っている。人間の魂にはエゴが仕掛けられてる。それが神と人間の魂の違いさ」

 真は更に続ける。

 「人間はエゴをコントロールできた時、その魂は恐ろしく進化を遂げる。」

 真は俺の腕を取り引き寄せた。

 「司。お前は神になんかなるな。俺と一緒に来い」

 


 「私の力ではここまでが限界よ」

 秀子は俺の上で両手をかざしながらそう言った。

 

 俺が歌舞伎町で刺されて直ぐ、警官が駆けつけた。

 父親はナイフを刺したまま倒れている俺の顔を何度も蹴っているところを取り抑えられた。

 緊急搬送された俺は、一命を取り留めた。手術後、目を覚ますと秀子が俺のベッドの側で、涙で顔を腫らしていた。

 「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」

 秀子はずっとそう繰り返して泣いた。

 

 入院中秀子は家には着替えに帰る程度で、殆ど付きっきりで俺を看病した。看護師が完全看護だから、家に帰って休まれて下さいと言っても、それを頑なに拒否した。

 俺も、大丈夫だからと言ったが、私にはこんな事位しかしてやれる事がないから。と言う。

 傷も徐々に癒えて、そろそろ退院出来そうなそんなある日。秀子は真剣な面持ちで言った。

 「司が嫌なら私達別れてもいいわよ。もう私の事信用出来ないでしょう」

 「…頭ではわかっているんだ。」俺は言った。

 「例えば、FBIとかさ、国家の極秘任務に付いてる人達って、家族でも恋人でも任務を明かさないだろ。お前の仕事もそうなんだろうなって。でも…」

「それは違うわ。司が私の事を信じられない気持ちも分かるわ。でも私も殆ど何も知らないの。私は覚醒した今でも司を愛しているの」

「…俺も秀子を愛している。でも、苦しくて、苦しくてたまらないんだ。俺に人を愛する資格なんてある訳ない。何で俺はこんなに人を殺してまで生きなきゃならないんだ」

 「…分かったわ。私に出来るかどうか分からないけど」

 そう前置きすると、秀子は俺の頭の上でてをかざした。

 「あなたのあの世での記憶を取り戻せるかやってみるわ」

 


  


 俺と秀子は別れなかった。

 退院して俺達は一緒に暮らした。

 俺は酒を止めた。そして、秀子のお陰で健康的な身体を取り戻す事が出来た。

 俺達は、順調に仕事をこなして行った。

 秀子達分社のチームがターゲットを見つけ、秀子が俺に情報を伝える。そして、俺は芽を摘み取る。その後分社の処理班がその事件をもみ消す。

 それが特命流罪人とそのマネージャーの日常。

 その業の深さに俺達は何度も何度も泣いた。

 苦しくて苦しくて、悲しくて悲しくて。

 俺達は泣いて抱き合った。

 俺たちが奪った子供達の冥福を毎日祈った。

 訳も分からず俺に襲われた守護者達の冥福も。

 俺達は心を落ち着かせるため瞑想を始めた。

 瞑想のなか、真が俺に呼びかける。


 

 秀子が見せてくれたあの世での俺の記憶。

 俺は神になろうとして神の門を叩いた。

 神の指導の元修行に励んだ。俺の様に修行する仲間が何人かいた。その中の一人が真だ。

 真は言った。神の力を手に入れても神にはならないと。そして、俺にも神になるなと言った。



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