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バベルの塔  作者: らす太
15/17

 高野山は816年(平安時代)に弘法大師空海によって真言宗の総本山金剛峯寺(こんごうぶじ)が築かれた聖地である。高野山は山全体が境内であり、高野町と言う町でもある。

 町には役場や警察、学校に病院、レジャー施設に商店街と何でも揃っており、金剛峯寺の他117の子院(寺)が点在するが、その子院の殆どが宿泊施設を備えた宿坊となっている。ここは観光の町でもあるのだ。



「あなた達は何を言っているのです」

 金剛峯寺の案内係は苛立ちを露わに言った。彼がそうなるのも無理も無い事である。何せウリヤナがいきなり「空海に会わせろ」と言ったもんだから。

 「?ああ、それなら奥の院の弘法大師廟に入定(空海は835年自らの死を悟り入定した。入定とは死ではなく禅を永遠に続けている。と言う考え。)なさっておりますよ」最初は彼も穏やかであった。

 「いや。私は生きている、本物に会いに来たのだ」

 「ええ。大師様は生きておられますよ。我々は毎日太子様の元にお食事を運んだり〜」

 「ええい!そんな建前の事を言っているのではないのよ!本物に会わせなさい」

 まあ、当然案内係の坊さんは腹を立てる。

 「これ以上訳の分からない事を〜」

「あの」秀子が自分の名刺を差し出しながら言った。

 「私神社本庁分社の者です。大僧正様にお取り継ぎ願います」

 「鍵が来たと伝えなさい」ウリヤナが付け足した。




 俺達は30分程受付で待たされた後、要人用の応接室に通された。

 そこは外国の要人にも配慮されており、和室ではあるがふかふかな高級座椅子が配置されていた。

 俺達が、その座椅子に座って待っていると、スッと襖が開き、「いやぁ、お待たせしました。申し訳ございません」いかにも人の良さそうな気さくな感じのする老僧が入って来た。

 俺達が立ち上がろうとすると、「いや、どうぞそのままで」そう言うと老僧は俺達と卓を挟んで正面に座した。

 「私は第四百十〇世座主葛成です」

 「あなたが空海さん」ど直球にウリヤナが質問した。

 「いいえ。違います」老僧は嫌な顔もせず答えた。

 「師は此処にはいらっしゃいません。師にお会いする前に、先ずは私がお話しをお聞きしてからと言う事になっております」

 「あなたは信用できるの」ウリヤナの辞書に無礼と言う言葉は無いらしい。

 「信用して頂くしかありませぬな」やはり老僧は怯まない。「では。お聞かせください。なぜ、分社と特命のお二人が鍵を持ち歩いているのかを」

 俺達と秀子はもう後がない。この場はこの老僧を頼る他は無いと判断し、俺はこれまでの経緯を話した。





 「ううむ。特命流罪人と伊邪那美命の巫女(部下)との間に芽が宿るとは…しかもその子も鍵だと言う…」

第四百十〇世座主は腕組みをしながら唸った。この老僧は暫く思案したのち言った。

 「実は私の娘(真言宗は結婚が許されている)が暫く前からこの寺に来てましてな、皆さんに紹介しましょう」

 そう言って老僧は懐からスマホを取り出し何処かへ電話した。


 15分程待っていると「失礼します」襖が開き、子供を腕に抱いて女が現れた。そして、その傍にはその夫であろう男も立っている。

 「あ!」俺と秀子とその夫婦は思わず声を挙げた。

 親子はあの飯能で俺が逃した、あの親子だった。

 「おや?お二人はうちの娘家族とお知り合いでしたか」

 老僧はにこやかに訊いた。

 「…」

「その子も鍵だぞ」

 ウリヤナが母親が抱いている女の子を指差した。

 





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