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バベルの塔  作者: らす太
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D=10

 D=10これは、この世は10次元である。と言う意味。現在はそれに時間軸も加えて11次元とされている。

 我々が棲むこの世界は3次元に時間を加えて4次元であると言うのが今の学者の認識。

 アインシュタインの特殊相対性理論、一般相対性理論と、その法則に当てはまらない量子論。

 フランスの若き天才物理学者ジョエルシャークはこの二つの理論が超弦理論(超ひも理論)を用いて同時に成り立つ事を証明した。

 ひも理論とは、素粒子は一つのヒモ状のもので、発見されている素粒子は全て同じひものその巻き方の違い、振動の違いによるもの。とする説。

 しかし、それが成り立つのは10次元の世界上であった。

 D=10の発見だ。と同時にこのひも理論を用いた理論を証明するには、この世は10次元で出来ている事を証明しなくてはならなかった。

 それからジョエルシャークはこの地上線に日常に潜む、多次元を探してパリの街を徘徊するようになる。

 元々非常に明るい性格の男だった彼はひも理論を解いた後、性格がガラッと変わってしまった。

 人付き合いを止め、ひも理論の事も語らなくなった。

そして34歳に美しい妻を残して自殺した。

 彼の死後20経ってようやくひも理論が認知されるようになる。

 何故なら、物理学では三次元に時間を加えた時空間は上次元からの重量でその空間に歪みが生じる事が分かったからだ。宇宙望遠鏡で視る宇宙の果ては光の4倍の速さで、銀河が遠ざかっている事が発見されたのだ。

 つまり、時空間が別の次元の重力により歪められているのだ。

 三次元世界では光の速度が最速である。しかし、宇宙の膨張はその4倍である。

 時空間の歪みは時空間の距離が短くなる部分と長くなる部分が出来る。

 当然そこでは時間のスピードも違っている。

 また、素粒子の分野に於いても、それ以上に分解出来ない、殻で覆われたミクロの次元が有ると考えられ始めている。

 数学者はこのひも理論の公式にどんどん具体的な数値を当てはめ、この世界の日常から宇宙の現象を解こうとしている。

 

 

 ジョエルシャークは徘徊したバリの街でどんな次元を見てしまったのだろうか。10次元の世界を見るために彼は肉体を捨てたのだろうか。

 


 


 「重力装置を使ってこの4次元空間を歪曲すれば、瞬間移動も、タイムリープも可能なの。」

 後部座席で筍の里をポリポリ、もぐもぐさせながらウリヤナが熱弁している。

 俺と秀子とウリヤナを乗せたベンツsuvは四日市JCTを亀山インターチェンジに向かって走らせている。

 「んで、4次元と5次元がピタッと重なって、回転して自転が移動すれば、この世界は5次元に次元上昇するわけよ。その為には人間は一度ヒモを解かないといけないのだけれど…」

 この子は本当に5歳の女の子なのか。

 道中喋っているのはウリヤナだけだった。俺は時々ウリヤナの話に相槌を入れたりするが、秀子は東京から全く喋ることは無かった。

 



 

 「司お前にこの子ウリヤナを預けたい」セルゲイは言った。

 「いや。それは無理だ。だってこの子は芽だろ」

 ウリヤナは俺と秀子をロビーに呼びに現れた時から、芽のオーラを俺達に隠す様子すらなかった。

 俺は真とハグした時に何故神を殺したのか。その記憶が蘇った。だが、真の頼みは聞いてやれない。何故なら俺は今、神の僕として生きているからだ。

 「司。お前の仕事は知っている。ロシアは君達流罪人の動きをずっと観察して来たからね」

 「ロシアが」

 「そう。ロシアと銀河連合が」

 「???」

 「ロシアと銀河連合は俺が仲介して共同でアセンション(次元上昇)の準備を進めているのさ。黙示録の日。お前は伊邪那美に俺は阿弥陀如来に命を救われた。俺はあの日から、仏と共に宇宙を旅して来たんだよ」

 セルゲイは楽屋に用意されている練習用のグランドピアノの方へ手を伸ばした。そして、立ったままポローンと鍵盤を爪弾き、そして「俺が旅した銀河の星々〜♪」ミュージカル調に歌い出した。

 「銀河には沢山の星があり♪そこには色んな形の知的生命体がいるんだよ〜♪」

 歌は楽しいい場面だったり一転してマイナー調に転調した暗い場面だったり、星の物語を聴かせた。

 「生命体は進化した♪食べなくても良くなった♪AIが仕事をして生命体は哲学した〜♪言葉も要らなくなったLaLa Laナショナリズムは消え去ったhey争わなくなって戦争は無くなったLaLa La」ポロローン。

 「司。宇宙ではカルマの法則を必要としない魂の進化もあるんだ」セルゲイはいや、真は言った。

 「ウリヤナを花が咲くまで日本で2年間守ってくれ」

 「なぜだ。意味がわからない。お前が守ればいいだろう。それに、わざわざ日本で何をするつもりなんだ」

 「弥勒探しだよ。ウリヤナは弥勒の封印を解く宇宙の遺伝子を持つ鍵なんだ。俺はその日に備えて、黙示録の日に別れ別れになった5人の仲間を世界中回って探しているんだ」

 「だめだ。俺には出来ない。すでに俺は、いや、俺と秀子は多くの子供達とその守護者達を神の名の下に殺めて来た」

 俺は秀子の手をぎゅと握ると秀子もぎゅと握り返した。

 「実はこれも意味があったんだよ」真は微笑んだ。

 「君等神仕えが芽を摘み出したお陰で、カルマのサイクルが極端に短くなって来たんだ。それに神にも予想外の事が起こったし」

 真は秀子を見てから言った。

 「彼女が孕っているその子も鍵だよ」



 

 「ウリヤナ着いたぞ」

 車内BGMで流していたグレングールドのゴールドベルク変奏曲が丁度10回目の再生を終えた時、俺達はようやく目指した場所に到着した。

 和歌山県伊都郡高野町。人呼んで高野山。真言宗の総本山だ。

 俺達はその真言宗の開祖空海に会いに来た。空海こそが弥勒の存在を知る人物だとロシア当局は見ているからだ。






 

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