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バベルの塔  作者: らす太
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ウリヤナ

 物質である素粒子は何も無い真空の状態でも生まれる。そして波動になり消える。

 真空と思われる宇宙空間は実はエネルギーに満ちた量子空間なのだ。

 量子とは物質の最小粒子(素粒子)と波動のこと。

 光の研究で、紫外線は物質で赤外線は波動である事が判り、量子論の研究が始まった。

 量子力学はニュートンやアインシュタインの物理学の法則が全く通用しない世界だ。

 素粒子は重量や空間の制限を受けない。何も無い処に生まれ、いつまでも飛び回る物もあるし、波動の様に消えてしまう物もある。

 また素粒子同士がぶつかるなどして一度干渉を受けると、どんなに離れていようとずっと干渉をし続けたりする。

 しかし、素粒子も原子になり、分子になると、従来の物理的制限を受けることになる。

 +電気性質の素粒子(陽子)と電気性質の無い素粒子(中性子)がくっつき原子核となる。それに−の素粒子(電子)が引き付けられ、原子核の周りを廻り出す。それが原子だ。


 実は酸素も水も木も鉄も人間も、素粒子と波動から出来ている。


 量子はこの世界に現れる時、素粒子と言う物質で現れる。

そして、波動になり、また何処かへ行ってしまう。

 人間はいつかその謎を解くだろう。

 


 


 東京新宿。オペラシティ。俺と秀子はお気に入りのピアニストの来日コンサートに来ていた。

 ここ数ヶ月、俺達は出来るだけアクティブに行動した。

 秦に海外旅行は禁じられていたので、2泊から3泊の国内旅行に頻繁に出かけた。

 各地の文化遺産や美術館を見て回り。東京にいる時はミュージカルやオペラ、バレエに能、はては寄席に至るまで、貪欲に楽しんだ。

 秀子が仕事の時でも、俺は1人ででも出かけた。

 何しろ金の心配をする必要は俺には無い。その土地その土地の神社でお願いをすると、必要な金は手に入る。

 スクラッチで100万当たったり、立ち寄った喫茶店の座った席のテーブルの下に、現金がびっしり詰まったバッグが置いてあったり、カラスがダイヤの指輪を咥えて来た事もあった。換金するのが面倒くさかったが。

 俺は多分答えを探していたのだろう。あの元特命流罪人の言っていた人間を信じろについての。

 だから人間が造った建物や美術品、文化から人間の可能性を測ろうとしたのだ。

 その間俺達は、何度か芽と遭遇した。しかし、俺は彼らを無視した。分社からの依頼が無ければ、俺は芽を摘まない。秀子も何も言わなかった。

 これ迄は、発見したら摘まなければいけないと言う、強迫観念がみたいなものがあったから、あまり出歩がない様にしていた。

 特命としての使命感なんてものはもうない。もう後に引けないだけた。出来るだけ人を殺めたくはない。



 コンサートはすばらいものだった。若いピアニストは観客を日常から解き放ち、音楽の風景へと誘ってくれた。

 時には中世ヨーロッパのサロン。時には夜の小道。どこかジプシー達が旅したであろう中東の石畳。

 最後は皆スタンディングオベーションで若い才能を讃えた。

 

 人間の文化は素晴らしい。この世界は美しい。

 俺はこの世界を護っているんだ。


 


 公演が終了しても、俺達はまだそこを動きたくなかった。余韻に浸っていたかったからだ。

 観客もだいぶ引けて、まばらになったロビーの長椅子に二人で腰掛けていた。

 そこに、綺麗なドレスの白人の女の子が俺達の前に、かけて来た。

 「コンニチハ」女の子はニコッと笑った。

 俺達はそれに笑顔では答えられなかった。ただ黙ってその子の次の言葉を待った。

 「兄様が呼んでいるわ」

 俺は秀子にコクンと頷き、秀子も頷いた。俺達は女の子に連れられて、今日の主役、ロシアの若き天才ピアニスト、セルゲイ.ペトロフの楽屋へと案内された。

 「兄様お連れしたわ」

 「やあ。いらっしゃい」

 セルゲイは部屋の中央で立って俺達を出迎えた。彼はただ立っているだけで美しかった。

 セルゲイは少女漫画に描かれる男性の様に中性的な顔だちをしている。

 「紅茶はいかが」

 セルゲイは俺達に流暢な日本語で椅子を勧めながら訊いた。

 「いやけっこです」

 俺達は椅子にも座らなかった。

 「随分と日本語がお上手なんですね」秀子が言った。

 「ふふふ。実は僕たち兄妹の母親は日本人なんですよ」

 「セルゲイさん、今日の演奏はとても素晴らしかったです。お会いできて光栄ですが…」

 「そう警戒しないで司」

 セルゲイは俺の話を遮るように言った。

 「え」俺が戸惑っていると、彼は優しく微笑み俺の手を取った。そしてグッと自分に引き寄せた。

 この感覚俺には覚えがある。

 セルゲイが俺を抱きしめた時、思い出した。

 「真!?」

 「思い出したかい司。司が俺を見つけたのは運命なのさ。司が客席にいるのが、演奏してて直ぐに分かったよ」

俺が最近一推しだと思っていたピアニストは実は潜在意識が真を見つけ出したということか。

 「ところで今日は司にお願いがあるんだ。この妹ウリヤナを預かって貰いたいんだ」



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