~起~壱
初めまして、片桐 隆と申します。
この作品は、実体験をふんだんに盛り込んだ、ラブコメ・ミステリー・SF・ホラー・青春・自伝作品となっております!(詰め込みすぎ!)
何分処女作となっておりますので、暖かい目で見守ってやってください。
目標は「しかっり完結させる!」です。
どうぞ、皆様よろしくお願いいたします。
2021年8月・・・
「・・・最悪だ」
海沿いの道路を車を走らせながらつぶやく
『最悪なのは私か・・・』
「う・・・うあぁぁぁぁぁ」
年甲斐もなく大声をあげて泣きわめく、運転中の車内でもなければできないだろう
目的地なんか無かった、行くあても、帰る家も、頼る人も、
『全て自業自得、私のせいだ・・・‼』
数時間前に遡る・・・
「離婚しよ」
妻にそう言われた、私はそれを受け入れ
「うん、出ていくよ」
そのまま、9年間暮らした妻の実家と家族を残して家を後にした
特別夫婦関係が悪かったわけでもない、何事もない普通の家庭・・・でも無いか
というのも私は1年ほど前から【鬱病】を患い仕事を休職しているからだ
まぁそれ以外にも普通じゃない事は結構あるのだが・・・
例えば私には子供が3人いる
この少子高齢化が進み年間40万人以上人口が減少している日本において3人も子供を産んでいる妻に国からご褒美でもあってもいいものだが
上から長女・長男・次女の三人だが実のところ【私の】子供は次女一人だけである
つまりは上の二人の子は妻の連れ子である
そう、妻は私と結婚する前に✖≪バツ≫がついているのだ。
それだけでもややこしいのだが、さらに私の苗字も私のものではない
傍から見れば俗に言う【マスオさん】状態である
改めてみると少しも普通の家庭ではない
で、あの時に戻るのだが・・・
夫婦関係は決して悪くなかったのになぜ?突然
「離婚しよ」
に、なったのかと言うと・・・
私の【長女の入浴シーン盗撮未遂】がバレたからだ
『・・・。』
一気に読者がドン引きするのが手に取るようにわかるが・・・
あえて言おう!
「私は人間のクズだっ‼」
取り繕うつもりはもうない
『根っこがね、完全に腐ってるんだよ、私は』
そりゃあ「離婚しよ」になるでしょ?
今まで必死に取り繕ってきたさ、仕事でも家庭でも、けどそれも去年限界突破したんだよね
だから鬱病で1年休職中だったのよ
『真人間のフリは疲れたんだよ・・・所詮蛙の子は蛙なんだよな・・・』
開き直りとも思われるかもしれないが
そうなるだけの生活を送ってきたのが【私だ】
鬱病に罹ってからというもの常にある希死念慮と向き合ってきたが・・・
今日ほど死にたいと思ったことは無かった
『全て自業自得なんだからしょうがない』
『死にたくても死ねないというのも辛いものだ』
『変な【縛り】なんか自分にかけるんじゃなかった』
『改めて独りになったが、ホントに私は天涯孤独なんだな』
普通の人であれば実家があったり親兄弟がいたりするものなんだろうが
私にもそんな人たちがいたような気もするが・・・
今は正に【天涯孤独】そのものだ
『出ていくとは言ったものの、さて、どうしたものか』
先ほどとは違い少し冷静さを取り戻し現実を見つめなおす
修羅場なら数多く経験してきている
『バレたらこうなることはわかっていたし』
『カプセルホテルか?』
駐車した車内でスマホを取り出し検索してみる
『・・・たっか』
何度も言うが鬱病で休職中の身だ手持ちなんてたかが知れている
生きていく上でこれから住む場所はどうしても必要になる
お金はなるべくなら使わないようにしたい
『却下だな・・・ネカフェでも行くか』
40過ぎの鬱病オヤジが行く場所も帰る家も無くネカフェに泊まる
『・・・死んだ方がどれだけマシか・・・』
「・・・1dayパックで」
「1,320円になります」
1dayパック、24時間で税抜き1,200円という超お得プランだ
『便利な世の中になったものだ』
時刻は午前3時を回ったところだった
行く当ても無くひたすら車を走らせていたので時間の感覚がおかしくなっていた
『さて、これからどう生きていくかな?』
ネットカフェの狭い個室で横になり今後の事を考える
『・・・疲れたな・・・』
横になり目を閉じて考えていると自然と眠りへと落ちていく・・・
バキッ!バキッ!バキッ!
「ごめんなさい!ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!!」
「・・・またか」
何かを確かめるように頭をさする
いつのまにか寝ていたようだと言っても鬱病になってからぐっすり眠った記憶などない
時間だって、まだ午前5時前だ小一時間と言ったところか
『また、ガキの頃の夢か・・・』
辛いことや気持ちが下がっているとき必ず見るのが【子供の時の忌まわしい夢だ】
鬱病になった当初は毎日のように見ていた悪夢だそういわせるほどツライ幼少期を過ごしてきた
それが私の根っこが腐った原因だ
気持ちを落ち着かせるために喫煙所へと向かう
数年前まではそれぞれのブースでも喫煙出来たのだが政府の方針かなんか知らんけどネカフェでも喫煙所以外は全て禁煙だ
『店中ヤニ臭かったのが懐かしい・・・』
『なにはともあれ住む場所探さないとな』
加熱式たばこを吸いながらそんなことを考える
過ぎてしまったこと自分の犯した罪は消えることは無い
『考えるだけ無駄だ』
鬱病になって身についた一種の自己防衛法だ過去に足を取られると引きずり込まれるから
『考えてもしょうがないことは考えない』
それでも生きていかなければいかないのが人間だ
しかしまったくなにもやる気がおきない絶賛【抑うつ状態】だ
こんな時は睡眠薬を飲んで寝逃げをするのが一番だ
自分のブースへと戻り睡眠薬をドリンクバーのウーロン茶で流し込む
『・・・しかし、狭いな・・・』
『ま、エアコンの効いた場所で眠れるだけマシか』
実はネカフェにたどり着くまでに車中泊にも挑戦してみたが8月夏真っ盛り
夜中とは言え車中泊など出来たものではない
お金はないが熱中症でくたばってもしょうがない
『ま、生に未練は無いがね』
変死となると妻や子供たちにも迷惑がかかるしな
『・・・う~ん、眠れない・・・』
【睡眠障害】鬱病の代表的な症状のひとつだ
もう一年も睡眠薬を飲み続けていると体に免疫がついて効きが悪くなるらしい
その後も寝たり起きたりを繰り返し気が付けば朝になっていた
「ありがとうございました」
やる気のない店員のあいさつを聞きネットカフェを後にする
『あっつ・・・』
8月の陽射しが容赦なく照り付ける
鬱病で一年間引きこもり生活をしていた私には拷問以外の何物でもない
「みぃ~」
『ん?』
店の駐車場で一匹の子猫がこちらを見ている
「びび?」
びびとは私が飼っている、いや飼っていた猫の名前だ
妻の実家に住むというのは予想以上にストレスが溜まるもので
少しでも癒しが欲しいと猫好きの私が妻の父、つまりは義父に土下座までしてお願いして飼っていた猫だ
ちなみに義父は猫嫌いである土下座の意味は解ってもらえただろう
『って、全然違うじゃん』
こちらに近寄ってくる子猫は陽射しを受けて光っているようにも見える純白の子猫だ
うちのびびは2歳のキジトラだ似ても似つかない
「みぃ~!」
子猫は無警戒に私の方へと近寄ってくる
「なんだ?おまえも独りか?」
「み~」
『なんと警戒心の薄い、飼い猫か?首輪は・・・してないみたいだけど』
撫でながら子猫をよく見てみる
「み~」
「ごめんな、おまえにあげられそうなものはなんも持ってないんだ」
『帰る家も家族も無くなったくらいだからな』
などと考えていると突然子猫が道路の方へ視線を向けた
「ん?なんだ?なんかいるのか?」
私も道路の方へと視線を向ける
何かいるのかと探してみると一羽のカラスが中央分離帯にいた
『あれか?ってか、国道のど真ん中で羽を休めるとは、命知らずなカラスだな・・・っ!?』
急に嫌な予感がして足元を見てみる
つい先ほどまで私のすぐ足元にいた子猫の姿が消えている
すぐにカラスの方へと視線を戻すその途中で
ゆっくりとカラスとの距離を縮めている子猫の姿を見つけた
「バカっ!!」
私の声がキッカケにでもなったかのように子猫が走り出す
『思うより先に体が動くなんて事が本当にあるんだな』
『間に合うかな?』
『車は・・・こりゃドンピシャコースだな』
『あと少し』
『間に合っ・・・』
『・・・たっ!!』
子猫をすくい上げるように歩道へと投げ飛ばす
と、同時に中央分離帯にいたカラスの羽ばたきが目に入った
『・・・アユミ・・・』
耳を裂くようなブレーキ音
その後鈍い衝突音がする
ドンッ!!!
『・・・』
『・・・子猫は?』
『いない??』
『まぁ、辺りに死体がないから無事かな?』
『おおぉ~派手に車がへこんでるなぁ』
『お!あいつが運転手か?』
『・・・スキンヘッドにスーツ!?』
『ヤバい!反社の方・・・かな?』
『ふむ、事故起こしてもしっかり救助はしないとね』
『え?・・・』
運転手は私の目の前で倒れている【私】に声を掛けている
一目見れば医学の心得が無くても解る【私】の体は見るも無残な姿になっている
後続の車が次々に停車して次第に普通ではない空気が辺りを包んでいく
運転手はすぐさま携帯を取り出し電話をかける【私】には触れることもしないで
『・・・』
『・・・・・・』
『・・・・・・だよな』
よくテレビに出てくる霊能者が浮かばれない幽霊の事を
「本人はまだ死んだ事に気づいていない」なんて言うが
そんなのは嘘だ、こんなの目の前にしたら誰でも解るよ
『・・・最後に少しは良いこと出来たかな?』
辺りは渋滞する車と異常を嗅ぎ付けた野次馬たちで騒然となっている
はずなのだが、私の周りだけはなぜかそんな喧騒を感じさせないくらい静かだった
しばらくすると遠くの方から救急車のサイレンの音が聞こえる
その少し後から今度はパトカーのサイレンも聞こえてきた
その音が近づいてくるとさらに現場は騒然となっていく
私はその様子をただ茫然と眺めている
現場には規制線が張られ交通誘導のために次々とパトカーと警察官が現場に現れる
救急隊員が【私】になにかを確認するように触れる
処置らしい処置をしたようには見えない、つまりはそういうことだろう
その後警察官たちが【私】を隠すようにブルーシートを広げ周りを囲む
それが済むと救急隊員が【私】をストレッチャーに乗せすぐさま救急車へと乗り込む
『・・・えっとぉ・・・私も着いていった方がいいのかな?』
今までどうしていいかわからずにただ眺めていた私だが
【私】が連れていかれてしまう事で思考が戻った
『死んだ事ないからどうしていいものか?』
さすがに動揺していたのだろう、当たり前の事を考えていた
再び救急車のサイレンが鳴り、警察官に誘導され現場から離れていく
『・・・行っちゃった・・・』
結局何も出来ずに置いていかれてしまった
辺りを見ると先ほどよりも多くのパトカーと野次馬がいるようだった
そして、警察官に囲まれるように一人
スキンヘッドにスーツ姿の男がいた、運転手の男だ
『・・・なんか・・・悪いことしたな』
自分を轢き殺した相手に同情してしまった
そもそも鬱病と例の一件で生への執着が一切なく
子猫の為とはいえ昼間の国道に飛び出したのは私だ
『あんなの誰も避けれないよ』
そう、あれでは自殺と変わらない・・・
『って!!これって自殺になっちゃうっ!??』
『いやいやいやっ!あれは子猫を助ける為の行動であって・・・』
『・・・けど、見方によっては・・・』
『いやいや!あれはきっと善行であって自殺ではない・・・』
『・・・うん、そういうことにしておこう・・・』
「・・・おい」
『っ!?』
「おい」
『えっ!?』
「先刻からずっと呼んでいるのだがな・・・」
もう少し読みやすいように短くする予定が・・・
初回と言うこともあって区切りのいいとこを、と執筆していたら少し長くなってしまいました。
次回からはもう少しコンパクトにしていきますのでよろしくです!
「タイムリープは若者だけの特権じゃないぜ!」まだしてないけど…。
それでは!次回へつづく・・・。