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虚飾の魔王  作者: 螺扇
修行編
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竜帝


「お目覚めになられましたか、レイン様。」


聞いた事のある、いや毎日聞いていた声だ。

この声は──


「おはようございます、レイン様。まずはご無事で何よりです。」


ラース…ラースだ!

その喜びを噛み締め起き上がろうとすると激しい頭痛が襲ってくる。

そしてそれにより全ての絶望を思い出した。


「そう、だ。みんな、みんな死んじゃったんだ…!みんな、お母様も弟達もみんなみんな!どうして…俺達はただ普通に暮らしていただけなのに…!」


想起された絶望に耐えられず泣き始めた俺を、優しく包むかのようにラースは抱擁する。伝わってきた温かさと、頭上に感じる雫は、本物だった。


しばらくそのまま動かなかった。俺もラースも、ずっと動かなかった。ずっと、慰められていた。


…もう、泣くのは辞めにしよう。涙を流さずに、笑っていよう。その方が、みんな喜んでくれるはずだから。

そう思うことで俺はむりやり気持ちを落ち着かせた。

でも、たとえこの涙は止めても、味わった全ての絶望は忘れない。


しばらくして俺が落ち着き出した頃、ラースが俺の頭上から話しかけてきた。


「それはそうとレイン様。いつの間にか白髪が全て黒く染まっているようですが、いかがいたしたのですか?」


ラースは話題を変えようとしたのか、雰囲気にそぐわない話を始めた。って、え?髪が黒く染まってる?

使用人の発言を疑うわけではないが本当にそんなことになっているのか?

突発的な疑問にレインは湖を覗いた。

水に反射して見えた自分の髪は、どう見ても黒髪だった。


「どうなってんの…?」


ラースはキョトンとしているが、自分だってキョトンとしたい。急にどうしてこうなったのか。

とりあえず、色々起こりすぎて心身疲れた。


ラースと一緒に休憩していると近くの林からガサッと音がした。

そこから出てきたのは金髪の大男だった。

俺は咄嗟にラースを庇うように立つが、それを見て大男はガハハと豪快に笑い始めた。


「おいおい、そんなよえーのに悪魔を庇って立つってどうゆうことだ!」


大男は俺をそうバカにしてまだ笑っている。


「どなた、でしょうか?」


直感でこいつはヤバいと分かった。とんでもなく強い魔物だ。それは警戒だってする。

するとそれを見たラースが俺を止めに入ってきた。


「レイン様、このお方は我々を助けてくださった方です。今にも勇者に殺される所だった私とレイン様を救って下さった恩人です。」


助けてくれた…?

そういえばあの時突然大きな竜が現れてそれに気づいた勇者達が逃げていったような…。

え?助けてくれたのは竜だよね?

ってことはこの大男、あのデカい竜なの?え?どうゆうこと??


「あの…竜なのか…?」

「いかにも。我こそは天上天下最強の竜種、竜帝ゼロスである。」


え、ええぇぇぇぇぇぇぇぇ?!

この大男が?!あの竜?!しかも?!竜帝?!?!

どうゆうことだってばよ!

有名な竜帝が目の前に人間のような姿で立っている。5歳の子供には十分キャパオーバーな事態だった。


落ち着いた俺はラースと竜帝と話し合い、もとい情報交換会をしていた。

どうやら竜帝は俺の父と交流があり、日課の魔物狩りをしていたら俺達の街の方から違和感を感じて飛んできたようだ。てっきり勇者の気配のことかと思ったが、その違和感の正体はまだ分からないらしい(この話をしていた竜帝はなぜか顔を曇らせていた)。そして1番気がかりだった父の安否だが、竜帝は渋りながら隣村は街より先に燃やしつくされていた、と言った。隣村に行っていた父はもう、死んでしまっていたそうだ。死体を確認したとも言っているので間違いは無いのだろう。

やっぱり、という感情からか、母や兄弟の死体を見た時より悲しみが浅かった。それでも絶望は深くなった。勇者、あいつだけは絶対に許さない。


「復讐でも、考えているのか。」


見透かしたように聞く竜帝に複雑な眼差しを向ける。どうしてもあいつだけは。


「絶対に、仇はとる。どうやっても。」

「そうか。」


それしか返事は返ってこなかった。

読んでいただきありがとうございます。今回から修行編です。と言ってもそんなに多くないですが…。今回以降作中でちょっとコメディー的なリアクションもあるかもしれません…。家族が死んだのに何で笑ってられんの、みたいに思われる方もいると思いますが、レイン君の生への渇望と器ってことでお許しください(創作自体がご都合主義なのでそういうこともあります)。

しかしなんか竜帝って響きかっこいいですね、生まれ変わったらぜひなってみたいです。

それでは、次回もよろしくお願いします。

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