わたしをおうちにつれてって
二話目もよろしくお願いします。
僕の中で警報が鳴り響いている。目の前の少女に関わってはならないと。十中八九普通ではないし見てはいけないものだ。ここは見えないふりをして通り抜けよう。そうするのが一番である。関わり合わなければ何の問題もない。さわらぬ神になんとやらというだろう。
腹を決めた僕は一歩踏み出す。さあ心を無にしろ。邪心は捨てろ。あ、邪神ちゃんドロップキック面白かったよね。…いかん。雑念よ消え去れ。二歩、三歩と歩み続ける。
奴を視界の端に捉える。どうやらまだアイスにご執心のようだが、全く減っていない。当たり前だ。こんな寒い冬場でそう簡単に溶ける訳が無い。しかし何のアイスを食べているんだ。色からしてミカン…マンゴーか?いや少し違う気も、と思ってから気づく。危ない、何を興味を持っているんだ。ここを突っ切ると決めただろう。速やかに通り過ぎねば。気持ちペースを上げながらも進む。
丁度、彼女の真前へと差し掛かるという時だ。彼女の懸命な努力の甲斐あってか、あれだけカチコチだったアイスも真冬といえども徐々に溶け始め、ようやく噛み締められるようになったのだろう。彼女はカリッと一欠片砕いて口の中へと入れる。と刹那ーーー
物凄い勢いで吐き出された。
その欠けらは弾丸のように勢いよく飛び、彼女の前を通り過ぎようとしている僕の頬へとヒット。完全に不意を突かれた僕は、背後にきゅうりが置かれた猫を思わせる程の素晴らしい跳躍を見せてそのまま地面に落下。何が起こったか理解の追いつかない僕の頬から、飛ばされたアイスの雫が流れていき唇へとかかる。舌を伸ばし雫を舐めとった瞬間、全て理解した。
あ、 これ、あの有名なナポリタンのやつだ。
そう、彼女が食べたアイスは、某アイスメーカーがその前例のコーンポタージュ味、クリームシチュー味が好評だったため張り切って作ったものの、そのあまりの不味さにより大赤字を叩き出すことになってしまった問題のアイス、ナポリタン味だったのだ。何故今更食べようと思ったのか、などなど突っ込み所はあるが、それ以上の事態に気づき思考が停止する。
二人は互いにしっかりと相手の目を凝視していた。
こうして、関わることなくやり過ごそうという彼の企みは早くも崩れ落ちることとなる。
目をそらすことも出来ない二人の間に沈黙が流れる。先に動いたのは少女であった。彼女は視線は外さないままアイスを持っている手を持ち上げて、
再び口に含んだ。
と同時に男も覚醒し、叫ぶ。
いや、まだ食べるんかい。
意外と癖になる。
彼女は呟いた。
今回もお付き合い頂きありがとうございました。
サブタイトルは大体次の話に関係するワードです。