侍
俺ってすげー、いや吸血鬼すげー!
首ちょんぱされたが、もう元に戻っていた。
「あせったぜ!たくっ!よくもやってくれたなぁ?」
「岸くん気をつけて!こいつ異世界のやつじゃない!この世界にいる悪霊よ!多分!」
「は?なにそれ?」
まぁ、言われて見れば若干半透明だし、しかも鎧を着てる!侍か?
てか、カッケー!青い炎でできてんのか?その鎧!
侍は青い炎の鎧に纏っていた。そして顔は兜をかぶっていてみえない。
「そういや、ここらの町では大昔最強の人斬りと呼ばれた殿様がいて、そいつは天下を取れなかったから死んでもなお未練タラタラでここに居座ってるとかどうとか聞いたことがある!」
つまり、こいつは人斬りの亡霊。俺がヴァンパイアになったから亡霊がみえるようになったんだろう。
ザンッ!
うぉ!あぶねー!
いきなり斬りにくんじゃねー!はえーな、でも俺ならみえる!問題は刀の切れ味だ。再生力のある俺はともかく念銅が食らうとひとたまりもねー!鉄も斬れてるってどういうことだよ!
ダメだ、避けるので精一杯!念銅さーんヘルプ~!
「岸くん離れてた!」
念銅は侍に向かいトラックを蹴り飛ばした。
「ナイスショット!」
だが侍はトラックを真っ二つにしたのだ。
「おぉー、すご、お見事!」
とか言ってる場合じゃねーな!どう倒す?やつの間合いは多分半径二、三メートル、そこに入ったら最後だ。再生力があるから負けないにせよ勝てない。
どうする!遠距離しかねーか、それしかねー!
「念銅、一旦離れるぞ!」
「うん!」
侍から距離をとり建物の陰に隠れた。
「念銅、いいか。驚かないで聞いてくれ!
囮になってくれ!」
「いいよ!ウフフ」
え?即答?悩むとこだよ?
「お、おう、そうか、うん、ほんとに?」
「うん、だってなにか作戦があるんでしょ!
それに岸くんは不思議だけどなんだか信頼できるの!ウフフ」
岸神はこぼれ落ちそうになった涙を必死におさえた。今まで人に信頼されたことなどない岸神はこのために生きていたのかもしれないという心情にかられたからだ。
「ありがとう。作戦はこうだ。念銅が接近戦で、相手の注意を引き付ける。もし斬られて致命傷をうけば再生力がそこまで高くない念銅は死ぬかもしれない。でも安心してくれ俺の再生力の血をぶっかければすぐなおる!はず…」
「肝心な所は小声にならないでよ。」
念銅は笑いながら答えた。
「それで?岸くんはどうすんの?」
「それで、俺の必殺技をぶつける!」
「例の大爆発?」
「そう、それの応用!爆発されるエネルギーを一ヶ所に集めそこから放出!
名付けて…えっと、どうしよう。」
「ウフフ、岸くんらしいね。
じゃあいくよ、近づいてきた。ちゃんと命中してね。」
「おう!」
生まれて初めてかもしれない。自信を持って返事を返したのは…