表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

王国

  「ぼ、僕は……勇敢なる王国騎士、シュツィンだぞっ!!」



 駆けつけた先には、二人の柄の悪い男に相対し、木の枝と捨てられていたのだろう…少し朽ちた木の蓋を持ち(盾代わりであろうか?)、怯えながらも逃げずにいる小さな男の子がいた。


  「あァ!!?オメーがシュツィンだと!?どこをどう見ても騎士ってタマには見えねぇな!」

  「うるさいっ…!僕は王国最強の騎士になるんだ!お前らみたいな悪者になんか負けられないんだ!!」

  「ほぉ、言うじゃねェかこのクソガキ!ちょっと痛い目見なきゃ分かんねぇみてぇだな!」


 ……まずい!男が剣を振り下ろそうとしている。あんな木の蓋じゃまともに防ぐことすら出来ないだろう。だから…


  「瞬身(しゅんしん)ッ!!」

 影を倒した時のあの技だ。少女が言うには、それがどんなに普遍的な魔法や技であっても各々(おのおの)が名前を付けるべきなのだという。イメージを大事にする物にとってそのイメージを纏った名前、というのは非常に強い意味を持つのだろう。

 何はともあれ、瞬く間に俺は男と少年の前に躍り出た。間髪入れずに脚から腕へと魔力を押し流す。

  「剛力(ごうりき)!!」

 腕に確かな力を感じながらそう叫び、全力で落ちてくる刃を切り上げる。鉄と鉄がぶつかり合い……

  「ぐわぁあァっ!!!」

 まだ加減が曖昧なようだ。接触した衝撃で男は大きく吹っ飛んでしまった。残った方はそれを見て戦意を失ったようで、のびた男を抱えてスタコラと逃げてしまった。



  「……さて、大丈夫だったかい?」

 サッと振り返ると、少年は目に涙を浮かべていた。それも無理はないだろう。剣を持った、それも大人にあんな啖呵(たんか)を切れただけでも上等というものだ。ポケットの中からハンカチを探り出し涙を拭いてやろうとすると……少年はバシ、と手を弾いた。

  「な、泣いて、ない!あんなヤツら…僕だけでもやっつけられたんだからな!!」

 そう言うとそそくさとどこかへと走っていった。

  「なんか訳あり臭いな……」

  「追いかけよう。彼が家に帰るつもりならこの森を抜けられるし…それに一回助けたから次はなし、じゃ酷すぎるからな」

 その考えにコクリと頷くと、俺達は少年の後を追って駆け出した。




 鬱蒼とした視界が開くのにそれほど時間はかからなかった。草原の中に一本、石で舗装された道が通っていた。それを目で追うと……開かれた城門と城壁が見えた。もちろん、城はその向こうにある。

  「どうやら着いたみたいだな…」

  「だな。どうすればいいのか分からないし、とりあえずはここで色々と聞き回った方がいいだろう」






 城壁の中は、当然というか、活気があった。秀斗曰く、「交通が整備されて、訪れる容易さがあるからだろう。色んな地から情報が集まっているだろうから期待して損はない」ということらしい。

 とは言え、目的がふわふわとしている上に世界は広すぎる。何か変わったことがないか、と聞いてみても中々めぼしい情報は出てこない。一時間ほど聞き回って手に入れた情報は、最近冒険者を束ねるギルドが出来たことと…以前より暴行や盗難の被害が増えているということだった。後者は実地で経験もしているし、もしかしたら何か関係あるかもしれない……そう考えながら歩いていた。


  「危ないッ!!」

 は?…そう言おうとした瞬間、強烈な衝撃が俺を襲った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ