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接敵と魔法

白んだ視界がゆっくりと色を帯びてくる。

どこだ……ここは……。そんな事を思いながら、目の前に現れたのは…先程と同じ草原だった。


「……あ、あははは」


変わったのは、乗っていたバスが後方にあり、そのバスには人っ子一人居ない、という事だろう。何にせよ、ついに始まってしまったなぁという感慨に浸らずにはいられなかった。右も左も広大な草の世界でどうすればいいのだろう。


「起きたか、彰」

「…秀斗」


呆然としている俺の背中に声をかけてきたのは、やっぱり秀斗だった。おもむろに指を差した秀斗の手には素朴な作りの木の杖が握られていた。その後に指差した方を見てみると……


「おぉ……」

どこか中古感のある鉄製の剣が傍に置いてあった。持ってみると、ずしりと重い。これから、こんな重さに慣れるのだろうか?手からすっぽ抜けてしまいそうなこの剣を振り回して、敵をギッタギッタと薙ぎ倒せるのだろうか?……鍛えるにしても、まずは何か行動を起こさねば!


「あては無いけど……とにかくここから動いてみないか?」

杖がわりにした剣で立ち上がりつつ。

「それがいいだろうな。……ソイツを何とかしてからだが」


しばらく彷徨(さまよ)っていた指が、ビシッ!と差したその先には……



緑色の…形を保った、おそらく流動体……まさしくスライムが鎮座していた。

透けて見えた体内には、およそ生命維持に必要な臓器一つすら備えていない。だが、全てが水で出来た身体は柔らかな印象を俺達に与えるようにうねる。ここが始まりだ。使命を果たすための。


「たぁっ!!!」

持ち上げるだけで少し堪えるこの剣。全力で天へと掲げると、剣の重量と少しの腕力で叩き切った……はずなのだが、両断されたスライムに死というものを感じない。それを証明するかのように……


「い゛っ!!?」

触手の様に素早く突き伸ばされた身体が頬を掠める。肌を触ってみても切れていたりするわけではない…が。その痕は痛みから目を背けていた現代人には厳しい感覚として残っている。

この野郎…!!そう思った瞬間――――――


ボゥと音を立てて燃えたスライムは、10秒後には塵一つ残さずに消え去ってしまった。


「ハッ…ハッ……どうやら、倒したみたい…だな……」

「秀斗………今、のは……」

魔法、だろうか。今の今まで驚愕の連続だったけど、流石に燃えるところを見てしまうと、やはり驚かずにはいられない。肩で息をしている秀斗を見ると、何か…力を消費するもので、それが少なくなっている……といった感じだろう。そっとふらつく秀斗を支えると、苦しげな顔つきではあるものの…少しの喜色を含んだ微笑みとサムズアップに、安心したと同時にため息が漏れてしまった。


「話してくれないか?その…炎を出した方法を」

現状、魔物に対抗する手段は秀斗の炎しかない。しかし、頼みの魔法もたったの1度しか使えない。なら、俺も魔法を覚えればきっとそれで2発!これ程効率的なことも無い……だが…魔法職の秀斗ですら息の上がるほどなのに、俺なんかが習得できる物なのだろうか。

「ああ……何とかして彰を助けなきゃって思って、何か出ろ!何か出ろ!って思ってたら…杖から炎がボッ、て出たんだよ」

……大分抽象的ではあるけど、それに(なら)えば俺でも魔法が使えるようになるかもしれない。早速試してみよう。

(何か出ろ!何か出ろ!!何か出ろおぉ!!!)













出ない。何か…身体の中に熱い物があるというのは分かるけど、それが現象として目の前に現れない。時間だけが空しく過ぎていく。出ろ、出ろ、出ろ……



「何をしておるんじゃ、お主等は」

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