ななちゃんと、いちご柄の手袋
ひな月雨音さまからのプレゼント作品
「あれぇ? どこでちゅ?」
おやおや? ななちゃんがタンスの中を覗き込んで、何かを探していますよ。
「“いち”しかないでちゅ」
「ん? なな、何してるの?」
ななちゃんの声を聞いて、やって来たのは、大好きなお姉ちゃんのかなちゃんでした。
「“いち”だけになったでちゅ」
悲しそうな顔で、ななちゃんは片方の手袋を握りしめていたので……。
「ママ? ななの手袋、片方無くなっちゃったんだって」
となりのお部屋で、洗濯物を畳んでいたママもやって来ました。
「あらぁ、ななのお気に入りだった手袋さんよねぇ?」
「……はいでちゅ……いちぃ」
今にも泣き出してしまいそうな顔で、ななちゃんは片方だけになった手袋を見つめています。
「ねぇ、なな? 明日、新しい手袋さん、買いに行こっか。パパも一緒にね」
「……ぱぁぱも? みんなででちゅか?」
「うん!」
「よかったね、なな。新しい手袋は、どんなのがいいの?」
それはもちろん──
「いちごしゃんのでちゅ!」
◇◆◇◆◇
次の日──
ここは、いつもななちゃんのお洋服を買うお店です。
「てぶくろしゃん、あっちでちゅ!」
ななちゃんは、繋いでいたかなちゃんの手を引っ張り、よく知る店内の手袋コーナーへ向かってズンズン進みます。
「いちごのてぶくろしゃん、あるかなぁ?」
「あるといいね」
そんな2人の前に店員さんがやって来ましたよ。
「いらっしゃいませ。あら? 何か探してるのかな?」
「てぶくろしゃんでちゅ」
ななちゃんはそう言うと、小さなおててをパッと開いて見せました。
「そうなんだ。じゃあ私が選んであげるね? ちょっと待っててね?」
ななちゃんの話もよく聞かず、店員さんが、何個か見繕ってくれているようですが……。
ピックアップされていく手袋を見ていたななちゃんの表情が、次第に暗くなってきました。
「……あのぉ? すみません」
ななちゃんの異変に気付いたかなちゃんが、店員さんに声を掛けると、手袋選びの手がストップしました。
「ななは、いちごの手袋を探しているので、それはちょっと……」
「あらら、それはごめんなさいね。いちご柄、いちご柄……と」
かなちゃんのお顔を見つめるななちゃん。
「おねえちゃん、ありがとでちゅ」
店員さんは、お店にあるいちご柄の手袋を、何個か並べてななちゃんに選ばせてくれています。
「これ、ななに似合いそうだね」
その声は、ななちゃんの大好きなパパの声でした。
「ぱぁぱ! なな、これにしゅるでちゅ!」
パパの一声で手袋選びも無事に終わり、ななちゃんもすっかり上機嫌になったようですよ。
「ママっ! みてくだしゃい! ぱぁぱがこれ、ななににあうっていったでちゅ!」
「よかったねぇ。うん! ママもそれが1番ななに似合うと思うな」
満足そうなななちゃんの両手には、全体がいちごの形になっている、かわいいミトンがスポッとはめられています。
「てぶくろしゃん、もう“いち”にしないでちゅ」
ななちゃんは、いちごのミトンをお顔にポンポンと当てながら、優しいお約束をしたのでした──
雨音さま、
素敵なプレゼントをありがとうございました。