008
「最初にこの世界で他国に攻め込んだ男には女神がついていたのだよ?勇者やその戦いのことを知っているなら、それは知っているだろう?」
それは……知っている。
魔王と呼ばれたもの。僕と同じようにこの世界に別の世界から来た人。それと勇者も同じように別の世界、僕と同じ世界から来ていたはずだ。その彼らはお互いに女神の力を借りて、戦争をした。
勇者も魔王もその結果から言われ伝えられているものだ。
細かな要因はあるだろうが、勝者は勇者と呼ばれ、敗者は魔王と呼ばれることになった。
それが女神を封印して今の勇者が管理する世界となった。という話だが……。
魔王にも女神がついていた?それが何の問題なのだろうか?
「知ってるけど……それが?」
僕はよく分からなかった。
「女神は最初から争いに手を貸していた」
「それは……」
そうなのだろう。そうでなければいけない。
そうでなければ。そもそも、女神とも契約できなければ力を扱うこともできない。それはつまり……。
「そう言うことだよ。元々、魔王にはその国の王と女神が他国を侵略するように名を下した。だから――そもそも平和の為に勇者が管理しようとするのが間違っている。世界と人を導く女神は、自分の国の繁栄を望んだだけだった」
つまり女神は自らの国の為に戦争を選び、その結果が他国を取りこんだということになる。
だから、世界の理である女神が選んだことなのだから、そこを勇者が正すのはおかしいと……。
「でも――戦争をすれば多くの人が死ぬ……だから、勇者は平和の為に女神を封印したんじゃ……」
「はははっ――この街に来るまでにさんざん殺してきたアナタ様が言うのはまた各段におかしな話だ。――ならば問うが、戦争は悪か?他国を略奪しなければ崩れ落ちてしまうほどに衰退した国を、アナタ様をそのまま放っておくと?」
「それは……、他の国に援助を求めるとかすれば……」
「否!」
ネベリアの強く否定した声が伽藍洞の塔の中で響き、彼女は足を止め少し尖った表情でこちらを振り返った。
「旧世界に置いて、国同士は戦乱にあった。なにも勇者や魔王の話だけではない、元々その時代に置いて国同士の争いなど珍しくなかった。だからこそ同盟国などいない。そもそも――女神同士協力などありえないんだ。この世界の女神たちは誰がこの世界を統べるか争っていたのだから。故に――最後の手段として、後に魔王と呼ばれるようになった男を異世界から呼び出し力を貸した。――そうであろう?ミレア様」
薄く笑みを浮かべて、最後にミレアへと向けてネベリアは言った。
「きゃはは――。そうね、そうしてうまくいった。うまくいってしまったのよ中途半端に、きゃはは」
ミレアが言い笑う。知っているかのように……。いや、知っているも何も女神その物なのだから、知らないはずがない。
ならその時――ミレアはその時どうしていたのか?
魔王に滅ぼされた国の女神?
それとも、勇者と共に戦った女神?
――そのどちらでもない。眉を潜める僕に、ネベリアが不意にその答えを告げる。
「なんだ――知らなかったのか。ミレア様は最初に魔王へと力を貸し各国へ進行を始めた調本人だ」




