007
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「ねえ、僕を待っていたってどういうこと?」
ネベリアとミレアの後をつけるように階段を登りながら僕は訊いた。
「占いが得意でね。その結果、我らが先導者になるアナタ様が今日この時にここを訪れることは知っていた。だからアタシはこの国を担当する者として待っていた。アナタ様を誘導するために」
意味が分からない。
大体――、何故アナタ様なんていう呼び方をする。
「まるで僕を祭り上げているような……」
「ような――ではなく。そうなのだよ。ミレア様を憑依させているだけでもそれに値する。それに――アナタ様は契約の魔法を扱える。我らを率いて元あった理へ導くその資格をお持ちだ」
言っていることがまるで分からない。
ああ――冷たくした心が揺らぐ。こんなことで、僕は迷うのか……。
ただ理由なんてどうだっていい。教団なんてどうだっていい。そうやって、総てを殺してしまえば済むはずなのに、どうしてかまだそれができない。惨忍になれない自分がいる。
アンジェを殺して、その後何人も殺して、それなのに僕はこうして考えている。お願いだから――僕を考えさせないでくれ。
考えてしまうと、僕は自分自身を取り戻してしまうから……。
そう思えども、僕は考えてしまう。
巻き込まれているというのは分かっている。それもとてつもない何かだ。この世界全てが絡む何かに。それに大きく流されようとしている気もする。
でも――僕としてはそんなことは望んじゃいないし、そんな厄介ごとは関わらず僕は僕のすべきことをしたい。
だからこそ――ここでネベリアについていかず、殺してしまうのが確かなのだろうが……。
愚かな僕は、考えてしまう。訊いてしまう。
「教団は一体何がしたいんだ。僕なんかを引き入れて」
そもそも根本的な問題。教団という存在の目的と僕を入れるメリットが分からない。
教団の表面化での目的は、この世界を元々の女神の統括する世界に戻すこと、と言うのは木の国でクレリアさんから聞いているが、実際はどうなのかは知らない。
それに――ワザワザ僕なんかを引き入れている理由が分からない。
目的はミレアじゃないのか?
女神が国を管理する世界に戻すのであれば、僕は不要な筈だ。
ミレアがそもそも論、人間を嫌っているのはさて置き、僕を殺してミレアを奪ってしまえばいい筈だろう。
国を複数潰す程の力を持つ教団であれば、不死身の僕をフィーのナイフやアンジェのナイフのように殺す手段を持てもおかしくないのだろう筈なのに……。
それなのに、僕はこうして歓迎されている。
意味がわからない。
「アナタ様は我々教団のことをどこまでご存じだ?」
こちらを見ず、階段を上がり続けるネベリアが僕へと訊いた。
「300年前――旧世界の女神が各国を守護していた頃に戻そうとしている。それと、最近各国に攻撃を仕掛けたことまでは」
どちらも、木の国でのこと以外口伝えなので事実なのかは分からないが、僕の持っている教団の情報全てだと言ってもいい。
「よく知っているじゃないか。だが――それは中らずと雖も遠からずと言ったところだ。実際はこの歪んだ世界を正すこと。この世界はね、勇者という異世界の遺物によって歪んでいるんだよ」
「勇者のせいで歪んでいる?」
僕はつい繰り返した。
「そう。翌々考えてみてはどう?なんで元々女神様方がこの世界を管理守護していたのにもかかわらず、どうして突然それをやめて封印され、勇者の立てた国が世界を統括するのか?」
投げかけられた問いに、先を行き何を言わず訊いているだけのミレアが気になって見ながらも、僕はその答えをだす。
「それは――魔王が女神の力を利用して世界を統一しようとしたから……。それを勇者が止めようとして、同じように女神の力を借りて戦争になったから、二度と個人の手に女神の力が集まらないよにって……」
「それを訊いておかしいとは思わなかった?」
おかしい?一体何が……。
危険な力だから封印をした。その後に平和の為に勇者が全世界を管理しているだけじゃないのか……?