029
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
あれから歩いた。――どれぐらい歩いたろうか?少なくとも既に3日程は経過しており、一日一日ほぼ歩き続けている。アンジェも二日目の朝からは目覚めており、それからは一緒に手をつないで並んで歩いていた。いまはおよそ三日目の昼ぐらいだろうか?
もう迷いの森を抜け、木の国の国土は抜けている。森を抜け川沿いを渡り、気づけは氷に包まれた林の中の獣道を進んでいる。なにも変わらず僕たちは旅を続けていた。
変わったことと言えば、僕もアンジェも話さなくなったということだ。目覚めたアンジェは無言で何を見ているか分からない。ただボーっとして、なにか遠くを見ていた。そんなアンジェに僕も何も感じなくて、どうでもいいと感じてしまった。あの砦で会話しなかったひ日々とはまた違う。あの時は喋らなくても心が通じていた気がした。けれども今は――。
何も感じない。
通じ合っていないとでもいうのだろうか。お互いに何もない空虚なのは間違えはなかった。
それでも僕たちは離れなかった。離れられなかった。
離れてしまえば、きっとギリギリで保っている心さえ壊れてしまう。そう僕は分かっていたから。二人で居ることがせめてもの理性を保って生きてく希望だった。
そうして――僕たちは辿り着いた。
「ここです……」
僕の右手を握ったアンジェが林を抜けた先で見た光景に、感情のない言葉で淡々と言った。
ついた。
でも――ここは。
開けた場所は何もなかった。
正確には、氷で凍った大地にはつららが地面から突き出るように生え、その中にまるで氷の牢獄にとじこめられたような石レンガ造りの破壊された街があった。
言ってしまえば廃墟だ。
かつては大きな街だったのが分かる。レンガ造りのかつては大きかっただろう建築物が崩れ凍っているのが寂しく見える。
ふと廃墟の凍った壁に触れて見るも冷たくはない。凍っている街だが、寒くはないし氷は模造のように冷たくなければまるでダイヤモンドの様だった。
ここが本当にアンジェの故郷?
信じられない。
考えるのをやめた僕でも、このありさまには考えざる終えないかもしれない。
そんな戸惑う僕に、アンジェは無表情のまま僕の手を引き進む。
「こっちです」
そう言って、ゆっくり廃村の中を進む。
進んで、見れば見るほどひどいありさまだ。地面はえぐれ真っすぐ歩けない場所もあれば、まともに無傷で立っている建物なんでどこにも見やしない。けれども、アンジェはその中を淡々と僕の手を引き、慣れた動きで崩れた街の中を進んでいく。
そうして――入口から街の中に入りこんだあたりで、アンジェは止まった。
目の前には大きな大聖堂のような建物だ。周りの壊れた建物よりも大きくひときわ目立つ。無論――この建物も崩れている。屋根は崩れ窓ガラスは割れ。その外装は全て氷で覆われて凍っている。
入口の二枚の扉さえも片方は崩れおり、中身がむき出しとなっている。
アンジェが僕の手を離すと、その壊れた扉をどけて道を開け中へと入っていく。
それに続いて僕も大聖堂の中へと入る。
中は多きは広間が広がっている。正面には大きな誰かの肖像画、その左右には二階へと続く曲線を壁沿いに描いた階段がある。そのどちらも階段は崩れ、上へと上がる道は閉ざされているが……。足元をみれば凍った床の中には赤い品質のいいだろうジュータンが惹かれていて、広い一回のエントランスの入口からから左右には部屋へと続く扉があった。これも――言うまでもない・・・・・廃墟だ。凍った廃墟。
それを、ひらけた天井から光で凍った室内を宝石のように照らしている。見ていて――すごく虚しい……。




